令和時代の社会保障制度改革は、公的資料を読む事で予測できる!【令和時代の財政の在り方に関する建議】
こんにちは、札幌のかかりつけ医&社会保障、保険制度の持続について興味のある医師@今井です。
財務省が6月19日に「令和時代の財政の在り方に関する建議」を公表しました。HPはこちらでPDFはこっちです。↓表紙のみお見せします。
このなかで社会保障制度について、保険給付範囲の在り方の見直し、保険給付の効率的な提供、高齢化・人口減少下での負担の公平化、という視点から問題提起しています。さらにその問題を1)現状の保険給付、2)これまでに取り組んできた主な事項、3)主な改革の方向性、の点から議論しており提示されている改革案も読み取ることができます。
自分はこれまでも繰り返し述べていますが、将来の予想は公的資料を読み込むことである程度は可能だと思っています。
今回主な改革の方向性の部分のみ切り取りますので、今後どのような社会保障制度改革を財務省が考えているのか、一緒に皆さんとみてみたいと思いますよ。是非一読ください。
以下本文より今井が気になる部分を
<今後の社会保障改革の考え方>
こうした制度改革については、特に、2022 年には団塊の世代が後期高
齢者になり始めることを見据え、それよりも前に実現していく必要があ
ることは論を俟たない。引き続き、当審議会としても、積極的な検討を
進めていく。
更に、中長期的な人口見通しを見ると、今後、65 歳以上の人口につい
ては、急激に増加を続け、2040 年頃にかけてピークを迎える。そのため、
2040 年頃以降は社会保障費の伸びが落ち着く可能性があるとの指摘もあ
るが、更なる医療の高度化に加え、一人当たり医療・介護費が現役世代
の数倍にも上る 75 歳以上の人口は 2040 年以降も一貫して増加していく
ことが見込まれており、伸びが自動的に抑制されると仮定することは適
当ではない。更に、「支え手」である 65 歳未満の現役世代の人口は、2040
年を超えても一貫して減少を続ける5ため、経済成長の足枷となる可能性
がある。このため、2040 年以降も社会保障給付が経済成長を超えて増加
し、また、公費負担も一層増加していくことが見込まれるため、中長期
の視点からも、社会保障改革の手綱を緩めてはならない。
このように中長期的にマクロで見て支え手の減少が見込まれるなか、
経済社会の活力を保つためには、政策対応によって、働く意欲のある高
齢者・女性・障害者の就労を一層促進し、できる限り支え手の減少を食
い止める必要がある。そうした取組みを進めつつ、すべての世代が、そ
の能力に応じて支え合いながら、給付と負担がバランスした全世代型社会保障の考え方に基づく取組を一層推進していくことが重要である。持
続的な全世代型社会保障の実現に向けて、少子化対策や社会保障に対す
る安定財源を確保するために、本年 10 月には消費税率の 10%への引上げ
が予定されているが、依然として国債発行に依存する姿に変わりはなく、
社会保障の伸びの抑制や負担の見直しに取り組むことが不可欠である。
社会保障の伸びの抑制については、「新経済・財政再生計画」で定めら
れた社会保障関係費の実質的な増加を高齢化という人口動態による増加
分に相当する伸びにおさめるという方針を、引き続き、着実に達成して
いく必要がある。そのためには、昨年末にとりまとめられた「新経済・
財政計画 改革工程表 2018」に掲げられている改革項目について、各項
目の進捗状況につき、一定の期限を区切って検証を行うとともに、遅れ
が生じた項目については速やかに改善策を講じるなど、厳格な管理を実
施すべきである。
また、2020 年度に取りまとめられる予定の「経済財政運営と改革の基
本方針」6においては、給付と負担の在り方を含め社会保障の総合的かつ
重点的に取り組むべき政策をとりまとめ、加えて「基盤強化期間」内か
ら実行に移していくこととされている。これは、社会保障関係費の伸び
を抑制し、ひいては 2025 年度のプライマリーバランス黒字化を達成する
うえでも重要な取組であり、改革の内容・実施時期を明確にしたうえで
進めていくことが不可欠である。
今後、これらの取組を進めるに当たり、高齢化の更なる進展、支え手
の減少、医療の高度化等の構造変化が見込まれるなかで、これからの令
和時代を通じて財政と医療・介護保険制度の持続可能性を確保していく
ため、昨秋の建議で示したとおり、
視点1)保険給付範囲の在り方の見直し
視点2)保険給付の効率的な提供
視点3)高齢化・人口減少下での負担の公平化
という3つの視点から早急に以下の施策に取り組んでいくべきであり、
以下に各論を示すこととする。〔資料Ⅱ-1-3~6参照〕
*医療と介護の2面ありますがまずは医療側の改革案から
保険給付範囲の在り方の見直し
ハ)主な改革の方向性
高齢化・医療の高度化により医療費が年々増大するなか、国民皆保険
制度を維持していく観点から共助の対象として適切な保険給付の範囲の
在り方を検討していく必要がある。その際、「大きなリスクは共助、小さ
