公開日:2026年11月06日

2028年度から医師の定数削減へ・・・予想より医師過剰時代は早くくる?【第16回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会資料より】

こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

今週11月4日に、厚生労働省の「第16回 医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」が開かれました。以下の資料が結構びっくりでしたので是非是非皆さんには一読してもらいたいと思いますよ。↓

資料1-1「恒久定員内への地域枠の設置について」

資料2「医師の確保・偏在対策における医学部臨時定員の方針について」

正直な第一印象は、「あ、想定してたよりも早いだン回で減らす方向で動き出したんだな・・・」というものです。しかも、ずっと早くです。

まずは資料のざっくりとした内容を

■ 骨太の方針2026で「2028年度以降の医学部定員の削減」が明記されました

2026年7月21日に閣議決定された骨太の方針2026で、「地域の実情を考慮した2028年度以降の医学部定員の削減に取り組む」と書かれました。2025年の骨太では「適正化」という言い方でしたが、明確に変化し今回は「削減」です。

2027年度の医学部総定員は、2025年度の9,393人より減らす方向がすでに決まっています。2026年度は9,376人です。そして今回の資料では、2028年度の臨時定員について、さらに踏み込んだ案が出ています。

■ これまでの「医師多数県だけ削る」から「少数県・中程度県も対象」へ!!

ここが今回いちばん大きなポイントだと今井は思います。

これまで臨時定員の削減対象は、主に医師多数県でした。今回の案では「医師多数県等の一律の区分によらず」削減を進める方向性が示されています。つまり、医師少数県や中程度県も、原則として削減の対象になります。

ただし、少数県・中程度県のうち、次の要素を「複数」満たす県は「医師の確保に係るニーズが特に高い県」として削減対象外とする案です。

①医師偏在指標が低い
②75歳以上の高齢医師の割合が高い
③恒久定員内地域枠をしっかり設置している
④へき地など、医療機関へのアクセスが困難な二次医療圏が一定数ある

さらに、削減対象外になる県であっても、恒久定員100名あたり4名以上の恒久定員内地域枠を設置することが求められます(原則2028年度から、やむを得ない場合は2029年度を目途)。また、配慮の基準となる恒久定員内地域枠の水準は、現行の「100名あたり6名以上」から「8名以上」へ引き上げる案になっています。

要するに、「臨時定員に頼るのはもう終わりにして、地域枠は自分の恒久定員の中でつくってくださいね」というメッセージです。(別問題ですが、今後は医師のキャリアの2極化「自由診療も含めると3極化でしょうか」が進むでしょうね。)

■ 背景にある数字がなかなかシビア・・・

資料に載っている数字をいくつか拾ってみます。

医師数は2024年末で347,772人で、人口10万対は280.9人です。1982年が167,952人ですから、約40年で2倍以上になりました。

医学部定員に占める地域枠等の割合は、2007年度の2.3%から2026年度には20.2%(1,867人)まで増えています。

一方で、18歳人口はこれから一気に減ります。文部科学省の推計では、2040年の大学入学者数は約45.5万人で、いまの大学定員のままだと定員充足率は72%程度になるそうです。北海道でも、2040年の大学進学者数は2021年比で3割以上減る見込みになっています。

医学部だけ定員を維持すれば、相対的に医学部の「狭き門」がどんどん広がることになります(それはそれで、医学教育の質の面で別の問題が出てきそうですね・・・)。

■ 医師は「増えている」のに「偏っている」

卒後3~5年目の医師を見ると、医師多数県で働く医師の約3割は、医師少数県や中程度県の出身者、あるいはそこの大学の卒業生です。つまり、地方の大学で育った若手医師が、都市部へ流れているということです。

さらに、地域枠以外で入学した他県出身の学生が、卒業大学のある県で臨床研修後も働く割合は、全国でも4割弱程度です。青森、秋田、富山、福井、山梨、島根、徳島、高知、宮崎などでは2割以下という県もあります。地域枠の学生は9割近くが残るのとは対照的です。

「医師の総数は足りているのに、地方には来ない」・・・この構図を変えないまま定員だけ減らすと、偏在はかえって悪化するのではないか??という意見が、検討会でも自治体からも出ています。これはまったくその通りだと今井も思います。

■ では北海道はどうなのか??

ここは札幌の医師としてどうしても気になるところです(^^♪

北海道の医師偏在指標は243.6で、全国の下位1/3の閾値が243.2です。つまり北海道は、わずか0.4の差で「医師少数県」ではなく「医師中程度県」に入っています(ギリギリすぎませんか??)。

今回の案だと、中程度県も削減対象になり得ます。一方で、へき地尺度(mRIJ)が特に高い二次医療圏の一覧を見ると、北渡島檜山、後志、南空知、中空知、北空知、上川北部、富良野、留萌、宗谷、根室と、北海道から10圏域も入っています。地理的条件の配慮は受けやすい立場だと思います。

ただ、北海道の恒久定員内地域枠は恒久定員312名のうち7名で、100名あたりに換算すると約2.2名です。今回求められる「4名以上」には届いていません。札幌医大、旭川医大、北大の三大学と道がどう協議していくのか、これから注目していきたいと思います。

■ 「医師過剰時代」はまず都市部から来ると今井は思います

タイトルに「医師過剰時代」と書きましたが、正確に言うと、全国一律に医師が余るわけではありません。2028年度に入学する学生が一人前になるのは2040年前後ですから、定員削減の効果が出るのはまだまだまだまだ先です。

それでも今井が「予想より早く来る」と感じる理由は、都市部ではすでに医師が余り始めているからです。改正医療法では「外来医師過多区域」で新規開業する医師に、地域で不足する医療機能を担うよう要請できる仕組みができました。従わなければ勧告・公表、保険医療機関の指定期間の短縮もあり得ます。

さらに検討会では、「AIの進展が医師の需給に想像以上の影響を与えている可能性がある」という意見も出ています。文書作成や画像診断、問診の効率化が進めば、同じ人数でもこなせる仕事量は増えます。そうなると、都市部での「医師余り」はもっと早く表面化のは目に見えています。実際当院でも医師の採用条件は今後厳しくなっていくだろうなということは想定しています。

一方で、資料の最後のほうには在宅医療の需要推計も載っていました。1日あたりの在宅医療の推計患者数は、2020年の約8.0万人から2040年には約10.9万人に増える見込みです。しかも増えるのはほとんどが85歳以上の方です。

つまり、「医師は余る。でも、在宅を担う医師、地方を担う医師、総合的に診られる医師は足りない」・・・これが資料から透けてみえる現実ですね。

■本資料から共有すべき、理解しておきたいこと

〇 「医師であれば食べていける」時代は、都市部から先に終わっていく

〇 選ばれるのは、専門性だけでなく「地域で必要とされる機能」を担える医師と医療機関

〇 在宅医療や総合診療は、これからの医師のキャリアの中で「逃げ場」ではなく「本流」になっていくはず

〇 地域枠の医師が義務年限を終えた後も、その地域に残りたいと思える環境をつくることができなければ一気に都市部に医師が流入→社会問題になる可能性も??

〇 医師の数の議論だけではなく、看護師、ケアマネジャー、介護職との役割分担の議論もセットで進める必要あり

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色々考えさせられる資料ですね。社会保障システムの未来はある程度公的資料を丁寧に読み解くことで予測は可能です(^^♪皆さんの感想はいかがでしょうか?よければ教えてくださいね~

 

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