公開日:2022年05月26日

かかりつけ医の制度化を目指す国vsフリーアクセス保持を求める現場、10年後にはどうなっている??そしてそのために準備することは?

こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医@今井です。

 

5月25日に開催された財政制度等審議会 財政制度等分科会 においてかかりつけ医の制度化が提案されています。資料を提供したいのですが、その前にm3に同分科会に関する記事が公開されていましたので紹介します。それにしても公開された資料の表題が「歴史の転換点における財政運営」ってものすごい迫力のあるタイトルですね。

m3さんより

一部抜粋↓

「財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会は5月25日、「歴史の転換点における財政運営」と題した建議を取りまとめ、榊原定征会長(東レ社友・関西電力取締役会長)が、鈴木俊一財務相の代理の岡本三成財務副大臣に手渡した。医療関係では「かかりつけ医に対して利用希望の者による事前登録・医療情報登録を促す仕組みを導入していくことを、段階を踏んで検討していくべきである」と明記し、かかりつけ医の制度化についてこれまでの建議よりさらに踏み込んだ内容となっている。

かかりつけ医については2020年秋の建議までは「かかりつけ医機能の推進」などの文言だったが、2021年春の建議で初めて「かかりつけ医を速やかに法制上明確化」として制度化を求めた。今回の建議では、「機能を法制上明確化し、当該機能を備えたかかりつけ医を制度化するなどの動きは見られない」と指摘。そうした状況で新型コロナウイルス感染症の拡大を迎えたが、国民の半数にはかかりつけ医がいないほか、発熱外来の公表が不十分なことや相談センターへの電話がつながりにくかったことなどから「我が国の医療保険制度の金看板とされてきたフリーアクセスは、 肝心な時に十分に機能しなかった可能性が高い」と批判した。

こうした事態への対応策として、医療機関をかかりつけ医として認定するなどの制度を設け、かかりつけ医に対して利用希望者による事前登録・医療情報登録を促す仕組みを導入していくよう検討することを求めた。」

 

実際に公開された資料の概要はこちらで本文はこちらです。

概要は以下スライドに↓

本文で気になった部分若干引用してみます。P35~

c)地域医療連携推進法人の活用
加えて、我が国の医療提供体制において、医療資源がただ散在している
ばかりでなく、適切な役割分担、医療機能の分化・連携等がこれまで十分
でなかった背景には、医療機関ごとに経営主体や規模が異なることも挙
げられる。医療機関単位・医療行為単位・入院日数単位の評価が中心の診
療報酬体系のもとで、こうした医療機関同士が他の医療機関との連携を
欠いたまま競争し、医療行為の積上げ、病床の稼働率の向上、在院日数の
長期化に邁進まいしんするといったことでは、医療の質の向上には限界があり、新型コロナのような新興感染症への対応も覚束おぼつかない。
他方、「競争よりも協調」という考え方に立って医療機関相互間の機能
の分担及び業務の連携を推進するために創設された制度として、地域医
療連携推進法人制度が存在し、2017 年(平成 29 年)に導入され、本年
1月1日現在で 30 法人が認定されている。同制度は、参加する医療機関
等に関する統一的な連携推進方針を決定し、横の連携を強化するととも
に、グループの一体的運営によりひと・モノ・カネ・情報を有効に活用す
ることを目指している。実際、多くの地域医療連携推進法人で、医療従事
者の派遣・人事交流、共同研修、医薬品の共同購入、医療機器の共同利用
が行われている。地域医療構想を達成するための選択肢としても、医療費
の適正化の観点から医薬品の共同購入・医療機器の共同利用を推進する
観点からも、地域医療連携推進法人制度の活用は望ましく、その普及を徹
底すべきである。
なお、昨年 12 月の当審議会の建議では、診療報酬体系を医療機関等相
互の面的・ネットワーク的な連携・協働をより重視する「横連携」型の体
系へシフトさせていくことを提言した。地域医療連携推進法人制度の普及に当たっては、そうしたシフトの一環として、患者単位でエピソードを
評価し、患者の転帰に際し、地域医療連携推進法人に参加する複数の医療
機関等に対し、一体として包括報酬を支払うことを含め、真に国民に寄り
添う形での医療提供を「競争よりも協調」の具現を通じて後押しする手法
を幅広く検討すべきである。

