公開日:2018年03月20日

在宅における病理解剖について考えませんか?【意義、問題点、今後どうすべきかなど】

こんにちは、本日もまだ雪が降っている札幌の在宅医@今井です。

札幌には在宅医の組織、札幌在宅医療協議会が存在します。坂本先生や矢崎先生、吉崎先生などが引っ張って運営されておりますが、どんどん新しいことをされておりとても刺激的ですね。今回は在宅医療における病理解剖について、症例検討会をされるとのこと。できれば参加したいと思いますがそれにむけて自分なりに在宅医療における病理解剖について簡単にその意義と問題点、今後どうすべきかなどをまとめてみたいと思います。

在宅における病理解剖の意義

まずは関連するニュースが最近ありましたのでみてみましょう。産経新聞より

神経疾患の在宅患者の最終診断に不可欠 病理解剖の費用助成を

生前は正確な診断が難しい神経疾患の患者が在宅での療養後に亡くなった場合に、病理解剖にかかる費用を助成する取り組みを、東京の2人の医師が進めている。

病理解剖は、比較的実施しやすいはずの病院でも激減する一方、自宅や老人施設での看取(みと)りが増加。このままでは神経疾患への理解が深まらないとの危機感が背景にある。

2医師は、東京都医学総合研究所の内原俊記・脳病理形態研究室長と、新渡戸記念中野総合病院(東京)の融衆太・神経内科部長。内原さんが同窓の融さんに声を掛け、融さんも「臨床や研究の発展につながる」と賛同した。

パーキンソン病や認知症などの神経疾患は、体の震え、記憶力の低下などの症状や、脳の画像検査結果を基に診断するが、内原さんは「解剖して脳を調べると、2~3割の診断は間違っていたことが分かる。最終的な診断には病理解剖が非常に重要だ」と話す。

だが病院での解剖件数は過去30年で大幅に減った。病院の医師は多忙で解剖の時間が取りにくく、療養の場が病院から在宅へと移る流れの中でも、患者や家族に解剖の意向を尋ねる習慣はない。

特に大きな問題は、1回30万円ほどかかる費用だ。内原さんらは「財源があれば在宅で亡くなった人の解剖も可能ではないか」と、医療関係の財団に資金援助を申請。平成25年から中野総合病院の周辺で助成を始めた。在宅医が解剖に立ち会い、分かったことを遺族に伝えたり、学会発表したりしたこともある。

昨年秋には追加の援助が得られたため、同病院を窓口として、対象を全国に拡大。助成は5年で計30件になった。

それぞれの地元で解剖を行える態勢があれば資金が続く限り助成したいという。

 

国を挙げての地域包括ケアの推進でこれまで以上に在宅で看取りとなる患者さんは激増すると思われます。心不全、脳血管障害、癌など比較的病因が明確な患者さんに関しては病理解剖の意義は乏しいかも知れませんが、現在まだ病気の解明が進んでいない神経難病やその他治療法が確立されていない病気の今後の研究のためには病理解剖がその病気の解明や診断の進歩に寄与できる可能性は高いと考えられますよね。特に神経難病の患者さんはメインの療養がこれから介護医療院や在宅になると予想されますので、在宅医療において如何に病理解剖を行っていくのか、はその診断や治療法の確立には重要でしょうね。

また今後死因が不明である在宅死の患者さんもどんどん激増するでしょう。検死も必要でしょうが医学的にそのような病態を解明したい、次の患者さんに役立てたいと思ったときに現状ではやはり病理解剖をきちんと行う必要がありますね。

簡単にまとめると在宅医療における病理解剖の意義は

①神経難病などの難病の診断や治療法が正しかったのかどうか、医学的なフィードバックを得ることができる

②死因がよくわからなかった患者さんを解剖することで在宅医療の質を高めることができる

の2点に集約することができるのではないでしょうか?まだまだAiでもわからないことたくさんありますよね。

在宅における病理解剖の問題点

という訳で利点はそこそこありそうですがなぜ浸透しないのか、もちろんたくさん問題点があるからですね。まとめてみたいと思います。

在宅側の問題

本人と家族から同意を得るのが難しい(メリットがないため)

解剖の手続きがわからないし在宅医側にはその負担も大きい

③在宅死と解剖がそもそもあわない、穏やかな看取りと解剖はそぐわない?

病院側の問題

病理医の人手不足

費用が誰が負担するのか

③医学的情報が病院と同じレベルではなく不足している

どの機関が解剖し遺体の搬送と返却、報告をどうするのかなどシステムが確立していない

 

赤文字部分は今井がそれが大きな問題点だと考える部分ですが、この問題って現状の制度の中で解決することはできるのかなぁ・・・・うーん、問題点はわかっても解決すべきかどうかって難しい問題ですね。在宅医療での病理解剖にかかる費用や手間が本当にそれ以上のメリットがあるのか、きちんと考えていかないといけないですね。

今後どうすべきか

というわけで在宅医療における病理解剖の意義と問題点を簡単に振り返ってみましたが、今井の意見としては

在宅における病理解剖は必要ではあるけれど、かける労力や人的、制度的問題を考えると全国的に普及させるのはかなり難しいのではないか、なので症例を絞り、行う都市を絞ってシステムをつくるのがベターではないか

と考えます。するのであるならば症例を絞った上で病理の医師がいる都市に限定して行い、その負担は在宅医や単独の病院のみに負わせないようにするシステムの確立が必須かなと考えます。難病患者さん全員を対象!とかっていうのは現実的ではないですよね・・・

さらに言えば病理解剖も重要ですが、これからそれ単独ではなく病理解剖のデータをいかにAiによる画像診断の技術とどんどんリンクさせてデータ集積していくかの方が重要になるような気がします。

 

と諸々書いてみましたが皆さんはどう考えますか?よければご意見くださいね。

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