公開日:2022年02月10日

日本は医療情報のデジタル化、データベース化にどう取り組むべき?~イギリスの失敗を参考に~

こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医@今井です。

 

2022年の診療報酬改定で電子処方せんについての取り組みについても諸々議論されていましたし、オンライン診療やオンライン資格認証についても議論が喧しくなされています。

基本的には行きつく先には医療情報のデジタル化、PHRの全体へのデータ利用化などが予想されますし、無駄なコストを削減するためにも絶対今後10年で取り組まなければいけない国の課題だと自分は思っています。

先進国で同じように医療情報のデータベース化のプロセスを経験した国で何か参考になる資料ないかとぱらぱら探していましたが、ちょうどいい資料みつけましたのでご紹介します。この問題に興味ある方は是非一読してみてください。10分あれば大体は把握できると思いますよ。

 

キャノングローバル戦略研究所さんから

英国の医療情報化の取り組み― 国家IT計画の失敗を題材に ―

気になった一文は以下の文章です。<おわりに>のところから引用させていただきます。(特に気になった部分は赤文字で)

おわりに

本稿はブレア労働党政権の医療改革プロジェクトの柱であったNPfITに焦点をあてた。NPfITは2011年に解体して、それぞれの部品となり、すでに構築され稼働していたシステムは、そのまま継続して使用されることになった。2002年に始まった大規模プロジェクトの10年にわたる紆余曲折をみることで、財政への影響やシステム構築の課題を明らかにすることを目的とした。
紙のカルテに対する依存を減らして、全土でどこでも正確な患者記録をみることができる電子カルテシステムを実現することで医療の効率化と公平性、安全性を実現しようとするNPfITの意義に賛同していたので、完成を見られなかったことは非常に残念でならない。英国は、NPfITの紆余曲折から、2011年に統一を諦めて、地域ごとに分散することにしたが、全土統一の電子カルテシステムは目指すべきだと考える。
失敗した要因は、①計画段階での費用、スケジュール、体制の見積りの甘さから予算拡大を招いた、②最初の要件定義が甘く、仕様変更によって機能が拡大し、予算が拡大した、③保健省と地域のGP、病院、開発業者の意思疎通の不足から来る対立、④現場職員の理解不足と作業負担見積りの誤り、⑤NHS中央組織の楽観視、⑥もともと既存のシステムが独立しており接続がなされていなかったことと、複数のパッケージシステムの使用により、互換性がなかった、⑦複雑化したのは、これらに加えて、グローバル企業が受注していたことにより、各国の商習慣の違いにより、契約破棄で揉める結果となった。
完成できなかった最大要因は要件定義であると考えられるが、発注者と開発業者との意思疎通が上手くいかないことから、要件定義が上手くできず、スケジュールの遅延が起こる。これは、この件のみならず、日本でもその他先進諸国でもITシステム構築において頻繁に起こる問題である。筆者の経験上、ITシステム構築の課題は要件定義である。ITシステムは建築物と違って完成するまでその姿が見えない。建築物は完成予想図や小さな完成モデルを提示することで、発注者と施工業者との間の意思疎通が行いやすくなるが、ITの場合は、発注者側とSE側との出来上がりイメージが異なることが多い。また、ITはプログラムで作られていくため、発注者の語る言葉とシステムエンジニアが書く言葉のロジックが異なることも意思疎通がうまくいかない理由である。
現在、デジタル化を推進している日本にとって、このNPfITの事例は学ぶ点が多かった。NPfITから得られる示唆であるが、英国はNPfITを廃止や中止ではなく解体とし、すでに構築されているシステムは廃棄せずに生かした点が重要である。たとえば、スパインは、内製化され、2014年にオープンソース・プラットフォームにアップグレードされた。また、NPfITは解体されても、NHSのさらなるデジタル化は必須である。相当な批判を浴びたNHSは再開の機会を待って、審議会を経て、再挑戦した点も評価できる。現在の日本も同様であるが、国産ベンダーだけではシステムの構築は難しくなっている。計画段階からコストやスケジュール、体制の見積りが重要で、グローバル企業との契約や製品の確認も重要であることも改めて認識できた。そして、体制やコミュニケーションが何よりも重要で、課題や行き違いは早めに対処し解決しておくことが肝要だと認識できた。
英国で全土統一電子カルテシステムが実現できるかもしれないと期待したのは、組織がNHSという国営の単体組織だからである。日本の医療は民間が多く、バラバラな組織体なので、全土統一電子カルテは英国以上に難しいだろう。しかし、本当は、日本のようなフリーアクセスで民間が主体の国の方が医療情報のデジタル化の恩恵が大きく、財政面の効率化も見込める。加えて、介護・福祉なども含めたデジタル化が実現できれば、さらに効率的で効果的である。
今後の課題は、以下のとおりである。カンピオン・アワード他(2014)は、NPfITの失敗は、NHSの1970年代や1980年代の医療情報化に起因すると指摘している。よってNPfIT以前の医療情報化を調査することである。また、NPfIT後の2014年から政策課題となっている戦略的トランスフォーメーション・パートナーシップ(StrategicTransformation Partnership)や統合ケア(integrated care)をふまえ、2015年末に公表された『将来像の提供:NHS計画ガイダンス2016-2020(Delivering theForward View: NHS planning guidance 2016/17 – 2020/21)』では、持続的トランスフォーメーション計画(Sustainability and Transformation Plans)が策定されることとなり、2018年3月にNHS Englandとthe Local Government Associationは地方医療ケア記録(Local Health and Care Record Exemplar(LHCRE))が行われることとなった。このパイロットプログラムについても検討することである。

 

日本は医療情報のデジタル化にあたって最も重視すべきことを要件定義できるでしょうか?今の行政をみていると、利害関係者が多くとてもできるようには思えませんが・・・・

他国の失敗を参考にしていいシステムをつくってほしい、単純にそう考えていますが皆さんはいかがお考えでしょうか?

 

 

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