公開日:2018年05月04日

「自由に病院を選択し、受診できる権利がある」これは本当に患者さん自身のためになるのでしょうか?

こんにちは、札幌のかかりつけ医@今井です。

日本全国にはアバウトですが病院が1万近くあり、診療所も10万程存在します。皆さんは医療機関を選ぶ時にどんなことを考えて選択されますか?

○家から近くてなんでもみてくれるから

○昔からかかっていたから

○呼吸機能が気になるから肺の専門の病院に

○腰が痛いから整形に

○白内障の有無が気になるから眼科に

○家族が癌になったから気になって

などなど色々なことを考えて病院を選択されることでしょう。

これまでは当たり前のように「自分が受診したい病院に自由に受診できる」権利を受容してきましたが、本当に現状ではこれが患者さんがいい医療を受けるのに寄与しているんでしょうか?

これまでに何度もブログで書いてきましたが、やはり医療へのフリーアクセスはもう現状にあっておらず根本的に見直される時期だと個人的には考えています。以下その理由です。

①医療費の高騰を招く

皆が皆受診したい医療機関を選定し受診すると当然行き過ぎた検査が行われる可能性が高くなります。医療機関は検査を希望した患者さんがきたら検査しますし、患者さんも希望はしているから当たり前っちゃ当たり前です。がその結果無駄な医療費がどんどんどんどん使われます。

病院受診してのCTやMRI、その他の検査ってそんなに必要なくても念のためにっていう観点からされているものかなりの数があると思います。

フリーアクセスがこのまま存在すれば後学な無駄な検査や費用を少なくすることは難しくなるでしょう。

②行き過ぎた専門診療が跋扈し結局だれも責任を持たなくなる

気になる症状毎に専門科受診→結果どの科の医師もその患者さんの最終的な責任に関しては負わなくなる、悪しき側面が目立つようになってきています。結局専門科を複数受診することで最終的に困ることは患者さんってことになります。

③認知症患者さんへの対応が不十分となる

これから爆発的に増加する認知症患者さんへの対応はフリーアクセスを担保したまま、診療に応じる義務を医療者に課したまま対応することはできるのでしょうか?一部の病院ではそんな何度も受診したり対応苦慮する患者さんはもう診ませんというところもありますが、病院はその対応でいいとしても結局患者さんはどうするの?っていうことが多発しています。結局こちらも困るのは患者さんや家族ということになります。

④在宅医療への移行がスムーズではない

基本的に現在は在宅患者さんの多くが病院からの紹介となっていますがこれはスムーズさに欠けます。窓口がかかりつけ医となっているといつも診療している医師が在宅も担当するために在宅医療への移行がスムーズとなります。これも高齢者が多数となる医療現場ではこれから必須となるでしょう。

フリーアクセスにより病院複数受診していると在宅医療すらそもそも知らないまま経過してしまいます。

⑤多剤投薬の問題を解決できない

これも言わずもがな。多数の専門病院受診=多数の専門科領域の投薬となります。いくらかかりつけ薬剤師制度が普及しようと入口が間違っていて出口で正しくなるはずがありません。

⑥介護保険を利用したサービスとの調整がうまくすすんでいない

病院医療者が介護保険や在宅医療に精通することはまずないし、興味をもつことは少ないかと思います。さらに連携する介護側としてもどの病院と連携していけばいいの?ってなっています。

例えば脳梗塞後遺症で要介護状態、前立腺肥大に神経因性膀胱ある患者さんの指示書を通院している病院の内科医に訪問看護指示書書いてくださいって依頼しても「カテのことは指示できないので指示書書けません」とかって実際ありますからね。これでは連携のレの字も出てこないと思います。

 

などなど諸々理由はかきましたが、自分がいいたいことは

国は緩やかなフリーアクセスの制限とか耳障りのいいフレーズを使用しないできちんとフリーアクセス制限した方が医療制度としても、実際の医療としてもいいと考えています

と説明しないといけない状況までもう来ているってことです。時間の余裕もないですしこのまま中途半端なかかりつけ医制度が進んでしまえば絶対失敗する制度設計になると思います。

きちんとしたかかりつけ制度をつくるためにも国には勇気をもって医療へのフリーアクセスの善し悪しを議論する土壌をつくってほしいと考えています。皆さんのご意見はいかがですか?

 

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