保健医療2035提言書について
先日発表された文章ですがなかなか読み込む暇がなかったのですが、今日ようやく全体を通して簡単に読みました。皆さんはもう確認したでしょうか。在宅や地域包括ケアに関わる医療者、介護者はみておくべき文章と思います。
中身に関して個人的にきになった文章をいくつかピックアップします。
キーワードはおおまかに以下ととらえています。
<地域別の医療構想と診療報酬の対応>
<医師、ケアマネとは別の地域包括ケアマネジメント人材の育成>
<実質的なフリーアクセスの制限とゲートオープナーとしての開業医>
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000088369.html 提言書 全体版より
P20~
① 地域における保健医療のガバナンスを強化する
地域包括ケアシステムの実現にあたっては、地域のことは、地域で主体的に決
めていくことが重要である。地域の状況やニーズに応じた保健医療を計画する
ために、行政、医療従事者、保険者(被用者保険・国民健康保険)、シビル・ソ
サエティーや住民による、制度横断的な地域独自の意思決定の場を構築する。
地域包括ケアに対応するために、他の専門職との連携・調整に優れたマネージ
メント能力を持った専門人材の育成や総合的な資格創設(医療・看護・介護・
リハビリ含めた対応が可能な職種)の検討を進め、人材不足の解消とニーズに
あった雇用の創出を図る。
地域医療構想の実現とそれによる病床の再編等を進めるに当たっては、自治体
の政策立案・遂行能力の向上が不可欠であり、首長のリーダーシップのもと、
保健医療政策人材の育成、確保等を行う。特に、リソースの不足、ニーズの増
大が見込まれる中で、全ての自治体に全てを揃えようとする発想から脱却し、
自治体間での資源の共有、分担を推進する。
地域主体という名の国から地方への単なる「丸投げ」は厳につつしみ、国とし
て必要な支援、助言や法規制などの責任を全うすべきである。国は、基礎的な
サービスについては責任を持って支援・促進するとともに、地方が自律するた
めの体制の整備(インセンティブや規制の在り方を含む構造改革)を進めてい
く。
② 地域のデータとニーズに応じて保健・医療・介護サービスを確保する
都道府県は「医療資源のニーズと配置の適切性の検証」を進める観点から、保
健医療関連の突合データを用いて患者の受診状況等を把握・分析するとともに、
医療機関は ICT を活用し臨床情報を体系的に把握し、医療の質向上を図る。こ
れにより、更なる病床と病院機能の再編等を進める。
マクロ・ミクロレベルでの地域差に関する総合的な要因分析をさらに進め 18 、都
道府県 19 の責とすべき運営上の課題とそうでない課題を精査する。都道府県の努
力の違いに起因する要素については、都道府県がその責任(財政的な負担)を
担う仕組みを導入する。一方、都道府県には、市町村の努力を支援するための
財政的インセンティブを設計する権限を持たせる。介護保険についても要介護
認定率などのばらつきにより、給付費の地域差が生じており、地域差を縮小さ
せるための仕組みを導入する。 20
診療報酬については、例えば、地域ごとのサービス目標量を設定し、不足して
いる場合の加算、過剰な場合の減算を行うなど、サービス提供の量に応じて点
数を変動させる仕組みの導入を検討する。都道府県において医療費をより適正
化できる手段を強化するため、例えば、将来的には、医療費適正化計画 21 におい
て推計した伸びを上回る形で医療費が伸びる都道府県においては、診療報酬の
一部(例えば、加算の算定要件の強化など)を都道府県が主体的に決定するこ
ととする。 22
また、2050 年には、現在の居住地域の6割の地域で人口が半減、うち2割が無
居住化する趨勢 23 を踏まえると、遠隔地でも必要なサービスや見守り等ができる
遠隔医療のための ICT 基盤や教育システムの整備を今から開始する。さらに、
急速に進む人口減少に対応するため、地域包括ケアシステムと新たなまちづく
りの融合や司令塔となるプラットフォームの構築を促進する。
さらに、将来的に、仮に医師の偏在等が続く場合においては、保険医の配置・
定数の設定や、自由開業・自由標榜の見直しを含めて検討を行い、プロフェッ
ショナルとしての医師のキャリアプランを踏まえつつ、地域住民のニーズに応
じて、地域や診療科の偏在の是正のための資源の適正配置を行うことも必要と
なる。
③ 地域のかかりつけ医の「ゲートオープナー」機能を確立する
高齢化等に伴い個別の臓器や疾患を超えた多様な問題を抱える患者が増加し、
医療技術の複雑化、専門化が進む中、身近な医師が、患者の状態や価値観も踏
まえて、適切な医療を円滑に受けられるようサポートする「ゲートオープナー」
機能を確立する。これにより、患者はかかりつけ医から全人的な医療サービス
を受けることができ、また適切な医療機関の選択を可能とする。
このためには、総合的な診療を行うことができるかかりつけ医のさらなる育成
が必須であり、今後 10 年間程度ですべての地域でこうした総合的な診療を行う
医師を配置する体制を構築する。
総合的に医学的管理を行っている地域のかかりつけ医が行う診療については、
包括的な評価を行う。特に、高齢者と子どもについては、かかりつけ医が重要
であり、かかりつけ医をもつことを普及させる。このため、総合的な診療を行
うかかりつけ医を受診した場合の費用負担については、他の医療機関を受診し
た場合と比較して差を設けることを検討する。これにより、過剰受診や過剰投
薬の是正等の効果も考えられる。
2035 年には、必要な保健医療と介護サービスが、地域において切れ目なく提供
されるよう、行政、医療機関、介護施設、NPO が協働・連携し、統合的に提供で
きるようにする。その際、在宅医療・介護は大きな社会的・経済的な負担を伴
う側面を踏まえ、単なる在宅回帰にならないよう、地域社会ごとに、施設入所
やレスパイトケア、さらには、住環境の改善などを組み合わせた多様な保健医
療・介護を実践できるサービスの在り方を検討する。