公開日:2017年07月26日

在宅患者さん、医療者の支持基底面

今日は実習がありましたが内容はとってもおもしろいかったです・・・・

 

こんにちは、産業医研修3日目@今井です。連日面白い内容の講義を聞いていますが産業医における4管理1教育(作業環境管理、作業管理、健康管理、労働衛生教育、統括管理)の概念ですが徐々に腑に落ちてきています。さらに、これって汎用性のある概念で産業医の仕事の枠を超えて活用できるな、と講義を受けながら考えていました。

4管理1教育を当院のクリニックで考えると作業環境管理=診療所やステーションの実運用上の周辺問題の解決、作業管理=臨床に個々が取り組む上での解決すべき問題、健康管理=個別のクリニック職員の状態把握、労働衛生教育=職員教育、統括管理=法人運営の問題解決、と考えることができます。あとはその問題解決のアプローチは変わらないためちょびっとだけ条件変えれば思考方法をそんなにかえずに色んな問題に対応できるなとひとまず自分で結論がでました。ということで今回の研修は何度も繰り返しますが産業医研修の枠を超えて医療機関の管理職やマネジメントに興味ある方は必修の研修であるような気がします。(研修医の方も参加しているみたいですが研修医の人が受けるのは少しもったいない気がしますね。現場たくさんみてから受けた方が身になると思いました。)

↓ちなみに写真は本当に時間ないため配給された弁当しかとっていませんでした。

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さてある思考方法を他に当てはめるって自分はたまにやりますが皆さんはどうでしょうか。せっかくなので最近考える機会があったとこを少し話します。

先日当院でリハビリ3人衆が講義をしてくれました。個別介助の仕方と支持基底面や重心線の話だったと思います。(あれ、ブログでもとりあげましたっけか?)

↓その時の写真です

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自分なりに要約すると

①介助はその人が使える力の評価から

②伸ばせる力は伸ばしてあげるように介助する方法を考えよう

③もし動作介助するのであれば腰(つまり体幹)を近づけて

④患者さんの姿勢保持の安定性は支持基底面が大きく影響している

⑤2点よりも複数の点で支えよう、できれば平面(2次元)よりも立体的(3次元)な支点を、それにより姿勢は各段に安定していく

との内容であったと思います。つまり患者さんの安定性=支持基底面がどれだけしっかりしているかを意識していきましょうって話でした。

~ちなみに支持基底面とは~

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支持基底面(base of support:BOS)とは,体重や重力により圧を感じることができる身体表面(支持面)とその間にできる底面のことをいう.健常人の場合,重心線(line of gravity)がこの支持基底面から外れると,転倒するかそれを防ぐための戦略が取られる.ヒトは地球上に生きる限り重力の影響を必ず受けて生活せざるをえないため,支持基底面という概念が存在することとなる.

身体の安定性には,基本的に支持基底面の広さ,支持基底面内の重心線の位置に加え,支持基底面に対する重心(center of gravity)の相対的な高さが影響を与える.一般に支持基底面に対し重心が高い位置にあれば安定性は低下し,重心が低い位置にあれば安定性は増す.幼児で考えると,一見重心は低い位置に存在するように思われるが,頭部の大きさのために相対的な重心の高さは成人に比して高くなる.その結果として転倒しやすくなるわけである.またヒトに限定すればその身体は1つの剛体ではなく,各関節からなる分節を有した複合体である.つまり単体としての重心のみで安定性は説明できず,関節可動域や筋力,感覚入力による姿勢コントロールも,支持基底面を基準として安定性を語るうえでは重要な因子となる.

 

さてこの内容、リハから飛び越えてそのまま在宅患者さんを支える周辺環境を考える時にも応用できないでしょうか。

つまり

①介助はその人が使える力の評価から=在宅生活はその人が使える体力、社会資本の評価から

②伸ばせる力は伸ばしてあげるように介助する方法を考えよう=全てのケアを提供するのではなく真のニーズをとらえよう

③もし動作介助するのであれば腰(つまり体幹)を近づけて=患者さんの在宅支援はどれだけ近い距離にいけるかがカギ

④患者さんの姿勢保持の安定性は支持基底面が大きく影響している=

⑤2点よりも複数の点で支えよう、できれば平面(2次元)よりも立体的(3次元)な支点を、それにより姿勢は各段に安定していくい

④、⑤ですがでは在宅医療で支持基底面を構成する要素はなんでしょうか。自分は1次元=患者さん自身、2次元=家族友人ケアマネ、3次元=訪問看護、ヘルパーさん、リハビリ、訪問診療医、などになるのではと思います。④⑤から考えると在宅生活を安定して過ごすようにするためには家族や友人、ケアマネさんなどの2次元の面だけで支えるのではなく3次元的な支持基底面を複数つくる(訪問看護やヘルパーさんの導入、診療医の導入)ことでどんどん在宅患者さんの生活は安定していくのかなと、この時リハスタッフの支持基底面の話を聞きながら、そんなこともちらっと考えていました。

