公開日:2026年09月10日

AIを使うほど、医師や看護師は賢くなくなる?——脱スキル化という医療現場のリスク。

こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

先日こんなコラムが目に留まりました。8月31日パーソル総合研究所さん↓

「AIを使うほど、賢くなくなる」——“認知負債”という組織リスク

ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が世界のC-suiteシニアエグゼクティブ70名を対象に行った調査で、半数がすでに自社内で「脱スキル化(de-skilling)」の兆候を観測していると回答。さらに6割以上が「今後3〜5年以内にこれが組織にとって重大な脅威になる」と答えたというものです。

「AIを使うほど、賢くなくなる」

——このフレーズ、医療現場においても他人事ではないと今井は感じていますよ。

脱スキル化とは?

「AIに日常的に頼ることで、判断力・課題を見極める力・創造的に考える力——いわば『考えるための筋力』が徐々に衰えていく現象」

これが脱スキル化の正体です。

個人単位では気づきにくい。でも組織全体で同時多発的に進行すると、経営が最も頼りにしたいはずの「判断力」「問題を見極める力」が静かに、しかし確実に失われていく。

BCGは「経営にとって最も重要な能力ほど、最もリスクにさらされている」と指摘しています。

医療現場で起きうること

さてここからが本日の本題です。

今井がこのコラムを読んで真っ先に頭に浮かんだのは、やっぱり医療者なので医療現場のことでした。

AIが診断を補助する。AIが治療方針の候補を出す。AIが記録を自動生成する。AIが検査結果を読み取る——

どれも医療現場でこれから本格的になる「便利になる」ことです。医師の負担が減る。業務が速くなる。ミスが減る。

でも同時に、こういうことが起きていないか?

〇 「AIがこう言っているから」という判断が増えて、自分で考えるプロセスが減っていないか

〇 AIのアウトプットを「なぜそうなるのか」を理解しないまま使い続けていないか

〇 若手医師・若手看護師が「考える機会」を得る前にAIに頼るようになっていないか

医師や看護師が「AIの出力を確認するだけ」の存在になったとき、本当に患者さんを守れるのか——これが今井の一番の懸念です・・・

在宅医療で特に怖いことはこれかな

在宅医療の現場では、病院のような充実した検査機器がありません。

CTもMRIも、すぐには撮れない。レントゲンも難しい。採血結果が出るまでに時間がかかることもある。

その代わりに何があるか——そりゃ当然医師・看護師の「目」「耳」「手」「経験」です(^^♪

顔色、呼吸のリズム、皮膚の状態、表情、会話のテンポ——これらを総合的に判断して「今日はいつもと違う」と気づく能力は、何百回・何千回という臨床経験の積み重ねで育まれます。

この「臨床の筋力」が、AIへの依存によって育たなくなったとしたら——在宅医療の現場では即、患者さんへの医療やケアの質に直結するんじゃないのかなぁと・・・

「便利になった」のに「弱くなる」という矛盾

コラムの中でこんな言葉があります。

「使えば使うほど便利になる一方で、使えば使うほど鍛えられなくなる——この二律背反が脱スキル化の正体」

これを読んで、改めてはっとしませんか?

在宅医療でも同じことが起きうる。AIで記録が楽になった分、「この記録を書きながら考える」というプロセスが失われる。AIで調剤情報が整理された分、「薬を一つひとつ確認する」という習慣が薄れる。

便利さの裏側に、静かに失われていくものがある。この視点は理解しておきたいですよね。

では医療現場はどうすべきか

コラムではBCGが3つの対策を推奨しています。

〇 AIの使い方を組織として設計し直す

〇 業務フロー・評価制度を見直す

〇 日常業務の中に「スキルの補充」を組み込む

医療現場に置き換えると——

「AIに任せていい部分」と「人間が必ず担う部分」を明確にする

記録補助はAIでいい。でも「今日の患者さんの状態をどう判断するか」は人間が考える。

若手が「考える機会」を奪わない研修体制を作る

AIが答えを出す前に、自分で考えさせる。ELNEC-Jのような研修が、まさにこの役割を担っています。

「なぜそうなるか」を説明できない判断は危険と認識する

AIの出力を「なんとなく正しそう」で使わない。必ず自分の頭で検証する習慣を持つ。

当法人で今後意識すべきことは・・・

AIは積極的に活用していきます。業務効率化・バックヤード整備・情報収集——これらにAIは不可欠で絶対的に活用すべき!

ただでも同時に、スタッフが「臨床の筋力」を失わないための環境を意識的に作っていきたいと思っていますよ。

研修の充実・多職種でのカンファレンス・訪問件数を重ねることで経験を積む——これらは、脱スキル化への最大の抵抗策になるんじゃないのかなと。皆さんもそう思いませんか??

さて今日の資料を読んで皆さんの感想はいかがでしょうか?よければ教えてくださいね(^^♪

 

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