医師過剰がきたときに国がとるであろう政策を理解しておくことは重要ですね~医師過剰時代の偏在対策~
こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医@今井です。
医師の需要と供給が均衡する時代に関しては7,8年先の2030年代前半と言われています。昨今の人口減少具合などをみるともう少し先になってもおかしくないのかなと個人的には考えていますが、基本的にはベーシックに考えるとそれ以降の年代では医師過剰が社会的に問題となると思われます。
医療者、特に医師としては医師過剰時代に国がどう考えどのような政策をとる予定なのか、きちんと理解しておくことは死活的に重要です。だって準備していないとどんどん劣悪な状況に自分自身を追い込むことになるでしょうから・・
ということで現在議論されている内容について資料見つけましたので提供します。興味ある方は是非一読してみてください。総説みたいな資料です。
大和総研さんより
医師過剰時代の偏在対策
~医師養成課程にとどまらない偏在対策が必要~
PDFはこちらです。
10分時間あれば読めるので興味ある方は是非一読してください。以下今井が特に気になった部分、これまでの偏在対策と今後必要な対策の部分のみ抜きだします。(特に気になった部分は赤文字で)
これまでの偏在対策と今後必要な対策
医師数全体のコントロールと同様に、地域偏在も診療科偏在も、対策の中心はさまざまな段階における医師養成課程に置かれてきた。まず、学部教育の段階では、前述の通り、特定の地域や診療科で診療を行うことを条件とした地域枠を大学が設け、当該都道府県内で医師として一定の年限、従事することにより貸与する奨学金の返済を免除する仕組みがある(一部例外あり) 7 。
次に、臨床研修の段階では、都道府県別に臨床研修医の採用上限数を設定することで、研修医が大都市に集中してしまうことを抑制している。さらに、専門医研修の段階でも、都道府県別・診療科別に採用上限数が設定(シーリング)されており 8 、医師数が必要数に達した診療科では、採用数の一部をシーリング対象外の都道府県や、医師不足が顕著な都道府県において 1 年 6 か月以上の研修を行う研修プログラムの採用枠に振り向けている。
ただ、これらの取り組みには一定の効果が認められるものの、地域・診療科間の偏在の是正に十分な効果を上げているというわけではない。地域枠入学制度に対しては批判を含めてさまざまな意見があるが、地域枠の入学者は地域枠以外と比べて卒業後も当該都道府県に定着する割合が高く、臨床研修修了後に卒業大学の医局に入局する割合が高いことは事実である 9 。また、臨床研修医や専攻医(臨床研修を修了し、専門医取得を目指す医師)の採用実績が、医師の不足する都道府県や診療科で伸びたところもある。だが、例えば、シーリング対象である東京都に近い神奈川県や千葉県で専攻医の採用が増え、医師少数県が多い東北地方であまり増えていない
など 10 、必ずしも本来期待されていた偏在是正になっていないケースも散見される。
この点、厚生労働省に設置された医師需給分科会では、医師養成課程を通じた偏在対策が引き続き重要としつつ、他の対策も同時に検討することが必要だとしている。具体的には、医師少数区域等に一定期間(6 か月以上)勤務した医師を厚生労働大臣が認定する制度(医師少数区域経験認定医師制度)における、認定医師が地域医療支援病院の管理者になれるというインセンティブについて、管理者になれる対象を地域医療支援病院以外にも拡大することなどが提言されている 11 。また、総合的な診療能力を有する医師(総合診療専門医)の養成を推し進めるとともに、すでに特定の領域の専門性を有する医師が総合的な診療能力を身につけることを促すことも重要とした。このように、医師偏在の問題を解消するためには、従来の医師養成課程のみの対策にとどまらず、養成後の医師も含む対策を講じることが今後は必要だろう。
一体的に進めることが求められる医師養成数の見直しと偏在対策
少子高齢化と人口減少が進展する中、医師の数が増加し続けており、全国ベースで見れば、医師過剰の状態が早晩訪れることになる。需要を上回って医師が増え続ければ、医師の質の低下だけでなく、医療費の増加も懸念される。人口当たりの医師数と人口一人当たりの年齢調整後医療費の関係を都道府県別に見ると明確な正の相関があり、国民負担を増やす医療費の増嵩には供給側の要因がかなり働いているとみられる(図表 6)。国民医療費は、2019 年度までの 10 年間で、雇用者報酬等の伸び 12 を上回る年率 2.1%のペースで上昇しており 13 、保険料の負担増加の要因になっている。医療保険制度の持続可能性を確保するためにも、医師数の適正化に関する議論を加速させるべきだ。
