現場を見る限り、悪質な事業所を排除できなければ業界の先は・・・【訪問系障害福祉サービス、公費負担が財政を圧迫 市町村から不満】
こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

週末の医療系ニュースザッピングにて気になる記事を見かけましたのでシェアします。9月24日の朝日新聞さんの記事です。
訪問系障害福祉サービス、公費負担が財政を圧迫 市町村から不満
「埼玉県内で提供される訪問系障害福祉サービスの公費負担のうち、国費と県費を除き県内市町村で基準を超えて費用を負担する額が、2024年度に25億円超に上ったことが行田市などの調べで分かった。自治体からは財政を圧迫するとの不満が出ており、県市長会は国に必要な財政措置を講じるよう是正を申し入れた。 県内市町村の負担状況を網羅したデータはこれまで存在せず、行田市が今春、各市町村と行った調査で実態が初めて明らかになった。
訪問系障害福祉サービスは、重度障害者らの入浴や排泄(はいせつ)などの身体介護、食事や洗濯などの家事援助を、事業所から派遣されたヘルパーが障害者の居宅で行う。特に重度障害者の場合、24時間対応やヘルパーの人数増などでサービスを手厚く提供する必要があり、費用もふくらむという。 埼玉県内の3割超の市町村が「超過」・・・」
そもそも介護士さんが来てくれるサービスって、いくつあるの??
現在、在宅で介護士さんが家に来てくれるサービスは、簡単に言うと大きく3つに分かれています。
①介護保険による訪問介護(主に65歳以上の高齢者)
②障害者総合支援法による居宅介護・重度訪問介護(身体介護や家事援助。今回の記事の中心はここ)
③同じく障害者総合支援法による自立生活援助(施設やグループホーム、病院から一人暮らしに移った方などのお宅を定期的に訪ねて、生活の困りごとを確認・助言する仕組み)
同じ「おうちに人が来る」でも、財布もルールも、チェックする人もバラバラなんですね。利用者さんやご家族からすると「で、結局うちはどれを使えばいいの??」という世界だと思います(医療者の今井でも、正直ときどき迷います・・・)
手厚さが必要な人は、確実にいる!
まずは最初に書いておきますが、
今井たちが在宅で関わっているALSの方、高位頸髄損傷の方、医療的ケアが必要なお子さんとご家族・・・こうした方々にとって、重度訪問介護の長時間・24時間の支えは文字通り「命綱」です。これがあるから、病院や施設ではなく、住み慣れた家で家族と一緒に暮らし続けられる方がたくさんいます(^^♪
自立生活援助も同じです。長く入院していた方が地域で一人暮らしを始めるとき、「週に一度、誰かが様子を見に来てくれる」という安心感は、再入院を防ぐ大きな力になります。
そして重度の方が「たまたま」小さな町に住んでいると、その町の財政がいきなり苦しくなる・・・これは本人の責任でも町の責任でもなく、制度設計の問題だと今井は思います。国の負担基準の見直しは、正直まったなしだと感じています。
同時に、制度を食い物にする事業所は駆除しなければ!!
一方で、在宅の現場にいるとどうしても見えてしまうものもあります。
例えばですが、いわゆる「メンクリ × 意味のない訪問体制」の組み合わせです。
・クリニックと訪問系の事業所が実質的に一体で、利用がほぼ自動的に組まれている
・ご本人のニーズとは無関係に、「枠」ありきで訪問回数が決まっている
・自立生活援助や精神科訪問看護などを重ねて、同じ方のお宅に入れ替わり立ち替わり人が来る
・玄関先で数分話して終わり、でも記録上はしっかり算定されている(されている、と聞きます)
障害福祉サービスは所得に応じた負担上限があり、自己負担がほとんどかからない方も多いので、ご本人から「こんなに来なくていいです」という声が上がりにくい構造があります。本来は利用者さんを守るための仕組みが、事業者側の「売上装置」になってしまっている・・・これでは本末転倒です。
障害福祉の分野では、グループホーム大手の運営会社が食材費を過大に徴収したりして行政処分を受けた事件もありましたよね?
ごく一部の悪質な事業者のせいで、真面目にやっている事業所まで「障害福祉って結局は儲け主義なんでしょ?」と見られてしまう。そして何より、本当に手厚い支援が必要な人への予算を削る口実になってしまう・・・
限られた財源の中で「必要な人に、必要な分だけ、ちゃんと届ける」ためには、意味のない訪問を垂れ流す事業所をきちんと見つけて、退場してもらう仕組みが絶対に必要だと思います。皆さんもそう思いませんか??(まっとうにやっている事業所さんたくさん知っているので彼らが本当に可哀想ですよね・・・)
介護保険と障害福祉、そろそろ「整合性」の話をしませんか??
もうひとつの論点が、介護保険と障害福祉の関係です。
いわゆる「65歳問題」をご存じでしょうか。障害福祉サービスを使っていた方が65歳になると、原則として介護保険が優先されます。すると
・使えるサービスの量が減ってしまう
・今まで無かった自己負担が発生する
・長年通ってくれたヘルパーさん(事業所)が変わってしまう
ということが起こり得ます。ご本人の状態は、誕生日の前日と翌日で何も変わっていないのに・・・です。
逆に言えば、似たような身体介護や生活援助なのに、年齢と制度の入り口が違うだけで、単価も上限もチェック体制もバラバラ。これでは財政的にも、現場の感覚的にも、制度として長続きしないのでは??と今井は感じています。
共生型サービスの創設など、少しずつ歩み寄りの工夫はされてきましたが、まだまだシステムとして「縦割りの継ぎはぎ」の域を出ていないというのが現場の1医師の実感です。
今回の記事から学ぶべき、考えるべきことは
〇手厚い支援が必要な方は確実にいて、その支えは「命綱」である
〇その命綱を守るためにこそ、不適切な事業所の「駆除」が必要である
〇国の負担基準と、重度の方が暮らす市町村の実態がズレている
〇介護保険と障害福祉の整合性が取れないままでは、どちらの制度も持続しない
〇そして医療者側も「訪問の必要性を判断する責任」を自覚する必要がある
最後の点は自戒も込めて、です(^^♪
訪問看護の指示書を書くのも、サービス利用の意見書を書くのも医師です。「頼まれたから書く」ではなく、「この方に、この頻度で、この内容が本当に必要か」を毎回考える(考え続ける)ことが、制度を守ることにつながるのでしょうね。
皆さんのご意見はいかがでしょうか??よければ一緒に考えてみてくださいね。
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