公開日:2018年08月06日

在宅の現場で望まない蘇生処置を受けないためにはどうすべきか。

こんにちは、札幌の在宅緩和ケア医@今井です。

時事メディカルの記事ですがとてもいい記事がでていましたので皆さん是非一読してみてください。

在宅の現場で本人や家族は蘇生を希望しない、にもかかわらず病状の変化についていけず救急要請してしまうということはよくある話です。(そんなん事前にわかっているんだから救急要請しなきゃいいじゃない、っていう人は人間の弱さへの洞察力が欠如していますね。)

今後患者サイドからみても、救急医療を対応する救命士サイドとしても、在宅の現場での救命、ACPの扱いについてはたくさんの議論が必要になりそうですね。

どう対応すべきかに関しては個人的には訪問看護師のACPへの積極的な関わりが何より重要になると考えていますが・・・・皆さんはどう考えますか?この記事是非一読くださいね。

時事メディカルより

望まぬ蘇生は中止できるか?自宅でみとる難しさ

在宅医療の役割が大きくなると同時に、「自宅で最後を迎えたい」と考える人が増えている。心肺停止状態に陥ったとき、本人が望まない緊急要請をしてしまうケースも多い。その場合、蘇生措置や搬送を中止することは可能なのか。こんな重い課題をテーマにしたシンポジウムが7月、横浜市で開かれ、さまざまな課題が浮かび上がった。

◇人生の最後を自分らしく

河本クリニック(横浜市)院長の河本和行氏は訪問診療医の立場から講演し、「訪問診療の対象となるのは『通院できない状況』ではない。通院するのに介護が必要で、通院行為自体が患者とその家族にとって大きな負担となる困難な状況を指す」と説明した。

東京都立墨東病院(墨田区)の救命救急センター

在宅医療の目的は「病院医療」から「地域での医療」へ、「治す医療」から「支える医療」へと転換していく中で、「住み慣れた自分の家で人生の最後まで自分らしく過ごすことだ」と言う。「人生という仕事が終わる時は家に帰ろう」という言葉に置き換えてもよい。

自宅で最後を迎えると決め周囲に伝えていても、緊急要請をしてしまう。緊急要請をするのは、普段から主として介護に携わる家族やヘルパー、電話で相談を受けたケアマネジャー、主介護者以外の家族や親族らだ。「想定されていない事態が生じ、緊急事態や容体の急変だと思ってしまう」と河本氏は指摘する。

「心肺停止でも自宅でみとると決めている場合は『緊急』や『急変』ではなく、『状態が変化した』にすぎない」。ただ、「状態の変化」と分かっていても、実際にそれを受け止めることは難しい上に、「最も大きな問題は、本人の意思が確認できないことだ」と述べた。

◇119番イコール蘇生希望

患者が緊急病院に搬送されながら、家族らが「心肺蘇生をしないでください」とお願いすることはできるのか―。済生会横浜市東部病院救命救急センター長の山崎元靖氏は、ドキリとするテーマを掲げた。

心肺停止の患者が救急車で運ばれて来るという通報を受けると、医師や看護師、放射線科医師、薬剤師が約10分で準備を整える。患者が到着次第、心臓マッサージ(胸骨圧迫)や気管挿入などの処置を実施する。救急センターに搬送される間、救急車内でも絶え間なく心臓マッサージが行われる。

「社会死以外は全力で蘇生を行う。心肺蘇生は分単位で効果が低下する。まず蘇生を開始してから考える。そもそも119番通報をしたことは家族らが蘇生を望んでいる、と理解している」

山崎氏は、次のような現場での問題点を挙げる。まず、患者本人の意思を直接確認できない。次に、現場に居合わせない家族がいる状況で、蘇生を望まないのは家族の総意なのか。さらに、救急医のほとんどは家族らと初対面だ。本当に蘇生処置を中止してよいのか。山崎氏は「救命を責務とする救急医が初対面の家族らに対し、5分程度の極めて短い時間で決断を迫ることになる」と、その難しさに触れる。その上で「蘇生を希望しないのであれば、119番通報しないのがベストだ」と結んだ。