なリスクは自助」との考え方7の下、高額医薬品や医療技術を引き続き保
険収載していく場合には、小さなリスクについて、薬剤自己負担の引上
げや、少額受診等に一定程度の追加負担を求めることなどが必要である。
薬剤自己負担の引上げについては、医薬品の種類に応じた保険給付率
を設定することや、OTC 医薬品8と同一の有効成分を含む医療用医薬品の
保険給付の在り方について見直すことが考えられる。少額受診等における一定程度の追加負担に当たっては、かかりつけ医・かかりつけ薬局等
への誘導策として定額負担に差を設定することについても、検討を進め
るべきである。
また、医薬品・医療技術については、安全性・有効性に加え費用対効
果や財政への影響など経済性の面からの評価も踏まえて、保険収載の可
否も含め公的保険での対応の在り方を決める仕組みとしていくべきであ
る。その際、保険収載とならなかった医薬品等については、安全性・有
効性があれば保険外併用療養費制度に新たな分類9を設けてより柔軟に対
応しつつ、併せて、民間保険の積極的な活用を促進していくことも検討
すべきである。〔資料Ⅱ-1-7~10 参照〕
②-1 保険給付の効率的な提供(国保の更なる改革)
ハ)主な改革の方向性
今後、保険給付に応じた保険料負担を求める本来の仕組みとするとと
もに、地域差の是正など医療費の適正化に向けたインセンティブを強化
する観点から、更なる改革を続けていく必要がある。
具体的には、県レベル・地域レベルで給付に応じた負担を求める仕組
みとするため、国保改革に伴う財政支援の拡充等を活用した先進事例も
参考としつつ、市町村とも連携し、法定外繰入等を速やかに解消し保険
財政運営の健全性を確保すべきである。
更に、県レベル・地域レベルでの医療費適正化へのインセンティブ付
けを強化すべきである。このため、普通調整交付金を、実際の医療費で
はなく、各地方公共団体における被保険者の年齢構成を勘案11してデータ
に基づき算出した標準的な医療費水準を前提に交付する仕組みに転換す
るべきである。また、保険者努力支援制度については、例えば、地方公
共団体内の被保険者の有病率や特定健診における結果の値など適切なア
ウトカム指標の設定・活用や、適時な情報公開の徹底などを通じ、イン
センティブを強化すべきである。〔資料Ⅱ-1-11、14~16 参照〕
②-2 保険給付の効率的な提供(病床に係る医療提供体制の改革)
ハ)主な改革の方向性
こうした進捗状況を踏まえ、今後、地域医療構想の実現に向けて、診
療報酬の適正化に加え、都道府県に実効的な手段・権限を付与しつつ取
組の結果に応じた強力なインセンティブを設ける必要がある。都道府県
は国保の財政責任を担う保険者として、医療費の適正化に向けて主体的
に取り組むべきである。
具体的には、合意された具体的対応方針の内容が 2025 年における病床
の必要量と整合的でない場合には、再合意の期限を設定したうえでただ
ちに再検討を要請すべきである。あわせて、保険医療機関の指定等に当
たり、民間医療機関に対する他の病床機能への転換命令に係る権限等を
付与するなど都道府県知事の権限を一層強化すべきである。更に、地域
医療介護総合確保基金については、地域医療構想の達成に向けた医療機
関の施設整備等に引き続き重点化しつつ、基金創設前から存在している事業か否かにかかわらずメリハリのある配分調整を行うべきである。
急性期病床の適正化については、平成 30 年度診療報酬改定が、全体と
してどの程度地域医療構想に沿った病床の再編・急性期入院医療費の削
減につながっているかについて進捗を評価し、必要に応じて更なる要件
厳格化等を次期改定において実施すべきである。〔資料Ⅱ-1-12、13、
17~23 参照〕
②-3 保険給付の効率的な提供(公定価格の適正化)
ハ)主な改革の方向性
このように、高齢化・高度化等により医療費が毎年増加しているなか、
診療報酬本体、薬価など、保険償還の対象となるサービスの価格につい
ては、国民負担を軽減する観点から、できる限り効率的に提供するよう、診療報酬の合理化・適正化等を進めていく必要がある。
薬価についても、毎年薬価調査・毎年薬価改定の実施など薬価抜本改
革の残された課題をスケジュールに沿って着実に進めるとともに、イノ
ベーションの推進に向けて、様々な施策も活用しつつ、製薬企業側は、
創薬コストの低減、費用構造の見直しや業界再編に取り組むべきである。
更に、調剤報酬についても、薬局の多様な在り方や経営環境を踏まえ
た見直しを実施すべきである。具体的には、今後の改革に当たっては、
PTP 包装12の一般化、全自動錠剤分包機の普及などの調剤業務の機械化
といった今日の業務の実態や技術進歩、薬剤師以外の者が実施できる業
務範囲の明確化を踏まえ、薬剤師の業務を対物業務から対人業務にシフ
トさせていくといった視点が必要である。〔資料Ⅱ-1-24~30 参照〕
③ 高齢化・人口減少下での負担の公平化
ハ)主な改革の方向性
