公開日:2026年09月25日

【医師向け】令和の時代の応召義務について理解しよう!~判断基準は”緊急性×時間帯×信頼関係”~

こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

今回のブログの内容はちょっとマニアックなんですが、医師向けのお話です。テーマは医療における「応召義務」について、です。

いきなりですが、先生方、応召義務ってちゃんと説明できますか??

「医者は患者を断っちゃいけないんでしょ?」・・・研修医の頃に先輩からそう教わって、そのまま何となく今日まで来てしまった、という先生は多いのではないかと思います(実は今井も、きちんと読み込んだのは開業してだいぶ経ってからでした・・・)。

でも実は、令和元年12月25日に厚生労働省から「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について」(医政発1225第4号)という通知が出ていて、応召義務の考え方はかなり整理されています。しかもこの通知では、過去の通知(昭和24年通知など)との関係について「今後は、基本的に本通知が妥当する」とされています。つまり、今の判断基準はこれなんです!!

ちなみに法律や通知では「応招義務」と書くのが正式で、「応召義務」は慣用的な表記です。今井も普段は「応召」と書いちゃいますが(笑)、今日はそのまま両方使いますね。

当該資料についてはこちらを確認ください↓

応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について

一枚目のみ載せます(^^♪↓

まず大前提、応召義務は「患者さんとの約束」ではないですよ~

ここ、意外と知られていないところです。

通知では、応召義務は医師が「国に対して」負う公法上の義務であって、患者さんに対する私法上の義務ではない、とはっきり書かれています。

それから、義務を負うのはあくまで医師「個人」です。勤務医であっても、義務を負うのは個人としての医師です。一方で、医療機関も組織として「正当な理由なく診療を拒んではならない」という責務を別に負っています。個人の義務と組織の責務、二階建てになっているイメージですね。

もう一つ大事なのが働き方改革との関係です。労使協定や労働契約の範囲を超えるような診療指示は、労働法の問題であって応召義務の問題ではない、と明記されています。勤務医の先生が「これ以上やると労基法違反になるので」と労務提供を断っても、応召義務違反にはあたりません。

これ、医師の多くを占める勤務医の先生にはぜひ知っておいてほしいところですよね(^^♪

判断の軸は「緊急性」×「時間帯」、そして「信頼関係」!!

では、どんなときに「診ない」ことが正当化されるのか??

通知では、最も重要な考慮要素は「緊急対応が必要かどうか(病状の深刻度)」とされています。そのうえで、「診療時間内・勤務時間内かどうか」と「患者さんとの信頼関係」が重要な要素として挙げられています。

整理すると、こんな感じです。

〇緊急 × 時間内
専門性、設備、他の医療機関で対応できるか(代替可能性)を総合的に考えて、「事実上診療が不可能」と言える場合にだけ、診ないことが正当化されます。ここは専門性と設備に関してどう考えるのか、判断が難しいところなんでしょうが、時間内ならいったんは診療→そして次の医療機関につなぐ、というのが医師の応召義務の観点からはベターな対応なんでしょうね。

〇緊急 × 時間外
応急的な処置をとることが望ましいけれど、原則として公法上・私法上の責任は問われません。求められる対応の程度も低く、心肺蘇生などの応急処置のレベルとされています。診療所に直接来院された場合は、必要な処置をしたうえで、救急対応できる病院にお願いするのが望ましい、とされています。

〇非緊急 × 時間内
原則として診療が必要です。ただし、緊急の場合に比べて正当化される場面は「緩やかに」解釈され、信頼関係なども考慮されます。

〇非緊急 × 時間外
すぐに対応する必要はなく、診ないことは正当化されます。ただ、時間内の受診をお願いしたり、他の医療機関を紹介したりするのが望ましい、とされています。

・・・どうでしょうか??ちょっとだけでも整理できましたか??

特に「時間外」の扱いは、昔の「休診日でも急患には対応しなければならない」という解釈から、かなり大きく変わっています。

正直、ここを知らずに「時間外でも全部断っちゃダメ」と思い込んで疲弊している先生もいるんじゃないかな、と思いますがいかがでしょうか??

よくある「困った」場面はどう考える??

通知には、個別の事例ごとの整理も載っています。現場で悩むところなので、ざっと紹介しますね。

〇患者さんの迷惑行為
診療内容と関係のないクレームを繰り返すなど、診療の基礎となる信頼関係が失われている場合は、新たな診療を行わないことが正当化されます。

〇医療費の不払い
過去に不払いがあった、というだけで診ないことは正当化されません。でも、支払う能力があるのに悪意をもってあえて払わない場合は正当化されます。特段の理由なく自己負担分の未払いが重なっている場合は、「悪意ある未払い」と推定されることもある、とされています。

〇退院・転院
医学的に入院を続ける必要がなければ、退院してもらうことは正当化されます。機能分化・連携の観点から、高度な医療機関から地域の医療機関に紹介・転院をお願いすることも、原則として正当化されます。

〇差別的な取扱い
年齢、性別、人種・国籍、宗教などだけを理由に診ないことは正当化されません。特定の感染症にかかっていることだけを理由に断るのもダメです(ただし、1類・2類感染症など、制度上特定の医療機関が対応するものは別です)。

〇外国人患者さん
基本的に日本人の患者さんと同じ基準で判断します。言葉や文化の違い、「帰国すれば治療を受けられる」といったことだけでは、診ないことは正当化されません。結果として診療そのものが著しく困難、という場合は例外です。

応召義務がなぜ大事??

今井が思うに、応召義務をきちんと知ることは、「断る理由」を探すためではなく、むしろ、どこまでが義務で、どこからが自分たちの選択なのかを知っておくこと。それが結果としては医師が燃え尽きずに長~く地域で医療を続けるための土台になるんじゃないかな、と思っていますよ。

今回のブログが医師の応召義務について少し迷っている、最新の判断基準はどうなっているんだろう?と知らない方への助けになればと考えています(^^♪お力になれたらうれしい限りです。

さて今日はこれから16時30分から法人全体でのカスハラ研修です。楽しく学びたいと思います!

 

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