公開日:2026年07月18日

【在宅医療の現場から】言葉にできない感覚を大切に

こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

医療の世界では、できるだけ言語化することや標準化することが推奨されています。マニュアルを作る。チェックリストを整備する。アセスメントツールを使う。スコアリングする。「なんとなく」ではなく「根拠のある判断」を・・・

これは正しいと思っています。言語化・標準化によって、医療の質は確実に底上げされる。経験の浅いスタッフでも一定の水準を保てるようになる。

でも、今日はそれだけじゃないよ、という話をちょっとだけしたいと思います(^^♪

「なんか今日違う」という感覚

在宅医療の現場で患者さんのお宅を訪問していると、こういう感覚、違和感が来ることがあります。

「今日、なんか違うな」

バイタルは安定している。血圧も、SpO2も、体温も、数値の上では問題ない。でも何かが違う。顔色か、目の輝きか、部屋の空気か、ご家族の表情か——何がどう違うのか、言葉にしようとするとうまくできない。

でもその感覚を大事にして「どうですか、最近?」とか、ご家族の方に「なんでもいいんですけれど何か気になることないですか?」って深堀すると声をかけると、「実は昨日からあまり食べられなくて」「夜中に一回起きてしまって」という話が出てくる。

数値には出ていないけれど、何かが変わり始めている。

これは「勘」ではない

「言語化できない感覚」というと、根拠のない勘のように聞こえるかもしれません。でも今井はそれとはちょっと違うかなと思っていますよ。

言語化できないだけで、その感覚の裏には膨大な観察と経験の積み重ねがある。何百回と同じ患者さんのお宅を訪問してきたからこそ、「いつもと何かが違う」が感知できる。

「なんとなく」ではなく、「言語化する前の段階で、すでに何かを捉えている」という感覚です。

これは医師だけじゃなくて、長く同じ患者さんを担当してきた看護師さんやヘルパーさんも持っている感覚だと思います。そうですよね、皆さん?

言語化できないことを言語化しようとすると、失うものがある

もうひとつ感じていることがあります。

「なぜそう思ったか説明してください」と求められると、人は「説明できるもの」だけを根拠として出そうとします。言語化できない感覚は、説明しにくいから切り捨てられる。

でも個人的に、その切り捨てられた感覚の中にこそ大事なものが詰まっているんじゃないかなと考えています。

「数値には出ていないけど、今日は普通じゃない気がする」——この感覚を「根拠がないから」と無視した結果、翌日以降に変化が明確になる、ということを今井は何度か経験しています。

言語化と感覚の両方を持つ

標準化・言語化は大事。でもそれだけでは全てではないし、在宅医療では不十分。(かも)

数値で判断すること、根拠を持って動くこと——これを土台にしながら、同時に「言葉にならない何か」を感じ取る感覚も大切にしたい。

この感覚は、マニュアルには書けません。研修で教えることも難しい。長く現場にいて、たくさんの患者さんと向き合い続けることで少しずつ育っていくものだと思っています。

だからこそ今井は、スタッフに「長く現場にいてほしい」と思うし、「数値だけを見るのではなく、目の前の人を見てほしい」と伝え続けていますよ。

皆さんは、仕事の中で「言葉にできない感覚」を大事にしていますか?いかがでしょうか?

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