令和9年度介護報酬改定の議論、在宅医療者が読み、今から準備しておくべきこと【第271回介護給付費分科会資料より】
こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

10月19日(月)、第271回社会保障審議会介護給付費分科会が開かれました。
テーマは訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、居宅介護支援・・・そう、在宅医療・在宅ケアに関わる人間にとっては「ど真ん中」の議論です。
令和9年度介護報酬改定に向けた「改定の方向性」の資料で、論点だけでなく「対応案」まで具体的に書かれています。ここで出た案は、だいたい年末の審議報告、年明けの単位数の諮問へとそのまま流れていきます。
資料は全部で数百ページあるので、今井なりに「在宅医療者として押さえておくべきところ」を絞って読んでみました。長くなりますが、お付き合いください(^^♪
まず一言・・・方向性はかなり明確です。
ざっくり言うと、
〇医療ニーズの高い人、看取り、夜間対応を「看護師が」担っている事業所はもっと評価する
〇リハ職中心の訪問看護ステーションや、高齢者住宅への効率的な大量訪問には厳しくする
という流れです。
これ、在宅医療を真面目にやってきた立場からすると、正直「やっとか」という気持ちもあります。
では、以下中身を少しだけ見ていきましょうか。
訪問看護:看取りをやっているステーションが報われる・・・かも(^^♪
今回、今井が一番「おっ」と思ったのがここです。
訪問看護には「看護体制強化加算」という加算があります。重症者や看取りに対応する体制を評価するもので、要件の一つに算定月の前12月間にターミナルケア加算を算定した利用者が5名以上というものがあります。
ところが、在宅で看取りをしている方ならピンとくると思いますが・・・末期がんの方に限らず認知症や肺炎の方でも、最期は医療保険の訪問看護になること、結構ありますよね。そうなると介護保険のターミナルケア加算にはカウントされない・・・そんな矛盾を経験したステーションの方は結構いたのかなと。
そうなると実際には毎月のように看取りをしているステーションなのに、介護保険の数字上は「看取りをしていない」ように見えてしまう。
実際、調査では看護体制強化加算を算定できない理由のトップが、このターミナルケア加算5人以上の要件で、33.6%でした。
分科会の委員からも最期に医療保険へ切り替わるケースがかなり多く、同じステーションで手厚くターミナルケアをしている場合、切り替えた件数分の介護報酬側の評価を検討すべきという意見が出て、対応案として事業所の実態に応じて看護体制強化加算におけるターミナルケア加算を評価してはどうかと明記されました。
これは大きい変化ですね(^^♪
当法人も年間約200件の在宅看取りに関わっていますが、連携してくれている訪問看護ステーションの看護師さんたちの頑張りが、ようやく制度上も「見える化」されるかもしれません(^^♪
ただし注意点もあります。同じ資料で看護職員割合6割以上の要件に設けられていた経過措置について、猶予している自治体がない実態を踏まえ、終了してはどうかとも書かれています。「看取りはしているけど、リハ職のほうが多い」というステーションは、むしろ要注意です。
夜中に走る看護師さんが、ようやく数字に・・・
もう一つ、地味ですが現場にはそれなりに大事な話です。
今の介護保険のルールでは、緊急時訪問看護加算を届け出ている事業所が時間外に緊急訪問しても、月の初回は早朝・夜間・深夜の加算が算定できず、2回目以降でないと算定できないことになっています。
夜中の2時に電話が鳴って、看護師さんが雪の中を車で駆けつけても、それがその月の最初の緊急訪問なら深夜加算はつかない。医療保険ではつくのに、です。
業界団体の調査では、夜間に緊急訪問をした913事業所のうち570事業所で、初回のため加算が算定できなかった利用者がいたそうです。
これに対して対応案は月初回の訪問時でも早朝・夜間加算及び深夜加算を算定可能としてはどうか。 当たり前のことが、当たり前になる。それだけのことなんですが、夜間オンコールを担う看護師さんの手当の原資になるという意味で人材確保にも直結する改正だと思います。これはいい案ですね(^^♪
医療安全は「やっている」から「文書で示せる」へ!!
訪問看護の医療安全についても動きがあります。
医療保険側では令和8年度改定ですでに安全管理体制の確保や訪問看護記録書等の記録整備が運営基準で義務付けられていて、介護保険でも安全管理体制の確保に係る研修を受講することが望ましい旨を運営基準に加えてはどうかとされています。
全国調査を見ると、「当事者スタッフへのサポート体制や報告しやすい環境」が整っている事業所は50.2%、「安全管理の基本理念を定期的に示している」は44.6%にとどまっています。
訪問看護は、病院と違って看護師が一人で判断する場面が多い仕事です。だからこそ、何かあったときに個人を責めるのではなく、組織として受け止めて仕組みを直す・・・そういう「安全文化」を言葉、システムにしておくことが大事だと今井は思っています。
*研修教材としては、日本訪問看護財団の教材による研修が、令和8年度診療報酬改定で規定された医療安全研修に該当すると疑義解釈で示されています。まだ見ていない管理者の方は、ぜひ一度チェックしてみてください。
D to P with N、いよいよ介護保険でも本格評価へ!!
