公開日:2018年06月04日

在宅医が考えるファストドクターを取り巻く4つの問題点。

当記事は2018年時点でのものとなります。書いてもう4年たつんですね・・・

2022年現在コロナ感染症に対してファストドクターさんが一定の社会的役割を担っていることは1医師として素直に評価すべきかなと思います。ただしその件と、ファストドクター自体が保険診療制度との間で矛盾を抱えている点とは全く別次元の問題です。

まぁでも厚生省はコロナ禍を経て一つの医療プラットフォームとして成立しつつあるファストドクター、今更否定はできないでしょうね。したら自身に対して国民から、発熱外来や自宅療養の対応等きちんとした医療提供ができていない批判が出てきますから・・・・

ちなみにこの記事を書いた2018年と現在では状況が違っている点が一転あります。それは夜間、深夜往診の加算の算定がどの病名でも北海道でもOKとなった、という点です。ファストドクターさんやコールドクターさんが北海道上陸したのも関係しているのでしょうか・・・・当院でも過去には算定されていた夜間往診や深夜往診の加算の算定が査定されなくなりました!!!なぜ保険者の査定の基準が変わったのかは全くの謎です。

ただ記事自体の訂正はしないほうがいいかと思いますのでこのまま残したいと思います。以下読むときは気をつけてください。

 

今後かかりつけ医の制度化が確立された時や夜間、深夜往診加算の点数が見直された時にこのサービスがどうなるのか、注視していきたいと思っています~。ではどうぞ!↓

 

~2018年の記事~

こんにちは、札幌の往診医@今井です。

いきなりですが結論から言うとファストドクターを取り巻く問題点は以下の4点があります。

1保険診療上の問題

2高額な医療費について

3往診に対しての間違った認識が広がる

4負担は結局国民の負担に・・・結局医療を、医療費を医師と患者が食い物としているだけでは?

以下自分の考えを書いていきますので興味ある方は一読ください。

ファストドクターってどんなサービス?

ツイッターで気になるツイートが流れてきました。

 

ということでものすごいリツイートといいねがついていますね。気になったんで他にも普通の人がこのサービスがどう思っているのかを検索してみました。

 

 

他にも色々あるんですが気になる人は他にもみてみてください。

どんなサービスか気になる方は当該クリニックのHPを参照してください。

気になる料金はこんな感じだそうです。

さてこのクリニックの診療、皆さんはどう考えるでしょうか?おそらくほとんどの方が「この制度いいね!」って思うに違いありません。

ただこのクリニックでのファストドクターでの診療、保険診療上、社会保障上は大きな問題を含んでいます。以下にその問題を挙げていきましょう。

ファストドクターが抱える4つの問題点

1保険診療上の問題

まずはこの問題からとりあげましょう。HPにある通り大人の場合は3割負担で4950円~となっています。これは3割負担でこの値段ですので保険上は点数が1650点~となっているはずです。

保険点数1650点~の内訳がどうなっているかというと、おそらくですが

初診料+往診料+処方箋料+往診料夜間加算 でしょうね。

点数ですが

270点+720点+68点+650点 =1708点

みたいなベースとなっているのでしょう。(完全に自分の予想なので間違っていたらあしからず・・・・)

この点数算定ですが保険診療上大きな問題があります。往診料の夜間加算ですが、基本的には緊急を要する疾患の場合にだけ算定することが可能であり軽症の場合は算定できないのです。(ちなみに重症とは急性腹症、急性呼吸不全、脳梗塞、心筋梗塞などの場合を指します)

なのでHPのこの料金設定をみるだけでも「保険診療上アウトじゃないかな」ってわかっている人はわかるかと思います。

なので本来であれば風邪や発熱などの軽症では算定できない医療行為についても夜間加算などの算定をしている可能性が高くこれは保険医としては違法行為となるのではないでしょうか?(*追記:前述のとおりこの部分は2022年現在では北海道でもOKとなっています。これは2018年現時点での北海道基準ですのでご了承ください。)

 

多分この値段は夜間加算よりさらに高い深夜加算とか算定したんじゃないですかね。

自分は普段癌の末期の患者さんや脳梗塞後遺症の患者さん、COPD末期の患者さんなども診療していますがそれでも夜間や深夜に往診した場合これらの加算を算定しないこともあります。それは保険診療上の定義から外れているからと保険者から査定されたこともあるから、です。