ただし、誰もが必要な医療に適切にアクセスできる医療提供体制を実現するには、同時に医師偏在を是正することも不可欠である。「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会第 5次中間とりまとめ」(2022 年 2 月 7 日)では、今後の大学医学部定員について、地域の実情に応じて地域枠自体は設置・増員を進めていく必要があるとしつつ、その際は、自治体や大学の状況や考えを十分に踏まえながら、上乗せしている臨時定員を含む地域枠を、恒久定員内(各大学が元々持つ定員)で措置することが望ましいとした(イメージは図表 7)。
たしかに、元々の恒久定員が少ない大学では、その中で地域枠を増やすことが難しいなど課題はある。だが、将来的な医師の過剰を防ぎながら、地域における医師の確保を図るためには、全体の養成数を抑制しつつ、医師不足地域に限って、当該地域の医療を担う養成数を増やす対応が必要だろう。2024 年度以降の医師養成数の方針において、この方向性がどこまで反映されるか注目したい。
また、医師確保計画の基礎となる偏在状況の把握においては、環境変化による変動も考慮し、柔軟に捉える必要があるだろう。例えば、「経済財政運営と改革の基本方針 2022」(2022 年 6 月7 日閣議決定)では、医師の働き方を改善するための、医療のタスク・シフティングやオンライン診療の活用を促進することが示された。実際に、医師の業務のうち、医師以外の医療関係職種が実施可能な業務を、医師から他の医療関係職種へタスク・シフト/シェアしたり、オンライン診療で遠隔からでも対応したりするようになれば、地域や診療科ごとに必要な医師数は大幅に変わるだろう。現在、医師不足とされる診療科のある地域でも、医療へのアクセスが大きく改善する可能性がある。
さらに、前出の第 5 次中間とりまとめでは、幅広い地域のニーズに対応できる総合的な診療能力を有する医師(総合診療専門医は、19 ある基本領域の専門医の一つ)を増やす必要性についても触れられている。総合的な診療能力を持つ医師が増えれば、例えば、感染症専門の医師が十分に確保できない場合でも、地域内で新型コロナウイルス感染症の患者の対応が可能になる。
つまり、多くの専門医を診療科ごとに確保する必要がなくなるため、診療科偏在の状況も変わるということだ。
足下では、2024 年度からの医師確保計画に向けて、医師の養成方針等で参考にされる、医師偏在指標や将来時点における必要医師数のさらなる精緻化が検討されている。しかし、医療を取り巻く環境が変われば、医師不足の状況は大きく変わる。まずは、医師養成数を抑制するという全体の方向性を打ち出し、その中で、客観的なデータに基づいた偏在対策を一体的に進めることが求められるのではないか。その際には、養成課程にとどまらない偏在対策を講じることが重要だ。医師少数区域での勤務経験が認定された医師が管理者になれる対象の医療機関を、地域医療支援病院以外にも拡大することや、すでに養成された医師が、総合的な診療能力を身につけることを促すことなどについても、積極的に検討されることが望まれる。
まぁまとめの資料としてこういう資料が既にでており各所で喧々諤々の議論がされている、という事実を医師はきちんと理解しておく必要があります。ともすれば何も周囲の状況を理解していないで医業のみに注力している医師もいますが、やはり社会状況の中での医師の価値や意味については理解しなければいけない時代かなと思いますよ。
医師も20代なのか、30代なのか、40代なのか、各年代によって自分自身のキャリアプランをどう選択するかは大きく変わってくるとは思いますが、自分から一つアドバイスするのであれば「今までの常識が全く通じない時代がやってくる」というのはまず間違いないと考えていますので、きちんと自分自身で周囲の状況を把握し、自分自身の価値を見極め、どうしたらサバイブできるのか、真面目に検討する必要があるでしょう。
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