公開日:2018年09月08日

平成30年北海道胆振東部地震の当院の初期対応を振り返って~当院の地震当日の記録

こんにちは、札幌の在宅医@今井です。

6日早朝3時過ぎにおきた平成30年北海道胆振東部地震について、まずは犠牲になった方のご冥福をお祈りします。

現在も消防、救急、自衛隊、病院医療者(自分達もですが)が必死になって現場で仕事をしていますが、ようやく3日近くたち少しですが時間ができたので当日を振り返って早めに記録をつけておきたいと思います。

想い出せる限りでの記録ですが、色褪せないうちに自分の感情とともに書いておくことは後々も無駄になることはないでしょうから~

1地震発生直後

地震発生当日は前日に調べものをしていたこともあり家族とは離れた居間の簡易布団で寝ていました。

発生直後には「これは普通ではないな」「かなり大きな被害がでるか?」と思いTVつけようとするも停電のためにつかず。

即座に在宅にいる呼吸器、HOTの方の対応をどうするか一番の問題だと判断しました。

3時15分過ぎには事務長に連絡しクリニックにきてもらうように要請、看護師長とも連絡がとれ同様にクリニックに向かってもらう事にしました。(診療所看護師にはこの時点で出動要請が師長からでたようです。この決断も後で考えたら大きないい判断でした。)

自分の判断としてまずしなければいけないことは

「停電が一時的と判断しこのまま呼吸器の患者さんやHOTの患者さんはそのまま在宅で少し経過みる」

「リスクを少しでも減らすべく早急に入院対応を依頼する」

という選択・・・・

自分は今回の地震では

①停電がいつまで続くかわからない

②リスクは少しでも減らした方がいい

③救急隊は夜があければまず忙しくなり通常の稼働が期待できなくなる、ならばできるだけ早く入院させた方がいい

と考え、すぐに呼吸器やBIPAPをしている患者さんは原則入院、HOTの患者さんは酸素がなくても大丈夫な人もいるためこっちはケースバイケースでいこうと決めました。

待機携帯の先生には電話をして何かあればこちらに全て情報を流してもらうように依頼、3時40分自宅出発しクリニックに向かいました。

2発生~1時間

クリニックに到着後すぐに呼吸器をつけている患者さん(主にALS)に救急要請を指示、(できない人は当院で電話)その後救急隊が到着次第各病院に搬送の依頼をしていきました。

ほぼ全ての呼吸器をつけている患者さんの救急要請指示は1時間程度で終わらせることができました。おそらく3時に地震が発生し遅くとも6時までには呼吸器をつけている患者さんはほぼほぼ入院できていたのではないでしょうか?

初動で呼吸器をつけている患者さんを全て入院させるという決断をしたことは後々考えても良かったと思います。おそらく様子みていたら搬送自体にももっと手間がかかったでしょうし当院の医療スタッフも多くがそのような患者さんにかかりっきりになり他の患者さんのフォローができなくなっていたでしょう。

同時並行して分院の院長及び事務長にも状況確認し同じように呼吸器が必要な人は入院させるように指示、お互いの確認すべき事項を確認しました。

3発生1~3時間

初動で呼吸器の患者さんを入院させてから5時前には師長を含む看護師が4,5人出勤してくれました!!これは本当に助かりました。

次にとりかかるのはHOTを使用している患者さんをどうするか、という点でした。

HOTを高流量で使用しており使用ができなくなったら病状悪化する、もしくは死の可能性が高い患者→入院を勧める

低流量でHOTなくても何とか活動レベルを抑えれば大丈夫な患者→在宅で

という方針として早速家族の方に連絡し対応を相談、こちらもまずはリスト化しその後必要に応じ入院の手配を行い、同時並行して診療所の看護師にさっそく車で身寄りのない、もしくは連絡がつかない患者さん宅に訪問をお願いしました。

↓早朝から電気のつかない診療所でリストをホワイトボードに作成していく看護師さん

事務職員にも状況の確認のために市内を見に行ってもらい、そのついでに長くなる1日に備え、スタッフの食事、カロリー補給できるものなんでもいいから買ってくるように伝えました。結局ほぼほぼお菓子だけしかなかったですがそれでも買っておいてよかったです。