イ)外来医療
a)かかりつけ医及びかかりつけ医機能の法制上の明確化
入院医療のみならず外来医療においても機能分化が必要なことは論を俟またない。すなわち、高齢化の進展により、複数の慢性疾患を有する高齢者が増加する中、患者がその状態に合った医療を受けるためにも、予防や生活全般に対する視点も含め、継続的・診療科横断的に患者を診ることが重要になる。その上で、必要に応じて、適切な他の医療機関を紹介するなど、かかりつけ医機能の強化が求められてきた。
かかりつけ医機能について、平成 25 年(2013 年)8月の日本医師会・
四病院団体協議会合同提言で一定の機能が示され、医療関係団体による
かかりつけ医機能を強化するための研修等も行われてきた。しかし一方
で、その機能を法制上明確化し、当該機能を備えたかかりつけ医を制度化
するなどの動きは見られない。代わりに、普及のための方策として、国民
による上手な医療のかかり方に関する広報、好事例の横展開、全国の病院
等を検索できる医療情報サイトの構築などが提唱されてきた。
個別の医療機関が果たしている医療機能に係る制度としては、外来機
能報告制度が導入された。しかし、紹介患者への外来を基本とする「医療
資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関を明確化
する仕組みにとどまっており、前述の日本医師会・四病院団体協議会合同
提言で示されているようなかかりつけ医機能を有する医療機関であるか
否かを明確化するものではない。こうした状況は、薬剤師・薬局について
は、かかりつけ薬剤師・薬局の推進に向けて、法制上の対応が進んでいる
ことと対照的である。

b)コロナ禍での外来医療
このようにかかりつけ医機能の強化の取組が実体面で実効性を上げて
いるとは言えない状況下で、新型コロナの感染拡大を迎えた。個人防護具
の確保等の課題もあったとはいえ、発熱や上気道炎などの症状を持ち新
型コロナ感染の可能性のある患者に対して診察を断る医療機関も当初は
少なくなかったことが指摘されている。
一昨年秋以降の発熱患者への対応としては、インフルエンザ流行も見
据え、発熱患者等の診療・検査を行う体制整備に取り組んだ。インフルエ
ンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業(以下「外来
診療・検査体制確保事業」という。)で体制確保を支援しつつ、「診療・検査医療機関」(いわゆる発熱外来)を地域ごとに指定することとした。発熱等の症状が生じた患者は、まずはかかりつけ医等の地域での身近な医
療機関に電話相談し、相談する医療機関に迷う場合には「受診・相談セン
ター」に電話相談して、発熱外来の案内を受けて受診する仕組みが目指さ
れた。しかし、かかりつけ医等がいないこと、「受診・相談センター」に
連絡がつながりにくいこと、加えて発熱外来を実施する医療機関名の公
表を促すことにしていたにもかかわらず、実際には地域の医師会の合意
を得られない等で公表が進まなかったことから、発熱患者等が円滑に診
療を受けられない状況が生じた。また、外来診療・検査体制確保事業の体
制確保料については、実際にはインフルエンザ患者が激減する一方、発熱
外来の周知も進んでいないという状況のもとで、実際に発熱患者を診察
しなくても補助金の給付を受けられることとなった。この外来診療・検査
体制確保事業は昨年3月までの仕組みであり、昨年9月下旬以降は、地方
公共団体のホームページでの公表を要件として発熱外来について診療報
酬の特例評価を算定する仕組みに切り替えられた。しかしながら、例えば
東京都の場合、本年2月 25 日になってようやく全ての発熱外来が公表さ
れることとなるなど、患者・国民目線に立った公表の取組は依然として十
分とは言えない。〔資料Ⅱ-1-37 参照〕
しかも、その東京都の例を見ると、約4割の医療機関が「かかりつけ患
者のみを対象」としている。アンケート調査では国民の半数弱がかかりつけ医がいないとしている中で、医療機関側では患者の選別を行っている
ことになる。さらに「第6波」における電話・オンライン診療や訪問診療
の実績については地域差が大きく、十分な診療が行われていたか検証の
余地がある。こうした状況を踏まえると世界有数の外来受診回数の多さ
をもって我が国医療保険制度の金看板とされてきたフリーアクセスは、
肝心な時に十分に機能しなかった可能性が高い。

