ACPのプロセスにおける医師の果たす役割について:病院の医師は変化する時代の要請に対応できるのか?

こんにちは、札幌の在宅緩和ケア診療所の医師@今井です

前回の記事で高齢者の終末期医療についてACPは必要ですよね、ってこと簡単に書きましたが、今後実際の高齢者の終末期医療において最善のACPをとるためにはどの職種が一番最適になるのでしょうか?そして医師はどのように関わるべきでしょうか?特に自分は人数的、機能的に考えても診療所の医師より病院の医師がどのように関わっていくべきなのかを考えることがとても大切だと感じています。

ただこのままでは本当に大丈夫?と心配な点も少々あるので今日は病院の医師を中心にして少し書いてみたいと思います。

ACPについて

これまでの医療においては

体調変化時に対応や医師からの病状説明がされる→それを聞いてから今後の治療や療養方針を考えていく

というプロセスが主流でしたが、これからは

病状変化前から受けたい医療について繰り返し考え、キーパーソンに相談、伝えておく→実際の病状変化時に対応する

という医療の流れになることが確実です。

この医療の流れの変化に大きく寄与しているのは言うまでもなく人口の高齢化ですので、これからしばらくの間日本の人口減少局面の時代においてはこれが変わることは早々ないでしょう。

医師はどうかかわるべきか

当然このACPのプロセスには医師は積極的に関わるべきですよね。在宅医や看取りをしている外来の診療所医師に関してはACPへの取り組みは大丈夫だと思いますが、一方で専門外来に特化した診療所や病院の医師はどうでしょうか?特に自分は病院の専門診療をしている医師が高齢者の終末期医療の意思決定のプロセス、ACPにどう取り組むかは早急に考えなければいけない課題ではないかと考えています。

なぜか?現状の体制ではやっぱり病院の医師がACPに責任をもって取り組むことがかなりハードルが高く、このままではACPのプロセスにおける医師の存在感が希薄になってしまうのではないかと感じるからです。以下に理由を書き出してみます。

高齢者の終末期医療におけるACPにおいて、病院勤務の医師が積極的に関わるのが難しい理由

①普段の生活状況や顏を知らないから

ACPのプロセスにおいてはやはり本人の意思や価値観を尊重し決定していくのが重要ですが、高齢者では病院で見せる顔と自宅で見せる顔はしばし全く違う事があります。病院の外来や病室では言えないこと、自宅での何気ない会話の中から本人の意思をくみ取ることは在宅の医療者なら可能ですが、病院での診察からの説明であれば本人の真意を汲み取ることを結構難しいのではないでしょうか。また家族との関係や生活背景などの状況も病院にいる限りは把握するのが難しいですよね。

②多職種との連携のハードルが高いから

訪問看護やケアマネ、ヘルパーさんなどもACPには重要な役割を果たしますが彼らがどんな行動原理で動いているのか、何を基準に医療や介護を提供しているのかって病院で勤務していると正直理解することはできないかと思います。ACPを多職種で行うためにはやっぱり相互理解が根本になければいけませんが病院内のみで活動している限りこのハードルも中々高いと言わざるをえません。

③責任のある診療をどの科が行っていくのかぎりぎりまで明確でないから

総合診療をしている内科であればいいですが、それ以外の専門外来に特化しているところであれば複数科受診しているような高齢者のACPにどの科がメインに関わるべきか悩むところでしょう。というかおそらく現在もこの問題は顕在化しているとは思いますが、結局はどの科も自分の科の診療のみで病状変化前からのACPは自分の科の仕事の範疇ではない、というような態度となるのではないかと危惧しています。病状的にいよいよのところまできたらその診療科の医師がメインの科となると思いますが、それまではACPをどこがやっていくの?って現在の体制では明確にならないような気がします・・・

少なくとも自分がいた脳神経外科のDrであれば「基本は仕事は手術、ACPは内科の仕事だから範疇外」と考えているはずです。外科系の医師はそう考える医師が多いのではないでしょうか?(まぁそれは本来の役割分担的には正しいっちゃ正しいのですが・・・)

④地域の医療、介護資源について知らないから

ACPを正しく行うためには各医療職や介護職がある程度地域の利用できる医療や介護資源について知らないとできません。だって地域になければないものは利用できないですよね??

