言葉で癒すこと、できていますか?【在宅緩和ケアの現場で、その「ひとこと」を大事にしたい理由】
こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

在宅医や訪問看護師の皆さんに問いたいこと、それは
「言葉で癒すこと、できていますか??」
です。
在宅医療、とくに在宅緩和ケアの現場にいると、薬や処置ではどうにもならない時間がどうしても訪れます。痛みはオピオイドで、息苦しさは酸素やモルヒネなどである程度は和らげることができます。でも、「怖い」「申し訳ない」「まだ死にたくない」という気持ちに効く薬は・・・残念ながら、ありません。
そこで医療者に残された道具は、「言葉」なんだと今井は思っています。
脳神経外科医だった頃の今井は、正直に言うと言葉にそこまで重きを置いていませんでした。手術がうまくいけば、それが一番の医療だと思っていたからです。でも手術室で治しても、人生は治らなかった。在宅医になって15年、そのことを毎日のように教えられています。
言葉は、ときに薬より雄大!
在宅で看取りに関わっていると、「あのひとことで救われました」とご家族から言われることがあります。多くの在宅看取りに関わる中で、何度もそういう場面に立ち会ってきました。
たとえばですがこんな場面(特定されないようにいくつかのエピソード織り交ぜて)↓↓
夜中に呼吸が変わって、慌てて電話をくれた娘さん。訪問すると、もう最期が近い状態でした。娘さんは「私がもっと早く気づいていれば・・・」「ずっと見ていれば・・・」と泣いていました。
そのとき今井が伝えたのは、「お母さんはずっと娘さんの声が聞こえるところにいられて、自宅の普通の暮らしの中で過ごせてきっと安心していたと思いますよ」という言葉でした。医学的に正しいかどうかで言えば、証明はできません(耳は最期まで聞こえている、とはよく言われますが・・)。でも、その言葉を娘さんは、お葬式のあとも覚えていてくれました。
言葉は、検査値も画像も変えません。でも、その人がその時間をどう記憶するかは変えることができます(^^♪
「スピリチュアルペイン」への対応、やっぱり言葉が一番大事だと思いませんか??
逆もまた真なり
逆に言葉で傷つくことも、またあります。
「もうできることはありません」
病院から在宅に移ってこられた患者さんやご家族から、この言葉を言われて悲しかった、つらかったという話は本当によく聞きます。おそらく言った側の先生は「これ以上の積極的治療はありません」という意味で使ったのだと思いますし、今はきちんと患者さんにも伝えることが推奨されてはいます。でも、受け取った側には「見捨てられた」と聞こえてしまう。
立場が変わり、在宅医療側から言わせてもらうと、できることは山ほどあります(^^♪痛みをとること、家で過ごすこと、好きなものを食べること、会いたい人に会うこと。むしろここからが本番ですよね。(でもこれも見えている景色の違いから来ているんでしょうね。)
・・・たまに今井自身もやってしまう失敗も当然ですがあります。忙しい訪問の合間に、玄関で靴を履きながら「じゃあ様子見ましょうね」と言って帰ったことがありました。あとで訪問看護師さんから「奥さん、先生が急いでたから聞きたいこと聞けなかったって言ってましたよ」と教えてもらったこと、ありました。
言葉の中身より、言葉の「置き方」のほうが伝わってしまう。これ、医療者なら誰でも思い当たることがあるのではないでしょうか??
「言葉の使い方」は大事にしたいですね
えらそうなことは言えませんが、15年やってきて今井なりに大事にしていることを書いてみます。
①座って、話す
立ったまま話すと、どんなに優しい言葉でも「急いでいる人の言葉」になります。ベッドサイドに座る、目線をそろえる。それだけで、同じ言葉でも届き方がまったく違います。
②「できないこと」ではなく「できること」から話す
「治療はもうできません」ではなく、「これからは、つらさをとることに全力を使いましょう」。言っている事実は同じでも、聞いた人が向く方向が変わります。前を一緒に見るスタンスで!(^^♪
③沈黙を怖がらない
これが一番慣れが必要ですかね。患者さんが黙ったとき、つい何か言葉で埋めたくなります。でも、その沈黙の中で患者さんは言葉を探していることが多いんです。待っていると、「本当はね・・・」と、一番大事な話が出てくることがあります。待つこともまた大事なり。
④「何が心配ですか?」と聞く
医療者が心配していることと、患者さんやご家族が心配していることは、驚くほどズレていることが多いです(^^♪今井たちが痛みのことを気にしている横で、ご本人は「孫の結婚式に出られるか」を考えていたりします。こちらから説明を始める前に、まずは聞く。これだけで、説明の8割はいらなくなることもあります。
⑤ご家族をねぎらう言葉を必ず入れる
在宅で介護しているご家族は、ほとんどの方が「自分のやり方で合っているのか」と不安を抱えています。「ここまで本当によくやってこられましたね」。このひとことは、どれだけ言っても言いすぎることはないと思っています。
言葉は技術でもあります。センスや人柄だけの話ではなく練習や振り返りで上手くなるものです。だからこそ、常に事例を振り返りながら「あのときなんて言えばよかったか」を考えるようにしたいところですね。
おわりに
治せない病気も、ある。止められない時間も、ある。でも、その時間を「つらいだけの時間」にしないために、医療者にできることはまだ残っているんじゃないかなと今井は考えていますよ。
そのひとつが、言葉なんだと思います。
言葉で癒すこと、できていますか?よければ皆さんの経験、教えてくださいね(^^♪
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