公開日:2026年07月29日

熊本での災害——余裕ゼロの医療機関が非常事態に対応できるのか??

こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

昨日、熊本で大規模な地震が発生しました。被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

今日はこの災害をきっかけに、医療機関経営者として正直に思っていることを書かせてください。少し重い話になりますが、大事なことだと思うので書きます。

非常事態のたびに感じること

地震、コロナなどの多種な大規模災害が起きるたびに、医療機関には当然のように「対応してください」という要請が来ます。

DMAT(災害派遣医療チーム)の派遣。救急患者の受け入れ拡大。支援物資の提供。スタッフの応援派遣——

医療者として、被災した方々を助けたいという気持ちは当然あります。今井も当然そう思います。でも同時に、経営者として正直に感じることがあります。

今の医療機関に、本当にそれだけの余力があるのだろうか?と。

2026年、医療機関の現実

現場の実態を正直に言います。2026年時点で、多くの医療機関の経営は非常に厳しい状況にあります。

診療報酬は実質的に抑制が続き、人件費・物価は上昇し続けている。スタッフは慢性的に不足していて、今いるメンバーでギリギリ回している状態。有給も取りにくく、残業も減らせていない。

つまり平時からすでにサージキャパシティ(余剰対応能力)がゼロに近い状態で運営している医療機関が、日本中にあふれているということです。

(2024年にも同様の記事書いていますが・・・↓↓)

「医療機関をサージキャパシティ0の状態にしておくこと」はいいことなんでしょうか?

サージキャパシティゼロの怖さ

「サージキャパシティ」とは、平時の業務に加えて突発的な需要増加に対応できる余裕のことです。

コロナ禍でこの言葉が広まりましたが、あのとき多くの医療機関が対応しきれなかった理由のひとつは、平時からすでに余裕がなかったからです。

災害時も同じです。普段の業務をギリギリでこなしているスタッフに「非常事態だから頑張ってください」と言う。疲弊しきった&自らも被災者であるスタッフに、さらに負荷をかける。

その結果どうなるか——スタッフが倒れる、離職する、医療ミスが増える。

非常事態に対応しようとして、通常の医療が崩壊する。このリスクを、誰も真剣に議論していないように感じます。

「頑張れば何とかなる」の限界

日本の医療は長い間「医療者の使命感・献身・善意」で支えられてきました。災害が起きれば自分の休みを返上して駆けつける。夜中に呼ばれても文句を言わずに対応する。給与が安くても「患者さんのため」と続ける。

これは本当に医療のプロとして素晴らしいことです。でも同時に、この「頑張れば何とかなる」という構造に国が甘えているんじゃないでしょうか?

医療者の善意に依存することで、制度的な問題を先送りにしてきた。非常時の医療体制を「使命感でカバーする」ことを前提に設計してきた。

熊本の地震は、その矛盾を再び突きつけています。

経営者として、今感じていること

今井は災害時にはスタタッフには「非常事態には頑張ってほしい」と思っています。医療の現場で、困っている患者さんを助けたいという気持ちは本物です。

でも同時に「普段からかなり頑張って診療や看護をしてくれているスタッフに、さらに無理をさせていいのか」という葛藤もある。

非常事態に対応できる医療機関であり続けるためには、平時から余裕のある体制を作っておくことが必要です。

余裕を作るためには、診療報酬の適切な設定が必要です。人件費上昇に見合う収益構造が必要です。スタッフが休める仕組みが必要です。

これは個々の医療機関が努力すれば解決できる問題ではなく、国全体の医療政策の問題ですよね。

国に問いたいこと

ということで今回の熊本の地震を受けて国に問いたいことは・・・

「サージキャパシティゼロの状態に医療機関を追い込んでおいて、非常事態の対応を現場に丸投げしていいのですか」

です。

被災地に医療スタッフを送ることは大事です。でもその前に、送り出せるだけの余力がある医療機関を、平時から作っておく責任が国にはあるはずです。社会保障制度のシステムは今のままでいいんでしょうか?無駄をどう削っていくべきなんでしょうか?そして必要な備えをどう普段からしておくべきなんでしょうか?

絞り切った布巾からはもう水は絞り出てきません。医療の制度を根本から見直すべきではないでしょうか?

被災された熊本の皆さんが一日も早く安心した生活に戻れることを心から願っています。そして同時に、今回の災害が災害が多発する日本という国において、数多の災害時の医療体制の脆弱さをどう改善していくのかを正直に議論するきっかけになってほしいと思っています。

そう今井は考えますが皆さんのご意見はいかがでしょうか?よければ一緒に考えてみてくださいね。

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