要介護1と2の保険外し??皆さん現在議論されている介護保険についての内容、理解していますか?
こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医@今井です。
介護保険の改悪が進んでいます。自分は制度については安易に”改悪”という言葉は使用しないのですが、今回の議論内容が現実になると現場で生じる問題のしわ寄せが半端ない形で国民に押し寄せると思っています。
何が今議論されているのか?
それは上記表題にあるように、要介護1,2の人の訪問介護、通所介護を市町村の総合事業へ移す構想について、具体化に向けた検討を進めるべきと財務省が改めて提言していること、です。
以下ソース4つ↓(東京新聞さんの図が素晴らしくわかりやすかったのでお借りしました↓)
要介護1、2のサービス切り離しに現場反発…なぜ? 厚労省が介護保険給付から市町村事業に移行案
“要介護1と2の保険外し”、財務省が一部見送りを容認 「段階的にでも実施すべき」と提言
「#要介護1と2の保険外し」がトレンド入り!実際に保険から外れるとどう困る?
「要介護2」は本当に“軽度高齢者”か?介護保険から締め出し、地方自治体任せへ。厚労省ではなく財務省が決めるワケ=原彰宏
元々2015年~の制度改革により、すでに「要支援1・2」は、市区町村の枠組みに移されているのは皆さんご存じですよね?それを要介護1,2まで広げて財政への負担軽減考えましょうね、っていう財務省からの提案です。財務省の立場としての考えは理解できますが、正直政策としてはこれは愚策で現場をみていない意見かなと思います。
2022年現時点での要介護1,2の人は2010年代初期の要介護3相当くらいに該当する人がゴロゴロいます。要介護認定の中身の変更も相まって、制度自体の利用のハードルがかなり高くなっているのが現状です。その段階で要介護1,2の人の通所や訪問サービスを総合支援事業に移行すると・・・正直患者さんはどんどん状態悪化し、家族も疲労、あっという間に重症化&家庭崩壊の道を突き進む形になるのではないかなと感じています。
個人的な案としては要介護1,2を削るくらいなら、要介護4,5の給付を減らした方がまだましじゃないかと思います。また保険が給付する範囲を今より制限しないといけないでしょう。財源ガ―、っていうのも十分理解できますが、要介護1,2の地域支援事業移行化は本当に現場がめちゃくちゃになると思うので是非これはもっと議論を促してもらいたい、そう考えています。
・・・ということで最後に一つ資料を提示して終了したいと思います。2020年のニッセイ基礎研究所さんの資料ですが上記議論についての捉え方や問題点に対しての考えがよくまとまった形で文章書かれています。どうぞお読みください↓(今井が読んでほしい、大事と思った部分は赤文字にしますね)
0年を迎えた介護保険の足取りを振り返る(上)-制度創設の過程、制度改正の経緯から見える変化と論点
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4|地域支援事業が多用される理由
こうした議論を踏まえると、地域支援事業が多用される理由が浮き彫りになる。つまり、介護保険財政の逼迫を受け、(1)予算削減を回避しつつ、新たなニーズに対応する、(2)費用抑制策として、介護予防を進める――という判断である。
このうち前者に関しては、税財源の場合、毎年の予算編成で財務省の査定が厳しく、安定的に財源を確保できるわけではない。さらに地方交付税の計算に際して必要額を確保しても、財政難の自治体が国の思惑通りに予算を使ってくれる保証はないし、地方交付税で対応する場合、高齢化が進んでいく大都市部の自治体など不交付団体に予算を回せないという問題もある。
そこで、介護保険料を「特定財源」として使うことで、介護予防などの必要な施策を展開しようとしている。中でも、介護保険財政が厳しさを増す中、認知症ケアや医療・介護連携、独居世帯の人を対象とした生活支援、地域づくりなど新たな施策を展開しなければならない難しい対応を迫られており、市町村に対して必要な事業を確実に実施させることができる特定財源として、地域支援事業が活用されていると言える。
2番目の点についても、介護保険財政の逼迫が背景にある。つまり、財源上の制約が高まる中、負担増や給付減の選択肢を取ろうとすると、国民や事業者の反発が避けられないため、介護予防を重視する傾向であり、その端的な事例が介護予防・日常生活支援総合事業(新しい総合事業)であろう。
2015年6月に示されたガイドラインでは「市町村が中心となって、地域の実情に応じて、住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実することにより、地域の支え合いの体制づくりを推進し、要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援等を可能とすることを目指す」とうたわれているが、実際には報酬や基準を引き下げたり、予算に上限を設定したりすることで、軽度者の給付を抑制する意図が込められている。
実際、厚生労働省幹部OBは「要支援者への給付をやめますと言えばそれで済む。(略)それをストレートに言えない役所の辛さというべきか」28と皮肉っており、介護予防による給付抑制を目指す方策として地域支援事業が多用されていると言える。
しかし、介護保険制度の全体で見れば地域支援事業は本来、例外的な存在である。そもそも論に立ち返ると、冒頭で述べた通り、介護保険法は「加齢に伴う要介護状態を社会連帯で支え合う」という名目の下、40歳以上の国民から保険料を徴収しており、保険料は要介護状態になった高齢者を支えるための給付に充てられるべきである。少し前に伊吹氏の発言で紹介した通り、社会「保険」と言っても、保険の原則(保険原理)に立てば、保険料の負担に対しては何らかの形で見返りとしての反対給付を伴う必要があるためである。これに対し、地域支援事業は給付ではない点で言えば例外的な存在に過ぎない。しかも強制加入の下、保険料の負担を40歳以上の国民に求めているにもかかわらず、その事業規模を広げていけば、保険料の負担を求めている根拠が揺らぐことになりかねない危険性を有している。原則論を言えば、昨年12月に公表された介護保険部会が冒頭に強調する地域づくりと、介護保険制度改革の話は本来、何の関係もない話である。実際、厚生労働省OBは「本質的に最も問題だと思うのは、(略)対価性のない事業に保険料財源を充当することを国の役人も自治体もあまり疑問に思っていないことでしょう。保険料の目的外使用なのに、それを手柄のように考えているのではないか。本当は被保険者から保険給付に使うように預かっている保険料なのに、あたかも自分たちの固有財源だと思っているようです」と警鐘を鳴らしている29。
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