公開日:2026年11月05日

先を見据えて考えておくべきことは・・・【財務省財政制度審議会資料より】

こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

2026年11月4日、財務省の財政制度等審議会に「社会保障」の資料が出されました。全部で132ページ・・・・医療者なら絶対に確認しておくべき資料だと思いますのでここに共有しますね↓

社会保障

中身は、令和9年度予算編成に向けた財務省の「こうすべき」という主張です。医療だけでなく、介護・子育て・障害福祉・生活保護まで、社会保障全体を一気に見渡す構成になっていますよ。

まず大前提として押さえておきたいのは、これは決定事項ではないということ・・・財務省側の問題提起であって、ここから厚労省や中医協、介護給付費分科会での議論が始まります。

とはいえこのブログを定点観測して読んでいる人は理解していると思いますが、毎年毎年この資料に書かれたことが、数年遅れで報酬改定に「形を変えて」入ってくるのも事実ですよね(気になる人は過去のブログ振り返ってみてください(^^♪)。

 

この資料を読んでの今井の率直な第一印象は、「在宅医療の“伸びてきた部分”に、はっきりと矢が向き始めた」というものでした。特に高齢者住まいへの訪問サービスと訪問看護については、介護のパートで5ページ以上が割かれています。

ということで、今回のブログでは医療者、そして在宅医療機関の経営者が読み取っておくべきことを6つに絞って紹介しますね

 

〇その1:「人を増やして売上を伸ばす」モデルは、もう通用しない

資料の冒頭近くに、ドキッとするグラフがあります。2000年から2021年にかけて、医療・福祉業は就業者数が大きく増えたのに、実質労働生産性は低下しています。しかも主要な欧米諸国では上昇か横ばいで、下がっているのは日本だけ・・・・

さらに財務省は、「診療報酬は物価を上回って伸びてきたのだから、生産性低下の原因を報酬水準に求めるのは合理的ではない」とまで書いています。まぁ今井はそうは思いませんが・・・

保健衛生・社会事業の就業者は、1994年の350万人から2024年には964万人に増えました。同じ期間、日本全体の就業者は230万人しか増えていません。つまり、他産業から人を吸い上げて伸びてきたのが医療・介護だ、という見方です。

経営者として読み取るべきは、「職員配置の柔軟化」「DX/AX」「タスクシフト・シェア」がこれからの評価軸になるということです。

人員配置基準を満たして加算を取る、という発想から、少ない人数で質を保つ仕組みを示す発想へ

介護の章では「体制・人員配置に着目した評価からの脱却」という項目まで立っています。

 

〇その2:高齢者住まいへの「集中提供型」サービスへの包囲網

在宅医療機関にとって、今回いちばん重要なのはここだと今井は思います。

財務省は、地域に点在するお宅を一軒一軒回る「個別提供型」と、高齢者住まいに併設・隣接した事業所が一カ所でまとめて提供する「集中提供型」を分けて分析しています。結論は、同一建物減算があってもなお、集中提供型のほうが収支差率が良いというものです。

居宅介護支援では、集中提供型は利用者一人あたりの労働投入時間が約3割少ないのに、収支差率は高い。訪問介護・通所介護・訪問リハも同じ傾向だと指摘されています。

そして医師・薬剤師に直接関わるのが居宅療養管理指導です。サ高住等での利用割合が、要介護度に関わらず9割前後以上だとして、「画一的なサービス提供の懸念がある」と書かれています。

令和9年度介護報酬改定では、同一建物減算や特定事業所集中減算の強化、あるいはそれらを織り込んだ報酬体系そのものの抑制的な設定が提案されています。施設在宅を多く抱える医療機関は、今のうちに影響額を考慮して経営方針を確認しておくべきですかね。(まぁまっとうに在宅やっている医療機関はあんまり気にしなくていいでしょうが)

 

〇その3:訪問看護への問題提起

訪問看護についても、かなり踏み込んだ記述がありました。

①営利法人の訪問看護事業所は、2008年度の1,211か所から2025年度には10,467か所へ、8.6倍に増えた

②全体に占める営利法人の比率も、15.1%から62%になった

③営利法人の収支差率は、R4決算5.9%からR6決算10.3%へ上昇した

④理学療法士等の職員が過半を占める事業所の収支率は14.1%と、依然として高い

そのうえで、訪問看護が居宅介護支援の特定事業所集中減算の対象外であることから、「同一法人内でのサービス利用が助長されている可能性がある」と指摘しています。

医療保険側では、精神科訪問看護について、指示元医療機関ごとに最大の利用先ステーションの患者割合や、週3日利用の割合などを分析すべきとしています。合理的な理由で説明できない高い集中率や、画一的な頻回訪問があれば追加の適正化策を、という書きぶりです。