↓買えるだけ買ったお菓子(だいぶ減ったあとの写真ですが・・・)

4発生3時間~当日午前中

HOTの患者さんの次はサクションを使用している患者さんの対応。

こっちは自分より全患者さんをよく把握している看護師さんにリスト作成を依頼、そして電話対応もお願いし病状の把握と入院の希望などを家族の方と対応相談していました。

そのうちに訪問看護ステーションとクリニックの医師含むスタッフも続々と診療所に到着、停電の中午前中の行動予定を決定しました。

ステーションは訪問している患者さんを優先度をつけてリスト化、スタッフ2人1組で1日かけて訪問し必要なケアや状態をチェックすることとしました。

診療所側は医療依存度が高い患者さん(カフティや終末期)から訪問をすることを確認、各担当医が看護師と1組となって往診対応をすることとしました。

それとケアマネや訪問看護師、ヘルパーさんなどが入っていない患者さんに関しても誰の目も入らない可能性が高いためリスト化し安否確認を行い連絡がつかない場合には訪問することとしました。

同時にスタッフの自宅も停電や断水していたため食事の準備もままならないまま・・・・仕事をする上で兵站が枯渇していては働くことはできませんよね。さらに仕事終わって帰る時に食事もないままでは災害時にでてきてくれたスタッフにも本当に申し訳ない・・・・・

ということでライフラインのうち生き残っていたガスを使って炊事ができるスタッフの自宅で炊き出しをしてもらうようにお願いしました。このスタッフさんには申し訳なかったですがやっぱ何をするにもスタッフの食事の用意を考えることって重要ですよね?

↓これは炊き出ししてくれたスタッフさんのおにぎりです。本当にありがたかったです。

 

事務系の職員に関しては遠方の職員には無理して出勤はしてこないように伝え、近隣の職員のみ出てきてもらい外来患者さんの対応や中の仕事の手伝いや整理などをしていきました。

6当日午後

午前中にほぼほぼ危険度の高い患者さんの確認と訪問が終わったため午後は数件の訪問のみで3時頃には大体の確認が終わり一度診療は終了となりました。

停電が続いていたため各自自宅に早めに帰ってもらい翌日に備えることとなりました。

自分は分院の状況確認、明日以降予想される状況の把握、経済的な損失をどうするかなど色々考え記録をつけていましたよ。

 

 

ということでこんな感じで当日はあっという間に時間が過ぎていきました。ただ初動の段階、地震発生後2,3時間で一番処置が大変になるであろう呼吸器の患者さんやHOT使用中の患者さんを、病院に早々に入院させて頂いたことが後々の負担を劇的に減らしたのではないかと思います。

他のクリニックの話を聞くと19時、20時過ぎまで対応していたクリニックもあったとのこと・・・・やはり初動が重要であったこと、組織的に当初から動けるように事務員や看護師さんがどんどん早く集まってくれたことが今回の地震で当院がかなり早く対応できた秘訣ではないかと改めて感じました。

 

昨日今日と継続して訪問はしています。外来は正直在宅優先で医療を提供していたため土日は休みになりますが月曜からはいつも通りに診療していきたいと思います。

停電の恐ろしさ、電話がつながらないということの意味、断水の大変さなど今回の地震では色々経験しましたが、一番は緊急時にだまっていてもどんどん連携して動いてくれるスタッフのありがたさ、素晴らしさに感動しました!!スタッフの皆さん、本当に大変な中一緒に患者さん支援してくれてありがとう!

 

皆さん大変でしょうが早期の復旧に向けて一緒にがんばりましょうね!!

 

当院の2018年上半期の診療実績を知りたい方→こちらをどうぞ!

現在当院の勤務に興味のある医師募集中→こちらをどうぞ!

開業に興味のある医師も募集→こちらをどうぞ!

当院の訪問看護ステーションで働きたい看護師さん→こちらをどうぞ!

外来や訪問看護、地域で活動したい看護師さんも→こちらをどうぞ!

「在宅療養支援診療所の開業、経営、運営の教科書」書いてます→こちらをどうぞ!