医師がオンラインで診察して、看護師さんが患者さんの横にいる、いわゆる「D to P with N」。
今は暫定措置で、予定訪問がない場合のオンライン診療補助は次期改定までの間、20分未満の訪問看護費(ステーション314単位)を月1回という扱いになっています。
でも実際には、診療補助そのものは平均9.7分でも、前後の準備やフォローを含めると平均35.9分かかっている。そりゃそうですよね。通信環境を整えて、事前に状態をアセスメントして、診察後に療養指導して・・・。 対応案はD to P with Nによるオンライン診療補助を行った場合の評価を新設してはどうかとの議論になっていますよ。
在宅医の数は限られています。夜間や雪の日の臨時対応、状態確認のための訪問など、全部を医師が直接行くのはもう現実的ではありません。札幌などの雪国の厳冬期を知っている人なら、なおさら頷いてもらえると思います。D to P with N は、これからの在宅医療の「生産性」を左右する仕組みになると今井は見ています。
あわせて、訪問看護ステーションが地域の医療機関等とICTで情報連携した場合の評価を設けてはどうかという案も出ています。医療保険側の同様の加算は特別の関係にない連携機関が5以上などの要件なので、介護保険も似た形になる可能性が高いかなと予想していますよ。
リハ職中心のステーションには、引き続き厳しい風!!
ここはちょっとドキッとするステーション関連の方もいるかもしれませんね。
資料には収支差率のデータが載っていて、看護職員のみの訪問を行う事業所は5.7%、リハ職の訪問もある事業所は11.1%、リハ職が過半の事業所は14.1%でした。 つまり、重症者や看取りや夜間対応を看護師中心でやっているステーションほど儲かっていない、という構図です・・・まあ、現場の感覚どおりですね。
分科会ではリハ職が看護職より多いステーションは本来の訪問看護の姿と乖離しており、報酬改定で誘導すべきという意見も出ています。
この流れはますます強まっていき、不可避だなと個人的には感じています。
ケアマネさん関連:在宅医としても他人事ではありません!!
訪問看護主体で話してきましたが、ケアマネさん関連の資料も、在宅医にとってはかなり関係があります。
一番うれしかったのは、医療介護連携の加算について、こんな課題がはっきり書かれたことです。
①通院時情報連携加算は通院への同席が要件のため、居宅を訪問する在宅医と連携していても算定できない
②緊急時等居宅カンファレンス加算は、診療報酬ではオンライン参加を認めているのに、居宅訪問が要件になっている
③ターミナルケアマネジメント加算は、死亡日と死亡日前14日以内に2日以上訪問できず算定できなかったケースがある
これ、在宅医療をやっている人なら「あるある」ですよね??
訪問診療の場にケアマネさんが同席してくれて、その場で方針を共有する。在宅医療にとっては一番ありがたい連携なのに、それがケアマネさんの報酬には反映されていなかった。看取り期にケアマネさんが電話や調整に奔走してくれても、訪問日数が足りないと加算がつかない。
実際、ターミナルケアマネジメント加算の算定率は事業所ベースで2.56%、緊急時等居宅カンファレンス加算は0.24%しかありません。
この部分は「今後議論予定」なので、まだ対応案は出ていません。でも課題として明記されたこと自体に意味があります。在宅医とケアマネさんが一緒に動いている姿を、ちゃんと報酬で評価される方向に進んでほしいと心から思いますよ。
そのほか、
〇特定事業所加算(Ⅰ)の「要介護3以上が40%以上」の要件を廃止
〇特定事業所加算(A)は廃止し、1年の経過措置
〇管理者に主任ケアマネであることは求めず、5年の実務経験等を有するケアマネジャーとする
〇更新制廃止にあわせて、正当な理由なく研修を受講していない者を配置している場合の減算
といった、事業所運営に直結する案も出ています。居宅介護支援事業所を運営している法人は、自分のところが今どの区分なのか、改めて確認しておいたほうがよさそうです。
まだまだ議論は続くので要注意ですね。
ここまで読んで「意外と追い風議論だけじゃん??」と思った方。今井もそう思いました。でも、実は一番大きな論点が「後回し」になっていますよ~(^^♪
訪問看護でも居宅療養管理指導でも、住まいの形態に合わせた報酬の在り方については高齢者住まいに対するサービス提供の在り方に関する分科会で説明・議論を実施予定とされています。
今回の居宅療養管理指導の資料では、委員からサ高住や住宅型有料老人ホームについて、特に要支援・要介護1の者を対象に、減算や包括報酬等の新たな報酬体系も検討すべきという意見が出ています。一方で、入居者の約半数が要介護3以上であることを踏まえると、医師の実施割合54.4%は当然という反論もありました。
高齢者住宅への訪問診療や訪問看護をどう評価するか。ここは在宅医療全体の経営に関わる大きな論点で、正直、ここ次第で「追い風」が一気に「向かい風」に変わる可能性もあります。2026年の診療報酬改定で医療の訪問看護も大きく介入がありましたよね。避けては通れない議論かなと思いますが・・・・在宅医療の経営に関わる方は、次の「高齢者住まい」の回の資料は絶対に見逃さない方がいいでしょうね。
在宅医療者として、今やっておくべきことは・・・
最後に、今井が自分の法人で「今のうちにやっておこう」とぱっと思いついたことを適当に書き綴ります(^^♪
①連携ステーションの看取り件数を、医療保険と介護保険に分けて数えておく
②夜間・深夜の緊急訪問が「その月の何回目か」まで記録で追えるようにしておく
③医療安全の指針と研修計画を、法人としてきちんと文書化
④D to P with N をどの場面で使うか、医師と看護師で具体的に話し合う
⑤施設・高齢者住宅に住む患者さんの数と要介護度を、ざっと出して把握しておく
改定は「決まってから慌てる」より「決まる前に準備しておく」ほうが、圧倒的に楽です。そしてなにより、準備の過程で自分たちの在宅医療の姿がよく見えてきますよね(^^♪
ということで資料を読んで気になったことを訪問看護主体で色々書いてみましたよ。皆さんのご意見はいかがでしょうか?よければ教えてくださいね!!
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