c)かかりつけ医機能が発揮される制度整備45
こうしたコロナ禍の教訓を踏まえると、「いつでも、好きなところで」
という意味で捉えられがちで、受診回数や医療行為の数で評価されがち
であった「量重視」のフリーアクセスを、「必要な時に必要な医療にアク
セスできる」という「質重視」のものに切り替えていく必要がある。この
ような転換が、国民の上手な医療のかかり方に関する広報、好事例の横展
開などといった通り一遍の方策では到底果たし得ないことは、もはや自
明である。制度的対応が不可欠であり、具体的には、地域の医師、医療機
関等と協力している、休日や夜間も患者に対応できる体制を構築してい
る、在宅医療を推進しているといったかかりつけ医機能の要件を法制上
明確化すべきである。その上で、これらの機能を備えた医療機関をかかり
つけ医として認定するなどの制度を設けること、こうしたかかりつけ医
に対して利用希望の者による事前登録・医療情報登録を促す仕組みを導
入していくことを、段階を踏んで検討していくべきである。
このような取組を伴って初めて、必要な機能を備えたかかりつけ医が、
平時において、高齢化時代における地域包括ケア・在宅医療の担い手とな
る一方、こうしたかかりつけ医が「緩やかなゲートキーパー」機能を発揮
することとなる。感染症有事には、かかりつけ医は、患者情報の事前管理
により、PCR 検査受検相談、発熱外来、オンライン診療、宿泊・自宅療養の健康観察を安全で迅速、効果的に包括的に提供し、保健所の負担を軽
減することが期待される。
加えて、このようなかかりつけ医の普及を図るためには、外来医師偏在
指標といった既存の取組を超えて、地域における外来医療の実態が「見え
る化」されている必要がある。レセプトデータ等を基にかかりつけ医機能
の発揮の実態を「見える化」するとともに、入院医療における地域医療構
想のように地域における外来医療のあるべき姿を示し、現状との比較を
通じてそこへの収 斂しゅうれんを促す仕組みを整えていくことが、国民の医療ニーズに即した外来医療提供体制を整備していく上で重要である。

 

 

資料には他にも面白い内容書いてあるので是非一読することをお勧めします。

同資料を読む限りかかりつけ医の制度化は避けられない状況、と自分は判断しています。かかりつけ医の制度化を目指す国VSフリーアクセス保持を希望する医療サイド、最終的にはどうなるか?と言われれば間違いなく国が主導をもって社会保障制度を変えていくでしょう。国破れて山河在り、ではないですが、社会保障制度破れて医療機関在り、なーんて状況には100%ならないですよね。

自分が考えるのは10年後にそうなったときに生き残る医療機関とは?という命題です。プライマリーケアを行い、さらに小児科があって、皮膚科があって年中無休で外来診療もすれば在宅医療もアクティブに行う、そんな診療所がかかりつけ医(かかりつけ診療所)に選ばれるのではないか・・・そう自分は考えて準備していますよ。

 

さて皆さんはこの資料を読んでどう感じるでしょうか?未来の地域社会はどうなっているでしょうか?各自が自分なりに予測して準備してみてくださいね。

 

現在の目標は2024年に病院を開設すること!一緒に病院つくりませんか?→こちらをどうぞ!

成長する医療法人で人事部立ち上げに協力してくれませんか?→こちらをどうぞ!

法人運営をしてみたい事務の方募集しています→こちらをどうぞ!

札幌で在宅医療、在宅緩和ケアなどの訪問看護、地域密着型の外来看護をしたい看護師さん募集しています。診療所、訪問看護ステーション、看護小規模多機能など全事業所で募集中!→こちらをどうぞ!

さっぽろみなみホームケアクリニックでも訪問看護ステーション始めました。南区で訪問看護したい看護師さん募集中→こちらをどうぞ!

当院及びさっぽろみなみホームケアクリニックでは常勤医、非常勤医を募集しています→こちらをどうぞ!

2021年11月からクリニックから徒歩五分の場所でホスピス併設住宅開始しました!!入居希望の方は→こちらのHPこちらをどうぞ!

2021年以前の過去の当院の診療実績→こちらをどうぞ!

おすすめ過去ブログのまとめをみたい方→こちらをどうぞ!