公開日:2026年10月08日

The Truth Depends on Where You Stand ~在宅医療の現場から~

こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

先日もそうでしたが、在宅医療をやっているとこんな場面に出くわすこと、ままあります。

①医師が「これでいこう」と決めたことに、訪問看護師さんが「いや、それはちょっと・・・」と感じている。

②逆に、看護師さんが「こうしたほうがいい」と思っていることに、医師がいまいちピンときていない。

 

皆さんは経験ありませんか?

これってどちらかが間違っているのでしょうか??・・・今井の答えは、「どちらも正しいことが多い」です。え?答えになっていないって??そんなこと言わないでください(^^♪

今日はそんな、立場によって形を変える「正しさ」のことについてちょっとだけ話をしたいと思います。

 

在宅医の「正しさ」とは?それは”線”からできている

在宅医が患者さんに会うのは、月に2回、多くても週に1回程度です。1回の訪問は10〜30分、長くて1時間。その限られた時間で病状の全体像をつかみ、数週間~数か月先を見越して方針を決めます。

だから医師の視点は、どうしても「病気の経過」という長い線になります。

・この方の心不全は、この1年でじわじわ進んでいる

・今の苦しさは急変ではなく、予想された経過の一部である

・だから入院ではなく、自宅で症状を和らげる方針が妥当だ

これは医学的には、筋の通った「正しさ」です。

ただし、医師は生活の「その場」にいない時間のほうが圧倒的に長いです。(月の9割以上、もっといったら98%くらいは患者さんの家で何が起きているか、実は知らないですよね)

なので在宅医療や在宅緩和ケアの現場では、医学的に正しい判断がそのまま家の中でうまく回るとは限らない、これは実体験としてtrueだと言えると思っていますよ。

訪問看護師さんの「正しさ」は、面で構成されている

一方訪問看護師さんは週に何回も、場合によっては毎日その家に入ります。滞在時間も医師より長く、ケアをしながら、身体に触れながら患者さんやご家族と話しながら過ごします。

看護師さんが見ているのは、病気の線というより、生活の面です。

・奥さんが夜ほとんど眠れていない

・ヘルパーさんが帰った後の夕方が、一番不安定になる

・本人は「家にいたい」と言うけれど、本当は娘さんに遠慮している気がする

そして何より、急変時の電話を最初に受けるのも深夜に駆けつけるのも、多くの場合は看護師さんが最初です。

「先生の方針はわかる。でも、この家族で今夜それを回せるのかなぁ??」

この問いは、現場の身近にいる訪問看護師さんにしか立てられない、まっとうな「正しさ」です(^^♪

 

どちらも正しい。だから、ぶつかる!!

ここが一番難しいところです。

間違っている人がいるなら話は簡単ですよね。正せばいいだけなんで・・・でも在宅の現場で起きる摩擦の多くは、正しさと正しさのぶつかり合いです。

例えば↓

医師「苦痛が強いので、鎮静も視野に入れて薬を調整しましょう」

看護師「でも、ご家族はまだ心の準備ができていません。もう少し時間がほしいです」

どちらも患者さんのことを考えています。

厄介なのは、それぞれの正しさがそれぞれの立場からは「当たり前」に見えてしまうこと。医師からは看護師さんが慎重すぎるように見え、看護師さんからは医師が現場を、患者さんを、家族を、背景を知らないように見える。

 

正しさを「並べる」ために、今井が大事にしていること!!

どちらかの正しさでもう一方を塗りつぶさないこと。今井はこれが一番大事だと思っていますよ。

具体的には、こんなことを意識しています。

①「なぜそう思うのか」を先に聞く

看護師さんの違和感には、たいてい医師が見ていない事実が含まれています。結論より先に、根拠を聞くようにしています。

②医師の「線」を言葉にして渡す

逆に、医師がなぜその方針なのか、数か月先をどう読んでいるのかを看護師さんに共有します。線が見えると、面での判断も変わってきます。

③決めるのは、患者さんとご家族

医師の正しさも看護の正しさも、最終的には本人の人生の下にあるものです。どちらが勝つかではなく本人にとって何がいいかを基準に再度検討します。

 

正しさは一つじゃない。でも、向いている方向はきっと同じで”患者さんと家族のために”ですよね。

 

皆さんの現場ではいかがでしょうか?

医師として、看護師として、ケアマネとして、あるいはご家族として。「自分の正しさ」と「相手の正しさ」がぶつかった経験、きっと皆さんにもあると思います。

そんな時、どうやって折り合いをつけていますか??

よければ教えてくださいね~(^^♪

 

さて今日は午前は訪問でした。午後からはカンファです。コツコツと頑張っていきたいと思います。

 

 

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