定点観測でこれからの医療を予測する~韓国の「文在寅ケア」の政策から考えること~
こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医@今井です。
先日ニッセイ基礎研究所の論文で面白い投稿を見つけました。お隣の国、韓国の社会保障状況について、近年どう変化しているかのまとめの分ですので興味ある方は是非以下から一読ください。
文在寅政府の医療政策「文在寅ケア」は成功しただろうか?
サマリーを抜粋すると
- ・2018年から、文在寅政府の「健康保険の保障性強化対策」、いわゆる文在寅ケアが実施された。
- ・文在寅ケアの主な内容としては、(1)健康保険が適用されていない3大保険外診療を含めた保険外診療の段階的な保険適用、(2)脆弱階層の自己負担軽減、低所得層の自己負担上限額の引き下げ、(3)災難的医療費支出に対する支援事業の制度化及び対象者の拡大などが挙げられる。
- ・「文在寅ケア」の最も評価できる部分は、保険外診療であったCTやMRI等が段階的に保険適用されることにより、国民の自己負担が減ったことである。
- ・「文在寅ケア」の最大の課題は財政負担急増により財政が悪化する恐れがあることである。保障率を上げるために国からの財源投入は避けられないものの、増え続ける財源をどこから確保するのかに関する議論が十分ではないことは問題であるだろう。
- ・「文在寅ケア」の実施がモラルハザードによる医療サービスの需要増加に繋がらないようにするためには、外来診療によって患者の医療を担当する1次医療機関の役割を強化するなど医療機関の役割分担を迅速に推進する必要がある。
中身を読んでもらえればわかりますが、自分としてはこの政策はこれから5年後10年後には財政面の過負荷で成り立たなくなるのではないかと感じましたよ。またその時には保険適応になったものが再度保険適応外となるとのことで患者にとっても医療者にとっても、両者に大きな傷跡を残す可能性大かなと・・・
この投稿を読んで改めて個人的に感じたことは「医療(社会保障制度)は結局は政策次第」ということです。もちろん医師ー患者関係の本質的な部分はこの2000年変わりないですし、今後も変化しようがないでしょう。ただどのような医療をどう提供するか、誰が責任をもつのか、などはその時々で大きく変化していくなと。お隣の国韓国の医療体制もこの政策の影響で今後大きく地殻変動が起きることは必須でしょうね。
えてして医療関係者(医師、看護師など)はミクロの部分での医療についての議論はよくしますが、マクロの視点にたった長い時間軸で医療がどう変化していくのかを議論する、考えることは少し苦手なのかなと感じます。その原因は医療に政策や政治がどう影響を与えるのかを理解しがたいからなんでしょうね。
国が医療、社会保障をどう考え、先々の国の在り方をどう考えているのかを予測するためには定点観測を継続していくことが欠かせません。個人的には最低でも中医協での議論はきちんと確認しておくべきでしょうし、最近なら経済財政諮問会議の内容も把握しておくことは必須だろうと思っています。
今は令和の時代における医師の地域偏在の話題がホットでしょうか。この議論も確実に日本における医師の働き方、大きく考えると20年後の日本の医療の在り方を考える際には有意義ですよね。
皆さんは定点観測しているところありますか?医療の将来を予想する、現状を相対的に把握するためにも、ぜひいくつか定点観測する場所なりサイトなりをお持ちすることをお勧めします。もしお勧めがあれば教えてくださいね。
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