精神科訪問看護、訪問リハの今後、集合住宅での減算・・・2026年の診療報酬改定に続き、これらを中心に訪問看護分野でも大きなテコ入れがなされそうな気配はプンプンしていますね。

 

〇その4:診療所は「小規模分散」から「統合・大規模化」へ、外来は「出来高」から「包括」へ

診療所はすでに全国で10万施設を超え、人口減少で外来需要が減るのに、まだ増え続けています。1診療所あたりの職員は各職種1~2名程度の小さな形態が中心です。財務省は、受付・事務・IT・検査の重複投資を問題視し、地域単位での外来機能の統合・大規模化や医療機器の共同利用を求めています。

あわせて、外来医師多数区域での新規参入制限にとどまらず、ドイツやフランスを参考に既存の保険医療機関も含めた需給調整の仕組みを作るべき、とまで書かれています。自由開業制に正面から切り込む内容ですよね。

報酬体系については、慢性疾患のケアを「検査や受診の回数」ではなく「生活の質というアウトカム」で評価し、出来高払いから包括払いへ転換すべきという主張です。リフィル処方や長期処方の推進もセットになっています。

在宅医療は、実は早くから包括的な評価(在医総管・施設総管)で動いてきた分野です。外来もその方向に寄せていくなら、在宅で培った「月単位で患者さんを支える」ノウハウは、外来の再設計にもそのまま活きるはずですし、今井は数年前からそうなるだろうと考えて準備はしているつもりです(^^♪。

 

〇その5:経営情報は「丸裸」に・・電子カルテは2030年が期限か

2026年度の診療報酬改定では、医療法人の経営情報データベース(MCDB)が施設類型ごとの物価・賃上げ対応に使われました。財務省はこれを「モデルケース」と評価したうえで、さらに次のような精緻化を求めています。

①職員の職種別給与・人数の提出を義務化する(令和8年中に結論) ②診療所で割合の大きい「その他の医業費用」の中身を把握する ③個人立など、医療法人以外の経営情報も把握する

電子カルテについては、オンプレミス型からクラウドネイティブ型への移行を求め、支援をするなら期限を2030年と区切るべきとしています。その後は電子カルテや情報共有サービスを使わない医療機関の報酬減算も検討、という書きぶりです。補助金で導入を支援するなら、導入後の加算は二重支援なので廃止すべき、とも書かれています。

つまり、「賃上げしました」「物価が上がって苦しいです」をデータで証明できる法人だけが、きちんと評価される時代になるということです。月次決算や職種別の人件費を、自分たちで外部に適切に説明できる形に整えておく必要があります。

 

〇その6:患者さんの自己負担は、確実に上がる方向に

最後は、患者さん・ご家族に直接響く話です。

①70歳以上の窓口負担を、年齢によらず「原則3割」に着実に引き上げていくべき

②高額療養費の「外来特例」(70歳以上だけの個人単位の上限)を見直すべき

③介護保険の2割負担の範囲を広げるべき

④ケアマネジメントに自己負担を導入すべき

在宅患者さんの多くは、毎月の訪問診療・訪問看護・薬・介護サービスを組み合わせて暮らしています。一つひとつの負担増は小さく見えても、合算すると「サービスを減らそう」という判断につながりかねません。

経済的な理由で必要なケアが削られないよう、MSWやケアマネジャーと早めに情報共有する体制を作っておくことが大切です。負担上限の仕組みを患者さん・ご家族に丁寧に説明できるスタッフを育てておくことも、医療機関の大事な役割になっていきますよね。

 

〇資料から読み取っておくべきことは

6つを並べてみると、共通するキーワードは「画一」と「説明責任」だと思います。

財務省は「効率化」そのものを否定しているわけではありません。むしろ、少ない人数で質の高い医療を、と求めています。問題にしているのは、患者さんの状態に関係なく同じサービスが同じ頻度で入っている「画一的な提供」と、それを外から検証できない「見えなさ」です。

だとすれば、在宅医療機関がやるべきことははっきりしています。

①一人ひとりの患者さんに、なぜこの訪問回数・この職種・この事業所なのかを記録で説明できるようにする

②施設在宅と個人宅の比率、同一法人内の連携割合を、自分たちで把握しておく

③職種別の人件費や経営データを、外に出しても困らない形に整える

④負担増に備えて、患者さん・ご家族への説明と相談の体制を作る

真面目に在宅医療をやっている法人ほど、データで示せば正当に評価されるはず。逆に言えば、示せなければ一緒くたにされます・・・今井が数年前から診療実績を公開しているのも実はその準備の一端なんですが、理解されていた人はいたでしょうか?(^^♪

 

色々考えさせられることがありますね・・・継続してもう少し資料を読み込み自分で理解を深めてみたいと思います。皆さんも是非是非読み込んでみてくださいね。

 

 

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