しばし病院の医師は専門医療に特化することに価値を見出しているため、医療外の仕事は他職種の仕事と考えます。これまではそれでよかったのだと思いますが、これからのACPの時代ではその考えではやっていけなくなりつつあります。地域の資源についてどれだけ知ることができるのか・・・・これも病院内だけの活動ではちょっと解決は難しいような気がします・・・

病院の医師がACPに関わるためにするべきこと

ということで病院の医師がACPに関わることは結構ハードルが高いのではないかと書きましたが、以下に病院の医師が高齢者のACPに関わる時にすべきことを簡単に書いてみました。

①在宅にでる

週1コマでもいいですし在宅の現場にでるのはいかがでしょうか?ただこれは本当に多忙な専門診療している先生には難しいですよね。

②多職種や医療介護資源についても積極的に情報収集し連携を自らとる

これも中々難しいですが普段の診療から気をつけていくべきですね

③専門診療していてもかかりつけ医として複数科受診をまとめていく

これも書いてて思いましたがハードルが高いです・・というか実臨床で多忙の中でやるのは実質厳しいですよね~

 

解決策の①~③まで、どれも難しいものばかりですね・・・・・でもその難しいことをしていかないと病院に勤務しながらではACPのプロセスで役に立つ意見は言えないようになるでしょう。これができないのであれば、本当に専門診療に特化してダブル主治医制にしてかかりつけ医に全部任す、ACPに全く関わらないという選択もあるでしょうがどれだけの専門科の医師がそれができるのか・・・・

 

高齢化が進行し時代が変わる中で、医師に求められる仕事内容も変わりつつあります。このまま専門科診療や病院内での診療のみで変化しないままだと医療や人生の意思決定のプロセスにおいて医師のプレゼンスが低下するのではないかと危惧しています。そうなると最終的には不利益になるのは患者さんですよね・・・・でもこのままでは本当にACPプロセスにおいて医師は不在になり訪問看護や病棟看護師さんが主導する形になるような気もしています。

 

病院の医師がACPにどう取り組むのか、この問題は現在の医療制度も絡めて考えると根が深い問題になりそうですね。皆さんはこの問題どう考えますか?よければご意見くださいね~

 

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終末期医療に関する『事前指示書』には危険がいっぱい??いやいやそんなことないでしょう

こんにちは、子供がインフルになって家庭内パンデミックがおきないか心配している在宅医@今井です。

さて本日はちょっと気になる医療記事ありましたのでご紹介です。

終末期医療の指示書、危険性警告 大阪で討論会

京都市が終活リーフレットとともに配布した「終末期医療の事前指示書」の回収を求めている「尊厳死法いらない連絡会」(大阪市北区)などが17日、討論会「終末期医療に関する『事前指示書』には危険がいっぱい!」を大阪市港区で開いた。
京都市が昨年春配布した「事前指示書」は、終末期を迎えた場合に人工呼吸器や胃ろうによる栄養補給などを希望するかしないかを選択させる内容。
討論会では、「医療の切り捨てにつながる」「事前指示書で終末期を迎える場所を自宅、心臓マッサージを希望しないと書いた場合、救急車は来てくれるのか」などを問う公開質問状や、昨年11月に京都市と交渉した際に市側が「事前指示書に法的拘束力はなく、医学的な検討はしない」と答えたことが報告された。
同会の冠木克彦弁護士は「京都市の事前指示書によって、救急車が病院搬送しないなど救急現場に混乱を招く。肺炎は抗生剤で回復するのに使わない選択をさせるなど、治療の早期打ち切りが進められていく」と批判。今後も連携して回収を求めていくとした。
障害者の当事者団体「日本自立生活センター」(JCIL、京都市南区)代表で、車椅子を使う矢吹文敏さん(73)は「あまりに政治的、経済的に死が語れていないか。わたしたち生きている障害者の尊厳を守らずに、健常者が尊厳死を語るのはおかしい」と訴えた。

 

うーん・・・・記事読んだ限りではまずは<医療の切り捨てには断固反対>という思想ありきで本当に何が現場で問題になっているのかを全然考えていないで事前指示書に反対!!ってなっているのかなという印象持ちましたが皆さんこの記事読んでどう感じますか?

言うまでもなくどこまでの医療を受けるのかどうか、そもそも医療を受けたいかどうかもさえも基本的にはその人の意思が最優先されるべきです。その意思決定のプロセスにおいて不十分な情報提供のまま意思決定がなされたのであれば確かに不幸ですが、現在の議論ではそのプロセスを充実させていきましょうね、っていう段階まできているはずです。京都市はこの会の反対に臆することなく事前指示書の普及に努めて欲しいですね。(京都新聞のこの見出しも今一つだなぁと感じますね)

意思表示ができなくなった患者さんのためにも、家族のためにも絶対に事前指示書は必要と考えますがどうでしょうか。患者さんの意思不在の終末期医療はあり得ないと思いませんか?

 

という訳で今日はこんな反対する人もいるんだけれど事前指示書の普及は気にせずどんどんしていきたいですね、っていう内容でした。皆さんはどう考えますか?よければご意見教えてください。