平成28年度の診療報酬改定の基本方針について
診療報酬の追加の情報がきましたので掲載します。来年度の改定の方針と書いてありますが、根本的には医療と介護の同時改定が行われる平成30年にむけた基本方針の発表だと自分は捉えています。簡潔な文章ですので皆さん是非全文みてみてください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000106231.html より http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000106491.pdf
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平成 28 年度診療報酬改定の基本方針
1.改定に当たっての基本認識
(超高齢社会における医療政策の基本方向)
○ いわゆる「団塊の世代」が全て 75 歳以上となる平成 37 年(2025 年)に向けて、制度の持続可能性を確保しつつ国民皆保険を堅持しながら、あらゆる世代の国民一人一人が状態に応じた安全・安心で質が高く効率的な医療を受けられるようにすることが重要である。
○ 同時に、高齢化の進展に伴い疾病構造が変化していく中で、「治す医療」から「治し、支える医療」への転換が求められるとともに、健康寿命の延伸の観点から予防・健康づくりの取組が重要となってくる。医療や介護が必要な状態になっても、できる限り住み慣れた地域で安心して生活を継続し、尊厳をもって人生の最期を迎えることができるようにしていくことが重要である。
○ また、この「超高齢社会」という問題に加えて、我が国の医療制度は、人口減少の中での 地域医療の確保 、少子化への対応、 医療保険制度の持続可能性の確保といった様々な課題に直面しており、さらには、災害時の対応や自殺対 策な ど 、個 々の 政策 課題 への 対応 も求 めら れて いる 。 こうした多面的 な問 題 に対応するためには、地域の実情も考慮しつつ、平成26 年度に設置 された地域医療介護総合確保基金 をはじめ、 診療報酬、予防・健康づくり、更には介護保険制度も含め、それぞれの政策ツールの特性・限界等を踏まえた総合的な政策の構築が不可欠である。
○ さらに、2035 年に向けて保健医療の価値を高めるための目標を掲げた「保健医療 2035」も踏まえ、「患者にとっての価値」を考慮した報酬体系を目指していくことが必要である。
(地域包括ケアシステムと効果的・効率的で質の高い医療提供体制の構築)
○ 「医療介護総合確保推進法」等の下で進められている医療機能の分化・強化、連携や医療・介護の一体的な基盤整備、平成 30 年度(2018 年度)に予定されている診療報酬と介護報酬の同時改定など、2025 年を見据えた中長期の政策の流れの一環としての位置づけを踏まえた改定を進めていく。
○ 特に、地域包括ケアシステムや効果的・効率的で質の高い医療提供体制の整備には、質の高い人材を継続的に確保していくことが不可欠である。人口の 減少傾向や現下の人材不足の状況に鑑み、医療従事者の確保・定着に向けて、地域医療介護総合確保基金による対応との役割分担を踏まえつつ、医療従事者の負担軽減など診療報酬上の措置を検討していくことが必要である。
(経済成長や財政健全化との調和)
○ 医療政策においても、経済・財政との調和を図っていくことが重要。「経済財政運営と改革の基本方針 2015」や「日本再興戦略 2015」等も踏まえつつ、無駄の排除や医療資源の効率的な配分、医療分野におけるイノベーションの評価等を通じた経済成長への貢献にも留意することが必要である。
2.改定の基本的視点と具体的方向性
(1)地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点
【重点課題】
(基本的視点)
○ 医療を受ける患者にとってみれば、急性期、回復期、慢性期などの状態に応じて質の高い医療が適切に受けられるとともに、必要に応じて介護サービスと連携・協働するなど、切れ目ない提供体制が確保されることが重要である。
○ このためには、医療機能の分化・強化、連携を進め、在宅医療・訪問看護などの整備を含め、効果的・効率的で質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築していくことが必要である。
(具体的方向性の例)
ア 医療機能に応じた入院医療の評価
・ 効果的・効率的で質の高い入院医療の提供のため、医療機能や患者の状態に応じた評価を行い、急性期、回復期、慢性期など、医療機能の分化・強化、連携を促進。
イ チーム医療の推進、勤務環境の改善、業務効率化の取組等を通じた医療従事者の負担軽減・人材確保
・ 地域医療介護総合確保基金を活用した医療従事者の確保・養成等と併せて、多職種の活用によるチーム医療の評価、勤務環境の改善、業務効率化の取組等を進め、医療従事者の負担を軽減。
ウ 地域包括ケアシステム推進のための取組の強化
・ 複数の慢性疾患を有する患者に対し、療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を継続的に実施するなど、個別の疾患だけではなく、患者に応じた診療が行われるよう、かかりつけ医やかかりつけ歯科医の機能を評価。
・ 患者の薬物療法の有効性・安全性確保のため、服薬情報の一元的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう、かかりつけ薬剤師・薬局の機能を評価。
・ 医療機関間の連携、医療介護連携、栄養指導等、地域包括ケアシステムの推進のための医師、歯科医師、薬剤師、看護師等による多職種連携の取組等を強化。
・ 患者が安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で療養や生活を継続できるための取組を推進。
エ 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
・ 患者の状態や、医療の内容、住まいの状況等を考慮し、効果的・効率的で質の高い在宅医療・訪問看護の提供体制を確保。
オ 医療保険制度改革法も踏まえた外来医療の機能分化
・ 本年5月に成立した医療保険制度改革法も踏まえ、大病院と中小病院・診療所の機能分化を進めることについて検討。
・ 外来医療の機能分化・連携の推進の観点から、診療所等における複数の慢性疾患を有する患者に療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を継続的に実施する機能を評価。