年齢ではなく能力に応じた負担とし、世代間の公平性や制度の持続可
能性を確保する観点から、まずはできる限り速やかに 75 歳以上の後期高
齢者の自己負担について原則2割負担とすべきである。その際、現在 70
~74 歳について段階的に実施してきた自己負担割合の2割への引上げと
同様に、75 歳に到達した後も自己負担を2割のままとすることに加えて、
既に後期高齢者となっている者についても、数年かけて段階的に2割負
担に引き上げるべきである。更に、金融資産の保有状況も勘案して負担
能力を判定する制度の具体的な設計の検討や、後期高齢者医療制度にお
ける「現役並み所得」の判定基準の見直しなどに取り組む必要がある。
また、支え手の中核を担う勤労世代が減少しその負担能力が低下する
なかで、改革に関する国民的理解を形成する観点から保険給付率(保険
料・公費負担)と患者負担率のバランス等を定期的に「見える化」しつ
つ、診療報酬とともに保険料・公費負担、患者負担について総合的な対
応を検討していくべきである。〔資料Ⅱ-1-31~35 参照〕
介護側の改革案
① 保険給付範囲の在り方の見直し
ハ)主な改革の方向性
長期にわたり介護保険給付の増加が見込まれることを踏まえれば、要
介護度・要支援度の軽重にかかわらず同じ保険給付率となっている制度
を改め、小さなリスクについては、より自助で対応することとすべきで
ある。加えて、サービスの質を確保しつつ、地域の実情に応じた多様な
主体による提供を推進する観点から、要支援者向けサービスの地域支援
事業への定着・多様化にも引き続き取り組む。また、軽度者のうち残さ
れた要介護1・2の者の生活援助サービス等についても、第8期計画期
間(令和3年度(2021 年度)~令和5年度(2023 年度))中の更なる地
域支援事業への移行や、生活援助サービスを対象とした支給限度額の設
定又は利用者負担の引上げ等について、具体的に検討して行く必要があ
る。〔資料Ⅱ-1-37、38 参照〕
② 保険給付の効率的な提供
ハ)主な改革の方向性
介護の地域差縮減に向けては、介護費適正化の観点から、インセンテ
ィブ交付金への適切なアウトカム指標の設定・活用や配点のメリハリ付
けを行うことで、保険者機能のより一層の強化を進めるべきである16。
また、調整交付金については、保険者機能のより一層の底上げを図る
ため、今年度中に結論を得て、第8期からインセンティブとしての活用
を図るべきである。更に、2号被保険者の保険料財源の配分についても、
保険者機能の発揮を促す仕組みとし、給付と負担の牽制効果を高める観
点から、介護予防・重症化防止の取組状況等を評価したうえでメリハリ
付けし、保険者に傾斜配分する仕組みを検討すべきである。
このほか、保険給付の効率的な提供に向けては、地域医療構想を踏ま
えた介護療養病床等の介護医療院等への6年間の経過措置期間内での着
実な転換、在宅サービスの保険者等の関与の見直し、介護事業所の経営
効率化の推進といった提供体制の改革に向けた取組に加えて、介護報酬
改定に係る PDCA サイクルの確立、介護サービスにおける民間企業の参
入とサービス価格の透明性向上・競争推進など、公定価格の適正化に向
けて取り組む必要がある。〔資料Ⅱ-1-39~44 参照〕
③ 高齢化・人口減少下での負担の公平化
ハ)主な改革の方向性
介護保険制度については、制度の持続可能性や給付と負担のバランス
を確保する観点から、所得・資産などに応じた負担となるよう推進して
いく必要がある。このため、利用者負担を原則2割とすることや利用者
負担2割に向けその対象範囲を拡大するなど、段階的な引上げを実施す
べきである。また、補足給付については、住宅サービス受給者と施設サ
ービス受給者との負担の権衡や世代間の公平性を確保するため、実態調
査等を通じ、住宅等の資産の追加、預貯金等に係る基準の見直しも検討
すべきである。
このほか、ケアマネジメントについても、世代間の公平性の観点等も
踏まえ、利用者負担を設けるとともに、評価手法の確立や報酬への反映
を通じて、質の高いケアマネジメントを実現する仕組みとすべきである。
加えて、現在、介護老人保健施設、介護療養病床、介護医療院の多床室
については、現在、室料相当分が保険給付の中に含まれたままであり、
これを除外する見直しをする必要がある。〔資料Ⅱ-1-45~50 参照〕
ということで改革案をみてみるとどういう方向に国が、財務省が考えているのかがよく理解できると思います。現実には必ずしもこの案通りにはいかないですしょうが(現場の人間からするとこの案をもし案通りに実行したら、まず一番最初に潰れるのは地方から、となるのが目に見えていますね。)行政の考えを理解し現実を予測するための資料としては一級品だと自分は思っています。
皆さんはこの資料をみてどう考えますか?他にも色々項目ありますんで興味ある方は中身みてみてくださいね。
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