色眼鏡を通して社会を見て、主語を大きくして論じるの???【「老衰で天国へ」にあこがれる人は知っておいたほうがいい…6000体解剖した法医学者が解説する”本当の死因”】
こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です
週末に医療情報を色々確認していたらトンデモ記事を見つけましたので紹介します。このレベルの低さ、皆さんも一読していいかと思いますよ(^^♪
以下6月6日のヤフーさんより↓
「老衰で天国へ」にあこがれる人は知っておいたほうがいい…6000体解剖した法医学者が解説する”本当の死因”
今井が記事を読んで思ったことを羅列すると
1. 極端な「生存バイアス(選択バイアス)」
筆者は「解剖すればほとんどの場合、何らかの病気や外傷がある」と述べているが、そもそも法医学者のもとに運ばれてくるご遺体は、「自宅で突然亡くなった」「事件の可能性がある」「かかりつけ医がおらず死因が不明」といった「異状死」のケースのみ
臨床医が長年診察し、徐々に食事量が減り、家族に見守られながら穏やかに息を引き取ったような、正真正銘の「老衰」のケースが法医学者に回ってくることは全くないです。筆者は「自分が解剖した高齢者には病気ばかりだった」と言いますが、それはそもそも病気や外傷で亡くなった可能性が高い人だけを診ているからに過ぎないですよ!!
2. 臨床現場における「老衰」の現実を無視している
在宅医療も含めて臨床現場において「老衰」は、細胞や臓器の寿命が尽き、徐々に全身の機能が低下して亡くなるという「自然なプロセスの結果」として極めて普通に診断されるもの。
人間が亡くなる直前には、必ず心臓が止まったり、肺に水が溜まったりします。法医学的なミクロの視点で見ればそれを「心不全」や「肺炎(肺性心)」と呼ぶのかもしれませんが、根本的な原因が「寿命(老衰)」であることに変わりはありません。90歳を超えて穏やかに亡くなった方に対して、「死因は老衰ではなく心不全だ!」と目くじらを立てること、それになんの意味があるの??全く意味不明です。
3. 「法医学者不足」という自らの業界の課題と強引に結びつけている
この記事の最も強引な部分。 たしかに日本は法医学者が不足しており、孤独死や不審死の死因究明(犯罪の見逃し防止など)が遅れているという社会問題はあることは今井も理解しています。
しかし、それを「高齢者の老衰による死」と結びつけるのは無理がありありありあり・・・「高齢者が亡くなったら、正確な死因をつけるために解剖すべきだ(だから予算と法医学者を増やせ)」という主張は、穏やかな看取りの文化や、限りある医療資源の現実を完全に無視したポジショントーク(自分の立場を有利にするための発言)と言わざるを得ないかなと。皆さんもそう思いませんか??
ということで結論としては、
「不審死や異常死の死因を究明する」という法医学の非常に狭いレンズを通してしか死を見ておらず、それを高齢者の自然な最期にまで当てはめようとしているため、話がおかしくなっている
ということなんですよね。
今回の記事が結局伝えたかったことって、結局のところ人生における以下の二つの教訓かなと今井は思っています。
①ネットの記事はどんなに学歴があるものが書いていようが、社会的立場に人が書いていようが鵜呑みにするな
②人は自分独自の色眼鏡を通して社会全体を把握して論じようとする。自分もその可能性はあるためできる限り色眼鏡を外して裸眼で世界を把握するようにしろ
ですね(^^♪
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