会話とは、治療【在宅医療の現場から】
こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です
皆さんは在宅医療の本質って何だと思いますか?
先日ある患者さんのお宅を訪問したときのことです。
バイタルを測って、薬の確認をして、身体の状態を診て——医学的には「異常なし」でした。でもその後の他愛無い会話の中で「最近どうですか?」と聞いたんですよね。とそこから
「先生、実は夜眠れなくて・・・」
そこから話が続いて、娘さんの体調(病気)のこと、一人でいる夜の不安のこと、食欲が落ちていること・・・・バイタルには全く現れていなかったことが、どんどん出てきました。
同じような経験された在宅医療者の方、結構いるんじゃないでしょうか?(っていうかほぼほぼ全員経験されていると思います(^^♪)
在宅医療は「情報戦」
病院では検査ができます。CTも、MRIも、採血も、必要なものをすぐに揃えられる。
でも在宅医療の現場には、そういう武器が限られています。
その代わりに何があるか。
全てのベースにあるものはコミュニケーション、会話です。
患者さんが何を感じているか、何が不安か、どう生きたいか、何が辛いか——これをうまく引き出せるかどうかが在宅医療の質を決めると今井は考えていますよ。
「先生に話してよかった」と思ってもらえる会話ができる医師と、そうでない医師では、得られる情報量が全然違う。そしてその情報の差が、医療の質の差になる。
会話が治療になる
もうひとつ大事なことがあります。
それは「会話そのものが、治療にもなりえる」ということ。
「誰かに話を聞いてもらえた」という体験は、それだけで患者さんの不安を和らげる。孤独感を減らす。「また来週先生が来てくれる」という安心感が、その人の一週間を支える。
在宅医療では、医師が訪問するのは大抵月に1回か2回です。その短い時間の中で、薬を調整する・処置をする・検査をする——それだけじゃなく、「この人が今どういう状態にあるか」を丸ごと感じ取ることが大事だと思っています。
それができるのは、会話を通じてでしかないですよね・・・・
「聞く力」が在宅医療の本質
今井が在宅に飛び込んだ新しい医療者に一番伝えたいことのひとつは「話すより聞こうよ!」っていうことです。
医師はどうしても「説明する」「伝える」「指示する」方向に傾きがちです。でも在宅医療では、まず聞くことが先です。
「最近どうですか?」 「夜はよく眠れていますか?」 「何か気になっていることはありますか?」
こういう問いかけから始めて、患者さんが自分のペースで話せる空気を作る。それが診察の入口です。
(今井も人ですから、正直忙しい日は「サクッと診て帰りたい」という気持ちが出てくることもある。でもそういうときほど、一呼吸置いて「ところで最近どうですか?」と聞くようにしています)
家族との会話も治療のうち
在宅医療では、患者さんだけでなく家族との会話も大事です。
「お父さん、最近夜中に起きることが多くて・・・」 「薬を飲み忘れることが増えてきて心配で」 「正直、介護が限界に近くて」
こういう声を拾えるかどうか。家族が「先生に話せてよかった」と思えるかどうか。
在宅医療は患者さんだけでなく、その家族全体を支える医療です。家族が安心していなければ、在宅療養は続かない。だからこそ家族との会話も、治療の一部と考えるべきではないでしょうか?
数値に出ないものを診る
血圧・体温・SpO2——これらは大事な指標です。でもそれだけ見ていても、その人の「今」は見えない。
「なんとなく今日は顔色がいつもと違う」 「笑顔が少ない気がする」 「声のトーンが違う」
こういう感覚は、継続して関わっているからこそ気づけるもの。そして気づいた後に「最近どうですか?」と声をかけることで、初めて言葉になって出てくる。
会話が、数値には出ない変化を教えてくれる。バイタルサイン至上主義にはならない・・・在宅医療は「会話の医療」だと今井は思っています。
まぁ当然ですが薬も処置ももちろん大事です。でもその根っこにあるのは、患者さんやご家族との言葉のやりとりです。「また来てよかった」と思ってもらえる訪問を、コツコツ積み重ねていけたらなと考えていますよ。
さて今日は水曜日、折り返しの日です。まだまだ体調管理には気を抜けない日が続きますが気をつけて頑張っていきましょう。今日が皆さんにとって素敵な1日となりますように!!
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