公開日:2018年08月04日

病院が在宅医療を行う時にしてはいけない7つのこと

こんにちは、札幌の在宅医@今井です。

先日病院からの在宅医療について少しブログで書いたのですが、そのことについてちらほら質問が来ています。

関連これからは病院が在宅医療に本格的に取り組む時代がやってくる。

どのように病院で在宅医療に取り組んだらいいか、現在とりくみはじめたが困っている、○○はどうしたらいいか、などなど・・・・

一つ一つこうしたらいいと書くのは結構手間なので、「病院が在宅医療を行う時にしてはいけないこと」っていうポイントを提示しておけばある程度の考えるヒントになるのではないかと思いますので自分が考える範囲で書いてみたいと思います。

思いつくままに書いていますので順不同で並べていますので適当にみてくださいね。

 

 

病院が在宅医療に行う時にしてはいけないこと

 

1地域の開業医や病院とコミュニケーションを取らずに開始すること

これは絶対してはいけないですね。病院が在宅医療をしようと考えたときにはまずは近隣の医療機関や診療所にきちんと説明しておかないと後々病診連携がまずくなる可能性があります。

どのような理由から在宅医療を始めるのか、何の目的でするのか、その結果どのような影響が今後予想されるのか、近隣の開業医や病院にとってのメリットやデメリットはなんなのか、等々諸々のことをきちんと説明した上で準備に入った方がいいでしょう。

これは実際の在宅医療の担当者がすべきことではなくて、病院の副院長や院長クラスの人の仕事でしょうね。

とにかくこれがなければ病診連携が破滅的になるのできちんと上記については周囲に明確にお伝えしましょう。

2在宅医療担当医が一人で全てを背負って事務方が不在となること

これも絶対ダメです。ともすれば医療の責任者として「お前がまとめてやってね」ってお願いされる医師もいるかと思いますが、基本的には病院でする場合には事務方や看護師の協力が必要不可欠です。

医師が主導して全てするのではなく、基本は事務方のトップにきちんとした人をおいてその上でスタッフの責任者として医師が加わる、といった形が望ましいでしょう。

実際の臨床が始まるとわかると思いますが、正直不慣れな在宅医療の現場で働くのは結構医師としてもストレスが入りますし、何より病院との調整業務は多岐に渡ること必須です。

院内のことは安心して任せられる事務スタッフがいないで在宅部門を病院で立ち上げること、これは絶対やめましょう。

3院内の他職種の参加がないこと

これもダメですね。基本的に病院が在宅医療をやる強みは

①ベットがあること

②色々な職種がいること

③質の高い医療が提供できること

などが挙げられると思います。医師一人で訪問診療をやっても何も強みは活かせません。

少なくとも事務管理者、医療事務、MSW、診療同行もしくは訪問看護師などはセットで在宅医療チームがつくれるように事前に考えておきましょう。

4将来的にベットをどう活用するのかの構想がないこと

これは一人では決められないですが将来的に在宅医療のバックベットとしての病棟がどうあるべきか、この構想がない中でただ漫然と在宅医療を病院が開始するのは間違いだと思います。

緩和ケアにつなげるために重症者をみていくのか、それとも地域包括ケア病棟をたちあげてそこに受け入れるようにするのか、それとも急性期として受けるのか・・・・・

病院が在宅をするメリットはベットがあることですから、この強みをいかす考えなく在宅医療をするのは画竜点睛を欠く行為です。

事前にきちんと将来的な構想を考えてから在宅医療に取り組みたいですね。

5夜間や休日の往診対応ができないこと

これなら(僻地の病院は違いますが)都会では病院が在宅をやる意味はありません。何かあった時に病院に来てね、っていうのは悪くはないですが、普通の在宅療養支援診療所であれば必ず夜間や休日対応はします。

病院での在宅医療が診療所の在宅医療より質的に劣るような対応となるのであればそれなら最初からしてくれる診療所に依頼した方が増しです。

病院が在宅医療をすることで緊急時に入院にバイアスがかなりかかってしまうのであれば、その病院は在宅医療をしない方がいいでしょう。

6訪問看護はについて検討していないこと

開始する時点では訪問診療だけでもいいかと思いますが、訪問診療をするような病院では将来的には訪問看護も絶対必須になると思います。なので病院からの訪問診療、在宅医療を開始する時には訪問看護のこともきちんとあわせて考えないといけないでしょう。

その理由は

①地域でステーションが需要に答えられなくなるから

②受け入れる病棟側の看護師さんも研修する必要があるから

③何より患者さんが希望するであろうから

が挙げられると思いますが、これからは何より①の理由が大きくなるんじゃないんですかね。ステーションの訪問看護師がいないから自宅に帰れない、そんな患者さんこれから激増してくると予想しています。

7事業構想がないこと

これもダメですね。どの程度のスパンで在宅医療をどの程度の規模までもっていくのか、そして院内の協力体制をどう構築するのかを事前にきちんと目標設定しておくことが重要です。とりあえず何となく総合診療している先生が在宅医療を開始する、っていうのは絶対やめた方がいいかと思います。

1にも通じますが、なんのための、どういう構想の病院の在宅医療なのか、っていうことを明確にして事業をすること。これがないのに在宅をするのはやめましょう。

 

 

ということで自分ならこう考えるな、っていう点を長々ですがまとめてみました。基本的に病院で在宅医療をしたいなら、その医師は診療所での在宅を最低でも1年は研修しないと駄目だと思いますが・・・どうなんでしょうかね??病院にそんな余裕はないでしょうか?

それでも病院が嫌でも在宅医療に向き合わなければいけない時期はすぐに来ますので、準備したい病院があればできるだけ早く取り組んだ方がいいでしょうね。

あなたの病院は上にあげられた項目していませんか?確認してみてくださいね。皆さんのご意見もよければ教えてくださいね。