アフターコロナの認知症政策~新しい日常に向けて
こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医@今井です。
外来や在宅で毎日認知症患者さんを診察し、患者さんの困っていることや家族の方が不安なことなどにできるだけ解答がでるようにしていますが、コロナ禍の影響もあり根本的な解決もできないこともあり難渋することも多々あります・・・・
今後のデイの利用の仕方は?ショートの利用は?施設入所はどうするのか?病院に入院したら面会は?などなど・・患者さん個々人の状況や家族状況、生活状況によって答えは全く違うのですが、アフターコロナの認知症患者さんの日々の生活はどうなっていくのか、非常に興味のある問題だと個人的には思っています。
さて日本医療政策機構から下記のような題での文章がありました。内容については素直に頷けることが書かれていますのでよければ皆さんも是非一読してみてください。文中の「私たちがCOVID-19によってできなくなったことではなく、今できること、これからできることに目を向けよう」ってところ、すごい共感できますね。
日本医療性格機構さんより
HGPI政策コラム(No.12)-認知症政策チームより-「『新しい日常』に向けて」
<POINT>
・私たちは、COVID-19終息後の社会に向けて「新しい日常」を作る局面に入った。
・認知症政策も「新しい日常」に即して、アップデートする必要がある。
・COVID-19によって、認知症ケアでこれまでも大切にされてきた「自分のことは自分で決める」「できることに目を向ける」ことの重要性を社会全体が実感した。
「新しい日常」への動き
2020年3月頃から日本国内でも感染が広がってきた新型コロナウィルス感染症(COVID-19: Coronavirus Disease 2019)は、私たちの生活を大きく変化させています。感染拡大の状況を鑑み2020年4月16日には、政府が全ての都道府県に対して緊急事態措置を実施すべき区域と認定し、私たちの「非日常」が始まりました。不要不急の外出自粛に加え、テレワークの励行、飲食店をはじめ様々な店舗の休業など、全国各地で目にしたことのない光景が広がり、私たちは不安と向き合う日々が続きました。
そして2020年5月21日、全ての都道府県の緊急事態宣言が解除され、一定の移行期間を設け、外出の自粛や施設の使用制限の要請等を緩和しつつ、段階的に社会経済の活動レベルを引き上げていくこととなりました。感染拡大の第2波・第3波を抑え、感染拡大の防止と社会経済活動の維持の両立のため所謂「新しい生活様式」を定着させることが求められています。これまでの日常を取り戻すのではなく「新しい日常」を作る段階に移行したといえるでしょう。
認知症を取り巻く環境の変化
こうした状況を受け、日本医療政策機構では認知症未来共創ハブとの共催により、2020年5月29日にHGPIセミナー特別編「COVID-19下における、認知症を取り巻く『いま』を考える」 をオンラインで開催しました。今後長期化すると予想される現在の社会状況に対し、産官学民で適切な対応策を議論すべく、まずは現在の状況下における、認知症の人やその家族、そして介護に関わる人々の「いま」について共有することを目的としました。
認知症のご本人をはじめ、認知症にかかわる様々なステークホルダーにご登壇いただき、それぞれが置かれている現状についてのご報告やこれからの社会の在り方について議論をしていただきました。非常に多忙な皆さんが同時刻に集まりこうして議論を交わすことができたのは、オンラインだからこそ実現できたことだと思います。
本セミナーの詳細については、追って日本医療政策機構のwebサイトに掲載する開催報告をご覧ください。今回は概要に加え、日英で字幕付きの動画も公開予定です。当日参加できなかった方にも様子をご覧いただけるように、なおかつ国際的に日本の状況を発信する機会となることを目指しています。
「Afterコロナ」を見据えた認知症政策へ
さて私たちが「新しい日常」を作るこれからにおいて、関係する様々な政策もアップデートされていく必要があります。認知症政策もその1つです。人と人との親密さ、地域で多くの人が集まること大切にしてきただけに、今後の新しい日常に向けて再考を余儀なくされる点も多くあります。
例えば「通いの場」も今後在り方を見直す必要のある項目の1つといえます。2019年6月に公表された認知症施策推進大綱では「介護予防に資する通いの場への参加率を8%程度に高める」という目標を設定しました。地区の公民館や公園等の地域において住民主体で介護予防に資する取り組みの推進を促しています。しかし現在の社会状況下では、私たちは人と人との距離を取り、大人数で集まることを避けるように求められています。政府は早速2020年度の第一次補正予算において「通いの場の活動自粛下における介護予防のための広報・ICT化支援」として4.0億円を計上しています。
通いの場の活動自粛下における介護予防のための広報・ICT化支援 4.0億円
新型コロナウィルス感染症の拡大等によって、通いの場に通える機会が減った高齢者に対して、居宅においても健康を維持できるよう、高齢者が健康を維持するための必要な情報(運動、社会交流等)について、広報を行うとともに、散歩支援機能等の運動管理ツール、高齢者用スマホ等を用いたコミュニケーション、ポイント等の機能を有するアプリ等によって通いの場機能を補強する。※1
各自治体の関連する情報を見る限り、現在は自宅でできる体操プログラムを動画で紹介するなどが中心となっていますが、今後はさらにオンラインを活用することで、これまでのつながりをより大きなものにできる可能性があります。(なお厚生労働省は、2020年6月4日付で「通いの場を再開するための留意点」として主催者・参加者に向けて公表しています ※2)
さらには今回、医療政策上の注目点として、オンライン診療の拡大があります。2020年4月10日に厚生労働省から公表された事務連絡では、医療機関や薬局におけるオンライン診療の活用が時限的・特例的に拡大されました。今後、COVID-19が収束して以降もオンライン診療の活用には大きな期待が寄せられています。通常の診療と併用することによって、これまでよりも多職種で認知症の人との接点を増やすことができます。医師との診察に加え、臨床心理士・公認心理師といった心理職や看護師、さらには福祉専門職が多角的に関わることができれば、これまでよりもさらに手厚い支援が可能になるかもしれません。今後は実際にオンライン診療を利用した認知症の人やそのご家族へのヒアリングや実施の枠組み、さらにはモデル事業など、これを機に進展することが期待されます。
社会が認知症ケアの流れに追いつく時代へ
今回のCOVID-19を取り巻く一連の議論の中で、私たちは自らの生活・行動を自ら決めることがいかに尊いことかを感じました。思うがまま出かけることができる、会いたい人と会うことができる、これまで当たり前すぎて意識してこなかったこの事実を、突き付けられたのです。
そして上述のセミナーでも登壇者から「私たちがCOVID-19によってできなくなったことではなく、今できること、これからできることに目を向けよう」と発言がありました。私たちは、これから広がる新しい可能性に目を向け、今できることを維持しつつ、様々な工夫によって「新しい日常」を作ることが求められています。そのために何ができるか、新たな可能性は何か、世界中でそれぞれが模索を続けています。
ふと思い返せば、これらはいずれも認知症の人が置かれた状況を伝える中で、認知症のご本人をはじめ様々な方が発信してきたことでした。COVID-19を経験したことで、ようやく社会が認知症ケアの流れに追いついてきたのかもしれません。
さて今日も診療頑張りたいと思います。コロナ対策のための当院の新しい働き方、まだまだ継続していく予定ですが皆さんの職場はいかがですか?
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