【2018年版】新専門医制度の問題点:確実に地域医療に大きなダメージを与えると思われる6つの理由
こんにちは、脳神経外科専門医ですが総合診療、在宅医療を行っている医師@今井です。
第112回の医師国家試験の合格者が発表されましたね。記事によると
<全体の出願者数は10,351人で、受験者数は10,010人。全体の合格者数は9,024人で、第111回合格者数の8,533人と比べ491人増加した。全体合格率は90.1%。このうち、新卒者の合格者数は8,330人だった。新卒者の合格率は93.3%。>
とのことです、合格した学生の皆さんまずはおめでとうございます。さてこれらの医師になった研修医の人はおそらく志高く今はやる気まんまんだと思います。
さてこれらの研修医の人が考えることは古今東西昔も今も変わらず「どうしたら早く一人前になれるか」だと思います。それを考えると新専門医制度がどうなるかを考えた上でこれらの学生はすでに行動を開始していますよね。
さてその新専門医制度ですが現状確実に地域医療に大きなダメージを与えそうですね。今日はその点について2018年現時点で理解していることwまとめて簡単に書いていきたいと思います。
新専門医制度の元で専攻医は東京に集中
メディウオッチの記事が調度でていましたので紹介します。
新専門医制度、東京で専攻医多いが、近隣県を広くカバーする見込み―日本専門医機構
記事の内容のポイントとしては
①数字だけを見ると▼東京都(+475名)▼福岡県(+71名)▼京都府(+53名)▼大阪府(+48名)▼宮城県(+44名)▼岡山県(+39名)—などで医師が増加し、静岡県(▲79名)や神奈川県(▲72名)、千葉県(▲70名)埼玉県(▲58名)などで医師が大きく減少することになり、「都市部への一極集中」が進んでいるのではないかと思われる。
②このように数字上は東京都に専攻医が集中しているように見えるが、多くの医師が東京都から近隣県に派遣される形となるため地域医療が崩壊するとは考えにくいというのが機構側の見解
③医師偏在を助長しない仕組みの1つである「大都市部の専攻医上限」(シーリング)についても、今回、初めて都道府県別のデータが揃ったことから、「毎年、状況をチェックして適宜、上限数を調整していく」ことが明らかにされている
④これらのデータでも、自治体サイドの「医師偏在が助長される」と言う懸念は払しょくできていないようだ
という内容ですね。数字上は一極集中だけどきにしないでね、という専門医機構の弁は詭弁に聞こえるのは自分だけでしょうか?
地域医療に大きなダメージを与える理由
ということで自分が考えるこの専門医制度が地域医療に大きなダメージを与える理由を考えてみたいと思います。
①ローテーター専攻医にはかつての同じ年の医師と同等の責任のある仕事はさせられない
初期研修が終わり専門医制度の研修をスタートした歩きはじめの医師にとって重要ことは、豊富な症例ときちんとした教育をしてくれる指導医、あとは自分自分で責任を背負って仕事をする環境です。この新専門医制度で数か月地方をローテ―としたとしても上記の指導医や環境に恵まれる可能性は低いのではないかと思います。病院側もローテータ専攻医の能力の把握してからでないと仕事させられないと思いますが医師の能力の把握ってやっぱ同僚として働いてもきちんとわかるまで半年程度はかかりますよ。その間は注意しながらの仕事になるのは間違いなしです。
②女医さんが戦力になることには出産や育休となる可能性が高い
初期研修終わる頃にはストレートで入った女医さんも26歳、さらに専門医とるために4~5年研修が必須化されると終わる頃には30前半となります。家庭との両立を考えると、研修終わったその頃に子育て開始しようかなと思う女医さんがいても不思議ではないです。というかそれが普通でしょう。
そうなると今まで教えてきた知識や技術、経験も産休で一度リセットされて再度またリスタートせざると得なくなります。専門医とってこれから地域で活躍してほしい!っていう時期にこうなると人が少ない地域医療への影響、大きいですよね。さらにそんな子育て中であればある程度医師の人数が多くないと勤務も難しいでしょうし・・・・新専門医制度は女医さんの戦力化を阻害しています!
③地域に密着して診療する楽しさを学ぶ機会が少なくなる
基本的にまずは専門医をとるのが一つのハードルになるのは間違いないでしょうから(自分もまずは専門医が目標でしたし・・)最初から地域の医療機関で選択肢を狭めるよりは大きな都市でたくさんの医療者の中で交わりながら選択肢を広げよう、と考える学生が多くなるのは普通のことではないでしょうか?結果として今まで地方で専門医研修してそのまま地域に密着して診療継続する楽しさもあることを学ぶ事ができた医師の機会がなくなります。若いころに地方にいかないと年齢いってから初めて地方で働くのは家族の問題もでてくるし難しいでしょうね。
④現行の指導医の負担がさらに増える可能性がある
上記のように地方への医師がローテーターのみとなり責任のある仕事をお願いできなくなる&医師自体も減少すると指導医の負担が大幅に増えるでしょう。これって初期研修制度の時にも全く同じこと起きたのにまた繰り返すんでしょうか?ほぼ間違いなくこの30代から40代の指導医層に大きな負担を与えるでしょうね・・・
⑤学生も初期から研修先を絞り地域に行かなくなる
さらに問題は専攻医だけではありません。基本的には学生のうちから自分の目標を設定している志の高い学生は研修医になった後にどうキャリアアップしていくのか、を医師になるときにある程度具体的に考えていると思います。そうなるとわざわざ初期研修を地方に行くでしょうか。
メディウォッチの記事にあるように都道府県毎の専攻医の数の制限や専門医のシーリングを行うのであれば研修医のときからコネをつくろう!と思うのは当然だと思います。結果初期研修医から都市部にさらに集中する形になるでしょう。
⑥内科よりもマイナー科に進む可能性が高くなる
1人前になるのに時間がかかるメジャーの内科や外科などでは早く一人立ちしたい医師の希望に答えるのが難しくなるでしょう。結果間違いなく早く仕事ができるようになる、病院にもしばられずに民間でも生きていけるようになりたいと思う研修医はマイナー化にどんどん進むことになるでしょうね。
自分は脳神経外科専門医になるとは学生の時から決め手はいましたし卒後の研修どうするかは学生のときにもう大体考えてはいました。今の研修医の人もほぼそうですよね?自分のキャリアにとって最善の道を探す、その結果今の新専門医制度では地域医療に大きなダメージを与えてしまうようになると考えられます。
今からでも軌道修正は難しいですか?皆さんはどう考えるでしょう?よければご意見教えて下さい。
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