公開日:2018年02月09日

脳腫瘍、もしくは脳転移を伴う各種癌の在宅緩和ケアのポイント~在宅医&脳神経外科専門医の立場から

【札幌市内の方で当院の訪問診療を希望される方は在宅医療連携室まで直接ご連絡ください。クリニックのMSWがまずは相談、対応させて頂きます。】

在宅医療連携室:TEL011-215-8330

 

こんにちは、宮の森の脳神経外科専門医かつ在宅医@今井です。

脳腫瘍や脳転移を伴う各種癌の患者さんの在宅医療は可能であるけれど、現実的には在宅復帰が少ないのが事実です。少しでも帰りたい患者さんの力になれればと思い今日は脳に原発もしくは転移性腫瘍がある患者さんの在宅緩和ケアのポイントについて幾つか書いていきたいと思います。

 

1訪問看護師(できれば訪リハも)は必ず利用しよう

脳腫瘍のある患者さんの変化って実は微妙ながらも日単位、週単位でおきています。病院であればMRIやCTなどで評価できますが在宅であれば「何ができなくなってきているか」から病状の進行を予想します。

主治医が家族にきちんと病状を予想し説明するためにも日々の身体的変化がどうおきているのか医師以外の日常の医療と生活をみるスタッフが必要です。ということで脳腫瘍の患者さんは病状変化をみるためにも訪問看護、身体機能の変化をより知りたいような部位に腫瘍がある場合は神経評価が得意なリハセラピストを必ず導入しましょう。

看護師さんは医師以外にも突発的におこる痙攣時や嘔気時にもすぐに対応してもらえる医療職を増やすため、後述する褥瘡予防のための皮膚ケアのためにも週1でもいいので導入してみてください

2元気なうちは家族が休める方法も考えて行こう

脳腫瘍のある患者さんは病状が進むについてなかなかレスパイト的なショートやデイが難しくなってきます。CVポートの管理、場合によっては末梢からの点滴や経鼻経管の管理など病状が進むについて医療的管理が必要になってくる方もいますよね。

家族の人員が十分いて大丈夫、といった状況ならいいですが主介護者が一人しかいないようであれば、行けるうちは積極的にレスパイトを使いながら在宅療養をする、といったこともトータルで自宅で長く、最後まで過ごすためには重要な点だと考えます。ショートいやなら病状評価のための短期入院でもいいですし・・・その場合は病院主治医と在宅医に調整をお願いしましょう。

3けいれん発作や意識障害に慌てないよう対応を考えておこう

ある程度病状が進むとやはり部分的な痙攣発作や意識消失を伴うけいれん発作が起こる方は予防薬やステロイドを使用していても起こることはありえます。

痙攣で呼吸停止する方はほぼいません。

なので落ち着いて対応できるように対応方法を在宅医と看護師さんとよくよく相談しておきましょう。意識のムラもよくありますのでせん妄時の対応や呼びかけても起きないときなどどう対応したらいいのか、きちんと事前に相談しておきましょう。しておかないと、当たり前ですがおきたときにパニックになったり不安感が強くなったりしますので・・・

4生活の拠点をきちんと考えましょう、特にベットまわりの環境整備には気をつけて!

病状が進行するとやはりADLが低下し3モーターのベットやエアマットなどの福祉用具を使用することになると思います。この時にはおそらく場合により麻痺の悪化や視力視野障害、軽度の意識障害なども合併していることもあり得ます。

ベットを置く位置はどこがベストか、周囲に何を配置することが一番本人が快適に過ごせかつ危険がないのか、どこなら安楽に介護ができるのかをきちんと在宅医や訪問看護師、ケアマネさんなどと考え自宅の中での生活の拠点を考えましょう

5褥瘡は絶対発生させないように注意しよう

上の4の内容ともリンクしますがこれも重要です。自分も経験あるのですがこの病気の方が在宅療養中に褥瘡になると中々なおりません。麻痺や意識障害でADLが落ちており食事量も少ない状況では一度仙骨部や背中に褥瘡ができてしまうと中々完治しません。予防こそ最高の治療です。絶対褥瘡はできないように皮膚の観察とケアを看護師さんとしていきましょう。

6通院は無理にいかないようにしよう

本人が希望すれば別ですが、移動がつらい時期になってきたら大病院に無理していく必要はありません。アバスチン等化学療法の治療のためや病状評価のために行く、と言っても、移動自体がかなり大変であり外出の機会が限られているのであれば治療ではなく楽しみのために外出した方が絶対いいと個人的には考えています。多分受診したとしてもアウトプットの治療はそう大きくは変わらないはずです。

外にでるなら病院より家族と楽しい時間が過ごせるところ、これは本当にそうしてほしいですね。

7食事は栄養も大事だけれど、それよりも形態を考え楽しみを重視しよう

球麻痺症状や運動障害が悪化してくるとどうしても食べる量が少なくなってきます。これは仕方のないことです。ただ熱心なご家族で有ればあるほど「頑張って食べてほしい」「少しでも栄養をつけてほしい」と思われ色んな食事を試されます。

変化する病状の中で大事なことは「食事を楽しむこと」「誤嚥をしないように形態には十分注意すること」。この2点を考えて頂き栄養のバランスについてはそこまで重視しなくてもいいのではないかと個人的には考えています。(異論ある方もいるでしょうが・・・)本人が食べたいものを少しでも食べ、形態についてはとろみやゼリー、アイートなどもためし誤嚥しないように注意してあげる、それで十分だと思います。

食事に迷うようならSTさんや訪問歯科医の評価を受けてみましょう。きっと喜んで協力してもらえるはずですよ。

 

ということで簡単ですが7つのポイントについて書いてみました。脳腫瘍や脳転移をもつ各種癌の患者さんの在宅復帰に向けて少しでも参考になればうれしいです。ある程度経験がある医師(特に脳神経外科医や神経内科医)ならば次に出現する症状や変化、予後などは予想できるかと思います。可能ならそんな先生みつかればいい在宅療養ができると思いますのでまずは病院の連携室にでも相談してみてくださいね。

ご意見あれば教えてください。

 

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