公開日:2026年08月22日

探し物の名人になった話【在宅医療の現場から~「ものを無くす」ということ~】

こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

今日は先日の訪問診療の際にも対応に苦慮した経験があって、そのことを少しまとめて書いてみようと思います。その名も「在宅医療とものを無くす」です(^^♪

在宅医をやっていると、ほんとうによく聞くんです。

「先生、また眼鏡がどこかいっちゃって」

「入れ歯が見当たらないんです」

って(笑)。最初は笑い話くらいに思ってたんですが、続けていくうちに、これって実は在宅医療の本質に近い話なんじゃないかと思うようになりました。

< 現場でよく聞く「ないない」事件簿 >

〇 補聴器が布団の中に埋もれて行方不明(大体2,3日後にシャツや洗濯前のシーツから発見される)

〇 入れ歯が新聞紙に包まれて箪笥の中に鎮座orゴミ箱行き寸前だった

〇 毎日飲んでいるって言っていてダブルチェックもされているはずなのに、お薬カレンダーの中身と実際の錠数が謎の不一致!!

〇 「あの人(ヘルパーさん)が盗った」と家族が疑心暗鬼になり、後日枕の下から発見

正直、訪問診療をしていると1ヶ月に1回くらいはこの手の「捜索劇」に付き合っています(今井も一緒になってベット周りの布団をめくったりタンスの裏を覗いたりすることもしばしば・・・・)

< 「なくす」の裏側にあるもの >

でも、これって単なる不注意とか整理整頓の問題じゃないんですよね。認知機能の変化、視力や手先の感覚の変化、住み慣れたはずの家の中で「モノの定位置」という概念自体が崩れていく・・・・というプロセスが背景にあることが多いんです。

そしてもうひとつ、今井が在宅医療の現場で強く感じるのは、人生の終盤に差し掛かると、人は「モノ」だけじゃなくて、いろんなものを手放していくんだろうなぁっていうことですよ。

役割を手放す。社会とのつながりを手放す。時には記憶さえも手放していく・・・・「できていたこと」が少しずつ「できないこと」に変わっていくその過程は、正直見ていてつらいこともあります。

〇 「もう片付けなんてどうでもいいの」という言葉の奥にある諦めと、実は諦めきれていない気持ち

〇 家族が「本人のために」と物を減らそうとして、逆に本人の不安が強くなるケース

〇 逆に、モノを手放すことで気持ちが軽くなり、表情が穏やかになる患者さんもいる

「なくす」という現象ひとつとっても、その人にとって「喪失」なのか「解放」なのか、実は全然違うんですよね。ここを患者さんや家族がどう感じていてどう対応しているのかを見極めるのが、在宅医療に関わる人間の腕の見せ所だったりします(なーんてことが言えるようになったのも、たぶんこの仕事を10年以上やってきたからかもしれません(^^♪)

<っていうことで今井が心がけていることは>

〇 「なくなったモノ」を一緒に探す時間そのものを大事にする(見つかるかどうかより、一緒に探した、という関わりに意味がある?かなと)

〇 「片付けましょう」と急かさず、本人のペースで手放すタイミングを尊重する

〇 家族の不安と本人の希望がずれている時は、間に入って翻訳者になる

在宅医療って、医療行為そのものよりも、こういう地味な「探し物」や「片付け」の場面にこそ、その人らしさとか家族の関係性がじわじわと滲み出てくるものだと感じています。

さて、今日は土曜日、変わらず書類業務です。札幌は今週末は結構暑いですね。残暑はいつまで続くのでしょうか?変わらずコツコツと頑張っていきたいと思います。

 

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