救急医療の現場や地方の総合診療に全部求めるなら、司法との問題も解決すべきでは・・・・【医師がCT検査でくも膜下出血認識できず 患者は別病院で緊急手術】
こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です
(上記写真は記事の症例とは関係ありませんので勘違いしないでください(^^♪)
ちょっと気になる記事が目にはいりましたのでシェアします。6月27日のヤフーさんの記事です。
医師がCT検査でくも膜下出血認識できず 患者は別病院で緊急手術
和歌山県那智勝浦町立温泉病院で救急搬送された45歳男性のくも膜下出血をCT検査で認識できず、別病院で緊急手術を受けることになったというこのニュース・・・・まずは男性がその後意識が戻り退院されたとのこと、本当によかったと思います。
ただ今回この記事を読んで個人的には別のことを強く考えてしまいました。
この医師、訴えられるかもしれない
「私ではよく診られなかった」と謝罪した医師。この一言が、どれほどの重みを持つか・・・
医療の世界では「謝罪=過失の認定」と受け取られることがあります。今後この件が民事・刑事の問題に発展する可能性がある。
くも膜下出血のCT診断は、実は専門家でも難しいケースがそれなりにあります。発症初期のくも膜下出血は、CTでは「明らかな異常」として映らないことが十分ありえます。脳外科医(専門医は大丈夫でしょうが専門医前の専攻医)でさえ見落とすことがありえます。
それを、放射線科医もいない地方の小病院で、大型連休中に医師1人・看護師2人という体制で当直していた医師が「見落とした」として、どこまで法的責任を問われるべきなのか・・・・
国は地方に総合診療医を置きたい。でも環境が整っていない
国の方針として、地方には総合診療医を配置していきたいというのはわかります。
でも現実はどうか。
放射線科医はいない。専門医はいない。当直は1人。遠隔読影の体制も整っていない。そういう環境で、「なんでも診られる総合診療医」を置いて、全ての分野の専門医と同等の診断精度を求める——これは120%無理な話です。
そしてもし見落としが起きたとき、個人の医師が法的リスクを負う構造のままでは・・・・誰も地方の過酷な現場に行かなくなるor何かあればすぐに専門医や高次の医療機関に搬送するだけになってしまいます。
今でも地方の医師不足は深刻なのに、このままでは加速するだけになるでしょうし、医療崩壊も進むでしょう。(少なくともこの記事になった医師はもう僻地での勤務はしないのではないでしょうか??)
司法との問題を解決しないと、地方医療は崩壊する
強く思うのはここです。地方に総合診療医を配置する政策を進めるなら、同時に「限られた医療資源の中で最善を尽くした医師が、不可抗力の結果に対して過度な法的責任を負わない」という制度的な担保は必須かなと。
医療事故調査制度はありますが、まだ十分とは言えない。民事・刑事の問題は別に動く。
記事の中で専門家が「遠隔読影やAIの活用」を提言しています。これは正しい方向です。でもそれと同時に、「整っていない環境の中で働く医師を守る仕組み」がなければ、誰もその環境に飛び込めない。この状況で直美を批判しても・・・若手の医師の琴線には響かないですよね。
今回の医師を責める前に考えてほしいこと
今回の医師は、大型連休中に地方の小病院で当直していた。それだけで、十分すぎるほど貢献しています。
放射線科医がいれば違った結果になったかもしれない。遠隔読影の体制があれば違ったかもしれない。でもそれは「個人の医師の問題」ではなく「地域医療の体制の問題」です。
地方医療の崩壊を防ぎたいなら、現場で踏ん張っている医師を守る仕組みを、国が本気で作ってほしいと思っています。
同じことは救急医療の現場でも言えますよね。頑張って専門外の診療や治療しても結果次第で訴えられる・・・・誰がやるのって話になるのかなと。
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