医師の残業をどう考えるべきか~第8回医師の働き方改革の推進に関する検討会資料から~
こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医@今井です。
地域包括ケアの構築、少子高齢化の進展に併せて医師の役割や労働状況も変化します。当たり前といえば当たり前ですが、社会に求められる医療をどうやって医師が、(あるいは看護師が)提供するのかは時代により違いますよね。
さて現在医療制度の再構築とともに医師の働き方改革も同時並行で進んでいます。社会制度がどの方向性を目指しているのかを知るためにも、また純粋に医師の仕事がどうなっていくのかを知るためにも医師の働き方改革は個人的には最も注視しているトピックスの一つです。
さてそんな中8月28日に第8回医師の働き方改革の推進に関する検討会が開催されました。
その中で最も医師の今後の労働に関してのコアな資料かなと思われたのがこれです↓
- (資料3)医師労働時間短縮計画策定ガイドライン(案)[PDF形式:182KB]
- 結構面白いのでPDF載せてみますね。是非一読してください。
内容で興味深かったところは
1:医師の労働時間は今後3つの概念で管理される。
(A)水準→原則年間 960 時間
(B)水準→月 100 時間未満(例外あり)とした上で、地域の医療提供体制の確保のために暫定的に認められる水準
(C)水準→集中的に技能を向上させるために必要な水準
そして、年間 1,860 時間・月 100時間未満(例外あり)の上限時間数を設定することと整理されていること
- 2:令和6年4月までの間のなるべく早期に、医師の長時間労働の実態が
ある一定の医療機関に対して作成を義務付け、「緊急的な取組」の項目等、医師の労働時間短縮のための取組項目を記載するほか、前年度の医師の時間外労働実績(時間数)を記載し、実績と 36 協定に定められた時間数とが大きく乖離している場合には、その協定時間数の必要性について当該医療機関内で検討した上で、必要に応じて 36 協定に反映するようにしていくこと等が提案された - 3:医師、看護師、薬剤師、事務職員等の幅広い医療スタッフの協力の下、一連の過程を定めて継続的に行う自主的な勤務環境改善活動を促進することにより、快適な職場環境を形成し、医療スタッフの健康増進と安全確保を図るとともに、医療の質を高め、患者の安全と健康の確保に資することを目的として、医療機関における「医療勤務環境改善マネジメントシ
ステム」の導入が進められている。
医師労働時間短縮計画の策定においても、医療法第 30 条の 19 に基づく努力義務が課されている「医療勤務環境改善マネジメントシステム」のPDCAサイクルを活用して、各医療機関において、医師を含む各職種が参加する合議体で議論し、対象医師に対し計画内容を説明し意見交換する等の手順を踏むことが期待される。例えば、理事長・院長等経営トップ主導のトップダウンによるチームの組成や問題意識・解決意欲の高い医療スタッフ主導のボトムアップによるチームの組成、人事・事務部門が中心となったプロジェクト・チームの組成、既存の委員会(安全衛生委員会、労働時間等設定改善委員会、業務改善委員会等)や会議の活用が考えられる - 4:タスク・シフト/シェア
- ⅱ)看護師
・特定行為(38 行為 21 区分)
・予め特定された患者に対し、事前に取り決めたプロトコールに沿って、医師が事前に処方した薬剤の投与、採血・検査の実施
・救急外来において、医師が予め患者の範囲を示して、事前の指示や 事前に取り決めたプロトコールに基づき、血液検査オーダー入力、採血・検査の実施
・画像下治療(IVR)/血管造影検査等各種検査・治療における介助
・注射、ワクチン接種、静脈採血(静脈路からの採血を含む)、静脈路確保・抜去及び止血、末梢留置型中心静脈カテーテルの抜去及び止血、動脈ラインからの採血、動脈ラインの抜去及び止血
・尿道カテーテル留置・助産師外来
ⅲ)薬剤師
・手術室・病棟等における薬剤の払い出し、手術後残薬回収、薬剤の調製等、薬剤の管理に関する業務
・事前に取り決めたプロトコールに沿って、処方された薬剤の変更(投与量・投与方法・投与期間・剤形・含有規格等)
・服薬指導、処方提案、処方支援
ⅳ)診療放射線技師
・血管造影・画像下治療(IVR)における医師の指示の下、画像を得るためカテーテル及びガイドワイヤー等の位置を医師と協働して調整する操作
・医師の事前指示に基づく、撮影部位の確認・追加撮影オーダー(検査で認められた所見について、客観的な結果を確認し、医師に報告)
ⅴ)臨床検査技師
・心臓・血管カテーテル検査・治療における直接侵襲を伴わない検査装置の操作(超音波検査や心電図検査、血管内の血圧の観察・測定等)
・病棟・外来における採血業務(血液培養を含む検体採取)
ⅵ)臨床工学技士
・手術室、内視鏡室、心臓・血管カテーテル室等での清潔野における器械出し(器械や診療材料等)
・医師の具体的指示の下、全身麻酔装置の操作や人工心肺装置を操作して行う血液、補液及び薬剤の投与量の設定等
ⅶ)医師事務作業補助者
・医師の具体的指示の下、診療録等の代行入力
(2) 医師の業務の見直し
・ 外来業務の見直し
・ 日当直の体制や分担の見直し
・ 日当直中の業務の見直し
・ オンコール体制の見直し
・ 主治医制の見直し
・ 副業・兼業先の労働時間の状況も踏まえた勤務シフトの管理
(3) その他の勤務環境改善
・ ICTその他の設備投資
音声入力システムを導入している等 - ・ 出産・子育て・介護など、仕事と家庭の両立支援
短時間勤務、時差出勤、変形労働時間制の導入、宿日直の免除、院内保育・病児保育・学童保育・介護サービスの整備や利用料補助等
・ 更なるチーム医療の推進
介護、福祉の関係職種との連携等
中身をみてもらえればわかりますが、医師の働き方改革はタスクシェアリングなしには進まないことがよく理解できます。個人的にはこれらの準備は厚生省主導で強制的にするのではなく、目先の、将来が見えている医療機関であれば既に取り組めることからどんどん取り組むべきですよね・・・
10年後20年後の医師の働き方を考える時に大事なことは、医師の仕事の本質は何か、またすべきでない仕事は何かをきちんと各医療機関ごとに定義することだと思います。当院もこの資料を見ながら今後さらに医師の仕事の本質を考えていきたいと思っています。皆さんの医療機関はどう対応されますか?
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