在宅患者さんの支持基底面、皆さんは意識していますでしょうか?患者さんが一本足となっていませんか?もしくは指示基底面の作り方、失敗してはいませんか?考え方をちょびっと他の事に応用してみると、色々見えてくるものもありますね・・・・・(うーん、締りのない文章ですみません。)

 

とまあひとまず今回いいたい事は、色んな概念を他に応用して考えてみるとまた違った見方が出てきますので試してみてくださいってことでした・・・

 

さて本日の医療ニュースはこちらです。在宅とはあんまり関係ない話題です。僻地で頑張っている医療者を権利意識が強い人はどう思っているんでしょうか?こんな扱いされていたらこの医師にとっても住民にとっても悲劇ですよね・・・

ハフポストから

「救急ヘリを呼べ」観光客のモラルに、沖縄・竹富島の医師が「疲弊」訴え http://www.huffingtonpost.jp/2017/07/26/taketomi-okinawa_n_17584808.html?utm_hp_ref=japan

沖縄・竹富島でたった1つの医療機関、竹富町立竹富診療所が、一部の観光客が無理な要求をしてくることで「スタッフが疲弊している」とFacebookで悲痛な訴えをしている。投稿した診療所の唯一の常勤医、石橋興介さん(38)は、ハフポストの取材に対して、「離島の医療資源は限られている。出来ないことが多いことを理解して、マナーを守って欲しい」と話した。

石橋さんがFacebookに投稿したのは2017年7月25日。

「船をチャーターしてほしい」「ヘリを呼んでほしい」「専門医がいない、薬剤がないのはなぜ」と診療内容に対してクレームをつける患者がいるとして、「内地の病院の様に、全てが揃っている訳ではありません」「観光客の皆さんは、各離島の状況をよく知った上で、宿泊してもらいたい」としている。

ハフポスト日本版では、投稿した医師の石橋さんに、現状について聞いた。

——投稿されたような観光客のモラル問題はいつ頃から浮上したことなのでしょうか?

実はずっと歴代の医師が同じ悩みを抱えています。石垣島から一番近い離島で、島の規模に対して非常に多くの観光客が訪れるからです。

——どんな患者さんに困っておられますか

日中は、白砂の道を自転車で走って転んだ、であるとか、熱中症などによる脱水症状などの訴えが多いですね。これは注意すれば防げる可能性があります。

投稿したような、軽症にも関わらず「船をチャーターしてほしい」「ヘリを呼んでほしい」という無理な訴えがあるのは主に夜間です。高級リゾートに宿泊していて「金ならあるんだ」と言う人もいましたし、軽症なので緊急搬送などは不要と診断しても「あなたは(特定の病気の)専門医じゃないから信じられない」となじられたりしたこともありました。

——ちょっと信じられないような事態ですね…

万一、命に関わるような事態には、船などでの救急搬送も不可能ではありません。しかし、観光客の方には、離島はリスクだということを知ってもらいたい。限られた医療資源を大切に使うために、観光で来る方にも理解とマナーが大切です。

私がもう1つ訴えたかったことは、島の人たちは診療所を維持するために我慢している、ということです。

島の人たちは医者がいなくて、不安な苦しい暮らしを強いられた経験がありますから、無茶なことは言いません。週末に体調を崩しても、迷惑をかけてはいけないと診療所に連絡せず、「よく我慢したな」と思うような方さえいました。

島の診療所は本来、そういう島の方たちの健康を維持するためにあって、私もそのために働いているんです。

竹富島と医療

竹富島は石垣島から高速船で約10分。昔ながらの沖縄の町並みが残る島として近年、人気が高まっている観光地だ。

島の人口は364人(2017年1月末)。これに対して観光客は年間約48万2000人(2016年)が訪れる。1989年の約8万6000人から5倍近くに増えており、観光の環境は激変した。

島で唯一の医療機関である町立竹富診療所は、2009年4月〜2011年4月の2年間、2014年7月〜2015年3月までの9カ月間、常勤医が不在だった。

福岡県内の医療機関に勤務していた石橋さんが2015年の4月に常勤医として着任し、現在は医師、看護師、事務職員の3人で診療所が運営されている。夜間の急患の際には3人に加えて、ボランティアの消防団員が駆けつけることになるという。

石橋さんは診療以外にも、65歳未満の死亡率が高いなどの健康課題を解決するため、島をあげての予防医学活動に取り組んでいる。

 

 

このお医者さんの支持基底面は何で構成されていて、どの程度安定しているんでしょうかね・・・・観光客がその支持面を壊し続けないことを祈ります・・・