資料提供~コロナ禍と医療イノベーションの国際比較⑮(デジタルヘルスの基盤を確立し次なる変革に挑むカナダと英国)~
こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医@今井です。
キャノングローバル戦略研究所さんから面白い資料が公開されていました。医療政策に興味ある方にとってはとても垂涎の資料かなと思いました。自分はこの資料を読んで地域医療構想、地域包括ケアにおける病院の役割の整理ってかなりハードルが高いなぁと改めて感じましたよ。
キャノングローバル戦略研究所さんから↓
コロナ禍と医療イノベーションの国際比較⑮(デジタルヘルスの基盤を確立し次なる変革に挑むカナダと英国)
PDFはこちらです。
本文中で自分が特に気になった部分を抜きだします。(特に気になった部分は赤文字で)
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Integration(統合)した中核事業体なくして連携は実現しない
政府の全世代型社会保障構築会議が 3 月 29 日に開催されて、岸田政権の「骨太の方針 2022」への反映を視野に入れた論点整理が行われた。医療・介護・福祉サービスについては以下の記述がある。
ICT 活用や地域完結型の医療・介護など上記内容はわが国で 20 年近く改革のテーマとして繰り返し掲げられてきたものであるが、ほとんど実現していない。これに対して米国、英国、カナダ、オーストラリアでは、本連載で紹介したとおり、2022 年時点でその基本的仕組みがほぼ完成している。この格差の最大の理由は、日本に患者情報共有のプラットフォーム機能を果たすセーフティネット医療事業体 Integrated Healthcare Network が全国に配置されていないことにある。患者情報共有プラットフォームがなければセーフティネット医療事業体以外の組織との機能分化や連携は起こりえないのである。
この点については中国の動きが注目される。筆者がマッコーリー大学オーストラリア医療イノベーション研究所のプロジェクトのアジア諸国担当編集者として出版した「Healthcare Systems: Future Predictions
for Global Care」(2018 年 CRC Press, Taylor & Francis Group 刊)の第 48 章に、中国が 2015 年から 10年計画で人口 30 万人以上の都市で公立病院の経営統合を進めている改革が解説されている。この改革については、国務院の社会保障制度改革チームがキヤノングローバル戦略研究所に来た 2015 年 12月に、筆者は説明を受けていた。中国側から「赤字国債に依存している日本の医療制度がサステイナブルとは思えない。近い将来高齢化が急速に進む中国が日本のようにならないためにはどうすればいいか」と質問されたので、筆者が「中国は公立の大病院を多数建設しているが、これは過剰投資であり将来維持できなくなる。医療技術の進歩を考えると大病院の急性期ケアではなく外来施設でのプライマリケアに財源シフトする改革を進めるべき。また、ICT 活用のためには公立病院を広域医療圏単位で経営統合して情報共有のプラットフォームにする必要がある。」とアドバイスした。これに対して中国側は、「コンサルタントである WHO からも同じ指摘を受けた。そこで来日前に公立病院を経営統合する改革を決定した。」と返してきた。その後筆者は、2020 年 9 月、中国経済社会理事会(官庁、政財界の要職経験者等をメンバーとするシンクタンク)と医療イノベーションについてオンライン会議形式で意見交換する機会を得た際、次の質疑応答を行った。
(筆者)2015 年から 10 年計画で公立病院の経営統合を進めているはずだが、現状はどうか?
(中国側)経営統合による成果が現れた所とそうでない所がある。
(筆者)その成功と失敗の格差の最大の原因は何か?
(中国側)組織カルチャーだ。経営統合によって医療提供体制を改善するという目標を組織全体で共有できているかどうかが鍵だ。
この「組織カルチャー」というキーワードを聞いて筆者は感動した。オーストラリア医療イノベーション研究所に参加している各国の医療改革研究者たちと議論するにあたり、組織カルチャーは常に最重要論点であり、中国の重鎮たちが医療改革の本質を理解していると知ったからである。
組織カルチャー及び目的の共有化!!これができない限りは地方では医療機関の統合はかなり難しそうですね。ここを乗り越えるためには、現状では病院経営者トップ同士がまずは相互理解して協力体制を整えることが必須ですが・・・まぁ無理でしょう。
なので地方で医療機関の統廃合をする場合、かなり強力な外圧がないと困難かなと思いますが皆さんはいかがお考えでしょうか?
こんな資料を読んでいると、実際の地域での医療変化の実際が今後どのように起こっていくのか、予想できる気がします。そう思いませんか?
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