公開日:2026年09月28日

市立札幌病院、令和7年度は赤字縮小・・・しかし必要な構造改革はできるのか??【令和7年度 札幌市病院事業会計決算書より】

こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

先週、令和7年度の札幌市病院事業会計決算書が議会に提出されました。札幌民として、また1医療者として市立札幌病院の経営についてはこのブログでも定点観測を続けてきましたが、今回も答え合わせをしていきたいと思います。

これまでの流れを振り返りたい方はこちら↓

26年2月

【公立病院も倒産する時代】市立札幌病院は恒常的な赤字体質をどうしていくべきなのでしょうか?

25年11月

市立札幌病院、2024年は予測通りの赤字額・・・今後はどうなるべきか??【令和6年度札幌市病院事業会計決算書より】

25年3月

市立札幌病院の赤字をどう考える?【市立札幌病院 25年度14億円赤字見通し 経営改善、見えぬ抜本策】

そして今回公開された資料はこちらです↓

令和7年度 札幌市病院事業会計決算

まず最初に言うことは「今井の予測はちょっと外れました~」です(^^♪

25年11月のブログ(上から二つ目のやつです)で「令和7年度は例年通りの赤字&もしかしたら上振れするかも」と書いていたんですが、実際の純損失は約13.7億円でした。前年度の20.5億円から約6.9億円の好転です。

2025年春の道新の記事では「14億円の赤字見通し」とあって、今井は「いやいやそんな甘くないでしょう」と思っていたんですが、ほぼ当初予算通りの着地となりました。今井の読みが悲観的すぎましたね(素直に反省です・・・)

さて、なぜ改善したのかを資料から端的にまとめると以下になります。

〇入院患者が年間6,544人増え(+3.5%)、病床利用率は77.3%から80.0%まで回復しました。医業収益は約10.8億円増えています。

〇医業外収益も約4.9億円増えています(+22.8%)。中身を見ると、国の「病院物価支援事業給付金」や賃上げ支援の補助金、道の生産性向上支援の給付金などが合わせて約3億円入っています。

〇費用も約8.9億円増えていますが、収益の伸びがそれを上回りました。

入院をしっかり増やしたのは現場の皆さんの頑張りの成果だと思います。ここは素直に素晴らしいと評価すべきですよね。

数字の中身を見ると手放しでは喜べ・・・ない?

今井が気になった点を羅列すると

〇一般会計から30億円の「長期借入金」をしてやっと資金がまわっていることです。年度末の資金は約5.5億円の残となっていますが、決算書自身が「長期借入金を含めない場合は24.5億円の資金不足」と書いています。前年度末の資金不足は12.6億円だったので、実質的な資金不足は倍近くに膨らんでいることになります。

→赤字額が減っているのに、お財布の中身はむしろ悪化しているんですよね、赤字が減ったといっても、赤字であることに変わりはありません。毎月の赤字が減っても、赤字が続く限り貯金は減っていきますよね??しかも借金の返済や設備投資は赤字額には出てこないのに、お財布からは確実にお金が出ていきます・・・

〇一時借入金が年度中の最高で78億円に達していることです。限度額は80億円なので、ほぼ上限いっぱいです。しかも借入先は一般会計だけでなく、水道事業会計や高速電車事業会計(つまり地下鉄の会計)からも借りています。市の他の事業のお財布から融通してもらってなんとかしのいでいる、というのが実態。

〇本業でお金を生めていないことです。キャッシュ・フロー計算書を見ると、業務活動によるキャッシュ・フローはマイナス1.4億円でした。民間の病院であれば、本業でキャッシュが出ていく状態が続くのは相当危険なシグナルです。(しかも未払金も結構な金額が・・・)

〇累積の欠損金が約84.4億円に膨らんでいます。前年度の70億円超からさらに増え、医業収益の34.8%に相当します。

〇一般会計からの繰入を除けば、依然として大幅なマイナスであることです。収益的収支への繰入(負担金・補助金)だけで約15.8億円、企業債の償還などの資本的収支への繰入が約7.7億円あります。前回と同じ考え方でいえば、市民の税金による支援がなければ単年で37億円前後のマイナスということになります(前年度の45億円からは改善していますが・・・)。

〇改善の中身に一過性のものが含まれています。物価高騰や賃上げに対する国・道の補助金は、毎年必ずもらえるものではありません。これがなくなったとき、本当に13億円台の赤字で収まるの??

〇医業損失(本業の赤字)が約37.7億円あり、給与費だけで医業収益の5割を超えています・・・

前回のブログで「具体的にどの事業を廃止・縮小したのか、痛みを伴う改革の跡が見えない」と書きましたが、今回の決算書を読んでもその印象は変わりませんでした。

改善の主な要因は患者数の回復と補助金で、構造そのものにメスが入った結果ではないと今井は考えていますよ(あくまで決算書から読み取れる範囲の話ですが・・・)

ちなみに外来患者は年間5,131人減っています。これは地域医療支援病院として紹介・逆紹介を進めた結果なのであれば、むしろ役割分担として正しい方向なのかもしれません。そうであれば、急性期の入院にさらに特化し、そのぶん地域のかかりつけ医や在宅医療との連携をもっと太くしていく・・・という道筋も見えてくるはずです。

行政は、札幌市はどうしていこうと考えているのでしょうか??

「赤字が減った」で思考停止しないこと!!

一番怖いのは、今回の数字をみて「改善しているからこのままで大丈夫」となってしまうことではないでしょうか?

30億円の借入はいずれ返さなければいけないお金ですし、2026年度は診療報酬改定の影響も加わります。市立室蘭病院のようなハードランディングを避けるためには、数字が少し上向いた「今」こそ、担う役割の整理や構造改革に手をつける絶好のタイミングなのではないでしょうか??

小手先の病床削減だけではもう無理なんじゃないでしょうかね?

いつもの繰り返しになりますが、市立病院の現場のスタッフの皆さんを非難する意図はまったくありません。在宅患者さんの急変時にいつも快く受けてくださって、本当に感謝しています(^^♪ だからこそ、10年後も札幌市民にとって頼れる病院であり続けてほしい、そのためには何をすべきだろうかと心から思っていますし、市井から一緒に考えていますよ(^^♪

皆さんは今回の決算、どうご覧になりましたか??「改善した」と見るか、「借金で延命している」と見るか・・・よければ教えてくださいね!

 

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