保険診療のグレーゾーンをビジネスにするのは・・・・ちょっと違和感を感じます。

2高額な医療費について

上記のように通常の大人であれば1700点~、つまり17000円以上の医療費がかかることになります。深夜ならさらに高く2300点~となります!(加算をとるのであればですが・・・)

これが外来受診した場合はどうか?おそらくはトータルで500~高くても700点程度、5000~7000円程度で医療費としては1/3程度で済みます。

本当にファストドクターを利用している方は通常の外来の3倍の医療費をかけてまで夜間や深夜に対応すべき病状なのでしょうか?

日中にかかれないから、便利だから、待ち時間を待ちたくないから、熱がでて心配だから等々・・・・確かに往診で対応すべき病状もあるかもしれません。ただ自分がこれまで在宅医療に関わってきた経験を元にすると、正直

外来に来れないほどの熱発や体調不良が若年者で起きた場合って軽症ではないことが多い

っていうのがほとんどだと思います。(高齢者はまた別です。容易にADL落ちますので)

ファストドクターを利用している人の多くは本来は日中や夜間救急外来に行くべきなのです。確かに中にはどうしても夜間に状態悪化して動けない人もいるかも知れません。そういう人が往診を利用することはいいことだと思います。実際自分も札幌でしていますし・・・ただ上記のような高い点数を算定することなく通常の通りの保険請求で対応すべきなんです。無駄に高いコストをかけて夜間や深夜に対応すべきでない医療を行っていることは問題だと思います。

しかも子供なんて自治体によりますが医療費助成で自己負担ほぼ無料ですよね・・・ただだから利用している、なんて考えて利用している保護者の方、一定数いるのではないでしょうか?

3往診に対しての間違った認識が広がる

往診っていうのは基本的には保険診療の定義では通院できない状態の患者さんに対しての診療行為であり、来院できる患者さんは来てもらうっていうのが基本的な保険診療上の考えです。

往診がこれまで一般的でなかったので普通の方は往診=医者が来てくれるいいサービス、みたいな認識かも知れませんが、基本的には通院ができる患者さんは往診対象としてはいけません!!大事なことですので2度いいます。

通院できる人に往診することは基本的には保険診療では認められていません。

頼めばどんな病態でも往診してもらえる、なんでも医師を呼べば来てくれるっていう医療への悪しき認識が広がることは今後の在宅医療の普及や地域包括ケア、何よりこういう医療を受けた人が高齢者になる将来の事も考えても絶対良くないことだと個人的には考えます。

皆の税金から成り立っている保険診療をビジネスに利用していいのでしょうか?

4負担は結局国民の負担に・・・結局医療を、医療費を医師と患者が食い物としているだけでは?

結局はこのファストドクターって

○クリニック=軽症患者さんを5分でみて高額報酬→やった~

○患者さん=夜間や土日に病院に行きたくない、待つのがいやだ→来てくれるならとにかくいいや

っていうWIN-WINの関係で利用が拡大されているのが現状ではないでしょうか?

「医師が来てくれる素晴らしいサービス、だから難癖つけるなよ」とかって言う人もいるかも知れませんが、結局はかかっている高コストの医療費は国民全員で負担していることになるんです・・・・

限られた社会保障費をどう使っていくべきなのか、高齢者医療はどうあるべきなのかを本当に真剣に考えて行かなければいけないこの時代に、便利だから、医師も患者も両者とも幸せだからっていう理由だけでこのシステムを定着させていいのでしょうか?無駄に(通院できるのにしないで往診対応してもらうことに)医療費を使うのは個人的には絶対に看過することはできません。

画期的なシステム!!とかこんなサービス今までなかった!!とかって賞賛の声を聴きますがそれはそうですよね。だって真面目に保険診療していたらアウトだって普通は考えますもん・・・・

医療を、医療費を、社会保障制度を、個人が便利だから、株式会社が利益を挙げられるからというだけで食い物にしていいのでしょうか?結局は保険料の負担として国民が自分で自分の首を絞めているだけではないでしょうか?”社会的課題を解決するプラットフォーム”とかって持て囃されていますが本当にそうでしょうか??自分はその見方には懐疑的ですね。

 

皆さんのご意見はいかがですか?よければご意見くださいね。

 

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