公開日:2018年06月03日
小児・AYA世代のがん罹患率と在宅緩和ケアの問題について
こんにちは、本日は外来は川端先生に任せ在宅の当番医している医師@今井です。
小児・AYA世代(Adolescent and Young Adult、思春期・若年成人世代)の癌罹患率について国立がん研究センターから統計が発表されました。
「がん情報サービス」に「小児・AYA世代のがん罹患統計解説ページを新規掲載 小児・AYAの最新の罹患率とがん種順位も公表
結果の部分のみ抜粋します。
結果の概要
- 本集計は、2009年から2011年の間に「地域がん登録」に参加した都道府県のうち、精度基準を満たした27府県(青森、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、石川、福井、山梨、長野、岐阜、愛知、滋賀、京都、和歌山、島根、岡山、広島、徳島、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分)のデータを用いました(人口カバー率36.8%)。
- 2009年から2011年の小児がん(0歳から14歳)の罹患率は、12.3(人口10万人あたり)でした。AYA世代のがん罹患率は、15歳から19歳で14.2、20歳代で31.1、30歳代で91.1(人口10万人あたり)でした。(図1)
- これらの罹患率を日本全体の人口に当てはめると、1年間にがんと診断される症例数は小児(0歳から14歳)で約2,100例、15歳から19歳で約900例、20歳代で約4,200例、30歳代で約16,300例と推計されます。
- がん種別順位では、0歳から19歳で白血病が1位、20歳代では胚細胞腫瘍・性腺腫瘍が1位、30歳代では女性の乳がんが1位でした。(表1)
- 2007年の先行研究の結果と比べると、全体的に今回の罹患率の方が高い結果になりました。これは、がん登録の精度が向上したことが原因と考えられます。
図1 小児・AYA世代のがんの年齢階級別罹患率(男女計 2009から2011年)
(注) がんは通常、悪性の腫瘍を指しますが、小児など若年のがんの統計では良性・良悪不詳の脳腫瘍を合わせて含むことがあります。図1の罹患率は良性・良悪不詳の脳腫瘍を含みます。
表1 罹患率が高いがん種順位(全がんに占める割合)(注1、 2)
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
0から14歳(小児) | 白血病[38%] | 脳腫瘍[16%] | リンパ腫[9%] | 胚細胞腫瘍・性腺腫瘍[8%] | 神経芽腫[7%] |
15から19歳 | 白血病[24%] | 胚細胞腫瘍・性腺腫瘍[17%] | リンパ腫[13%] | 脳腫瘍[10%] | 骨腫瘍[9%] |
20から29歳 | 胚細胞腫瘍・性腺腫瘍[16%] | 甲状腺がん[12%] | 白血病[11%] | リンパ腫[10%] | 子宮頸がん[9%] |
30から39歳 | 女性乳がん[22%] | 子宮頸がん[13%] | 胚細胞腫瘍・性腺腫瘍[8%] | 甲状腺がん[8%] | 大腸がん[8%] |
個人的に気になるのは子宮頸がんでしょうか。ワクチンが実臨床上で普及したときにこの割合は間違いなく減少するでしょうが・・・・どういう変化をたどるか注視したいと思います。
またこの世代のがん患者さんは在宅緩和ケアを行う上でも色々な問題がありますね。介護保険が使えない、治療にかかる金銭的な問題、仕事をどうするか社会的な問題、子供とどうかかわるか、配偶者との関係、親への病気の告知の問題、などなど・・・・
この統計が少しでもこの世代の病気で苦しむ人や家族のために役に立てばいいですね。