(2)患者にとって安心・安全で納得できる効果的・効率的で質が高い医療を実現する視点
(基本的視点)
○ 患者にとって、医療の安心・安全が確保されていることは当然のことであるが、今後の医療技術の進展や疾病構造の変化等を踏まえれば、第三者による評価やアウトカム評価など客観的な評価を進めながら、適切な情報に基づき、患者自身が納得して主体的に医療を選択できるようにすることや、病気を治すだけでなく、「生活の質」を高める「治し、支える医療」を実現することが重要である。
(具体的方向性の例)
ア かかりつけ医の評価、かかりつけ歯科医の評価、かかりつけ薬剤師・薬局の評価
・ 複数の慢性疾患を有する患者に対し、療養上の指導、服薬管理、健康管理等の対応を継続的に実施するなど、個別の疾患だけではなく、患者に応じた診療が行われるよう、かかりつけ医やかかりつけ歯科医の機能を評価。(再掲)
・ 患者の薬物療法の有効性・安全性確保のため、服薬情報の一元的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう、かかりつけ薬剤師・薬局の機能を評価。(再掲)
イ 情報通信技術(ICT)を活用した医療連携や医療に関するデータの収集・利活用の推進
・ 情報通信技術(ICT)が一層進歩する中で、患者や医療関係者の視点に立って、ICT を活用した医療連携による医療サービスの向上の評価を進めるとともに、医療に関するデータの収集・利活用を推進することで、実態やエビデンスに基づく評価を推進。
ウ 質の高いリハビリテーションの評価等、患者の早期の機能回復の推進
・ 質の高いリハビリテーションの評価など、アウトカムにも着目した評価を進め、患者の早期の機能回復を推進。
(3)重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点
(基本的視点)
○ 国民の疾病による死亡の最大の原因となっているがんや心疾患、肺炎、脳卒中に加え、高齢化の進展に伴い今後増加が見込まれる認知症や救急医療など、我が国の医療の中で重点的な対応が求められる分野については、国民の安心・安全を確保する観点から、時々の診療報酬改定においても適切に評価していくことが重要である。
(具体的方向性の例)
○ 上記の基本的視点から、以下の事項について検討を行う必要。
ア 緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価
イ 「認知症施策推進総合戦略」を踏まえた認知症患者への適切な医療の評価
ウ 地域移行・地域生活支援の充実を含めた質の高い精神医療の評価
エ 難病法の施行を踏まえた難病患者への適切な医療の評価
オ 小児医療、周産期医療の充実、高齢者の増加を踏まえた救急医療の充実
カ 口腔疾患の重症化予防・口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進
キ かかりつけ薬剤師・薬局による薬学管理や在宅医療等への貢献度による評価・適正化
ク 医薬品、医療機器、検査等におけるイノベーションや医療技術の適切な評価 等
(4)効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点
(基本的視点)
○ 今後、医療費が増大していくことが見込まれる中で、国民皆保険を維持するためには、制度の持続可能性を高める不断の取組が必要である。医療関係者が共同して、医療サービスの維持・向上と同時に、医療費の効率化・適正化を図ることが求められる。
(具体的方向性の例)
ア 後発医薬品の使用促進・価格適正化、長期収載品の評価の仕組みの検討
・ 後発品の使用促進について、「経済財政運営と改革の基本方針 2015」で掲げられた新たな目標の実現に向けた診療報酬上の取組について見直し。
・ 後発医薬品の価格適正化に向け、価格算定ルールを見直し。
・ 前回改定の影響を踏まえつつ、現行の長期収載品の価格引下げルールの要件の見直し。
イ 退院支援等の取組による在宅復帰の推進
・ 患者が安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で療養や生活
を継続できるための取組を推進。(再掲)
ウ 残薬や重複投薬、不適切な多剤投薬・長期投薬を減らすための取組など医薬品の適正使用の推進
・ 医師・薬剤師の協力による取組を進め、残薬や重複投薬、不適切な多剤投薬・長期投薬の削減を推進。
エ 患者本位の医薬分業を実現するための調剤報酬の見直し
・ 服薬情報の一元的把握とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう、かかりつけ薬剤師・薬局の機能を評価するとともに、かかりつけ機能を発揮できていないいわゆる門前薬局の評価の適正化等を推進。
オ 重症化予防の取組の推進
・ 重症化予防に向けて、疾患の進展の阻止や合併症の予防、早期治療の取組を推進。
カ 医薬品、医療機器、検査等の適正な評価
・ 医薬品、医療機器、検査等について、市場実勢価格を踏まえた適正な評価を行うとともに、相対的に治療効果が低くなった技術については置き換えが進むよう、適正な評価について検討。
・ また、医薬品や医療機器等の費用対効果評価の試行的導入について検討。
3.将来を見据えた課題
○ 地域医療構想を踏まえた第 7 次医療計画が開始される平成 30 年度に向け、実情に応じて必要な医療機能が地域全体としてバランスよく提供されるよう、今後、診療報酬と地域医療介護総合確保基金の役割を踏まえながら、診療報酬においても必要な対応を検討すべきである。
○ 平成 30 年度の同時改定を見据え、地域包括ケアシステムの構築に向けて、在宅医療・介護の基盤整備の状況を踏まえつつ、質の高い在宅医療の普及や情報通信技術(ICT)の活用による医療連携や医薬連携等について、引き続き検討を行う必要がある。
○ 患者にとって安心・納得できる医療を提供していくためには、受けた医療や診療報酬制度を分かりやすくしていくための取組を継続していくことが求められる。また、それと同時に、国民全体の医療制度に対する理解を促していくことも重要であり、普及啓発も含め、国民に対する丁寧な説明が求められる。
○ 国民が主体的にサービスを選択し、活動することが可能となるような環境整備を進めるため、予防・健康づくりやセルフケア・セルフメディケーションの推進、保険外併用療養の活用等について広く議論が求められる。