◇救急隊員の悩み

119通報を受けて現場に駆け付ける救命救急士の悩みも深い。横浜市消防局救命医療連携担当係長の田中謙二氏は「患者が心肺停止になり、119通報を受けると救急車を向かわせる。救急車の中では必要な救命措置を施し、緊急病院へ急ぐ。これは、消防法に基づいている」と語った。

救急隊員は蘇生処置を施しながら病院へ搬送

しかし、駆け付けた現場で救命処置に「待った」をかけられることがしばしばあるという。横浜市内の救急隊員を対象に実施した調査によると、心肺停止のケースで家族らから「本人は蘇生措置などを希望していなかった」と告げられた経験がある隊員は94%に上っている。ただ、事はそう単純ではない。次に挙げるのは、実例の一部だ。

「自宅でみとる予定だったのに、焦って救急車を呼んでしまった」「救命措置はしないでほしいが、自宅から病院まで搬送してほしい」

救急隊側は、こう応ずるしかないのが実情だ。

「私たちに死亡の判断はできないので、救命処置を実施しないわけにはいかない」「法律上、救命処置をせずに搬送することはできない」

こんな実例を踏まえて山崎氏は、心肺蘇生を望まないことを本人、家族、医師らできちんと話し合いができている場合には「慌てて119番通報するのではなく、訪問診療医や訪問看護師に連絡を取って相談するのも選択肢だと思う」と語り掛けた。

◇意思表示は書面で

法的な視点からはどうか。弁護士で横浜生活あんしんセンター所長の延命政之氏は、家族らがどこに連絡するかにより対応が異なるとした上で「かかりつけ医は本人の意思や状況を知っている。本人が蘇生・延命措置を求めていれば実施し、求めていない場合は実施しない。それは違法ではない」と指摘した。一方、119番通報し救急車を要請した場合は、病院や診療所へ搬送するまで救急救命処置を行う法的義務を救急隊員が負う。「蘇生措置を途中でやめることは職務規定に違反し、本人が死亡した場合、保護責任者遺棄致死罪または殺人罪が成立する。だから、救急隊員は蘇生措置をやめられない」

「在宅医療における人生の最終段階を考える」シンポジウム(横浜市)

人生の最終段階では、意思表示ができない場合も少なくない。このため、意識が明確な時にあらかじめ自らの最終段階の在り方を表明しておくことが大切になる。延命氏は意思表明の手段として、①書面に書き残す②口頭で家族や友人に伝える③かかりつけ医に相談する―を挙げた上で、「いずれも有効だが、確実に意思を伝えるためには書面に書き残すことを勧める」と語った。

◇中断要請は限られた患者

シンポジウムの主催団体である横浜市医師会常任理事の赤羽重樹氏は「在宅で患者をみとる家族の多くは、臨終期に生じる呼吸困難やせん妄(意識障害による混乱)などに直面したことはない」と指摘。このため、「パニックに陥ってこれまでの経緯を忘れ、119番通報してしまうのではないか」と分析する。

赤羽氏は同市内で訪問診療を中心としたクリニックを開業しているが、「救命措置を中断することは非常に難しい。実際に横浜市で救命措置の中断を要請できるのは、がんなど完治が期待できない病気が進行し、ある程度余命が視野に入った患者だ」と言う。しかも、「この患者は救命措置を欲していない」という主治医の趣意書があり、実際に主治医と救命隊員の連絡が取れた場合に限られる。

それだけに、かかりつけの訪問診療医との関係は重要だ。赤羽氏は「信頼できる訪問診療医から、病状の進行や患者の変化、家族としてできることなどについてできるだけ詳しく説明を受けておくことが大切になる」と話している。

 

 

この問題、各自がしっかりと考える必要がありそうですね。

 

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