労基法を超えたシステム
山の日ってできていたんですね。この数年祝日気にしていなかったので先週初めて知りました・・・・
最近クリニック前の喫茶店で仕事することが多くなってきました。1時間くらいあっという間に過ぎますね。
こんにちは、土日も祝日もあんまり関係なく過ごしてきた在宅医@今井です。ただそれは開業して当初の数年のこと・・・・現在は複数の医師で対応していることもあり当番の日以外は呼ばれることもなく自分と家族との時間を過ごせています。この医師のシステムのあり方ですが、一番大事なことは個人的には組織をつくる時の考え方次第だと思っています。過重労働ありきの体制でいくと他の医師が倒れてしまうことは必須・・・・なので当院は最初から医師が増えて複数医医師体制となっても来てもらった先生には”平日1日の待機、週末の待機を月1回”以上の待機をお願いすることはなるべくしないようにしていました。2人体制の時は自分が平日週4日待機で他の先生が1日、土日の待機も月3回自分で1回だけお願いするといった具合です。3人体制になったとき自分の待機が平日3日、土日も月2回と減ったのですが、それだけでもすごい楽だなぁ、これ以上の贅沢はないなと感じました。現在はほぼローテーションで月に1回の土日の待機くらいとなっています。
さてそんな感じで当院では何とか医師全員でなるべく均等に負担を減らしながら働いていますが、この記事の産科医の勤務時間、本当に異常ですね、というか周りは異常だと思わなかったんでしょうか?まずは記事をご覧ください。
HUFFPOSTより 残業173時間、30代医師の自殺を労災認定 「労働環境を整えないと不幸繰り返される」両親の悲痛な思い http://www.huffingtonpost.jp/2017/08/09/karoushi_n_17706324.html
東京都内の病院に勤務していた産婦人科の男性研修医(当時30代)が自殺したのは過労が原因だったとして、東京労働局の品川労働基準監督署が労災認定した。遺族代理人の川人博弁護士が8月9日、記者会見を開いて明らかにした。
川人弁護士は会見の中で「病院側は長時間労働を認識していたのに十分なサポートをしていなかった」と指摘した。
■「長時間労働で疲弊しきった中での自殺だった」
男性は2010年4月に医師免許を取得し、13年4月から都内の総合病院で勤務を始めた。分娩や手術などの通常業務に加え、緊急手術などの対応も。150時間を超える長時間労働が常態化していった。
男性は2015年4月ごろから睡眠不足と抑うつ状態の症状が見られるようになったという。男性は同年7月12日に自殺した。遺書は見つかっていないという。
男性の両親は2016年5月、品川労基署に労災を申請。7月31日、労災が認定された。
労基署の決定によると、男性は自殺する直前に精神疾患を発症していた。また電子カルテや関係者の証言などから、6月9日から7月8日の1カ月の残業時間が173時間だったと確認した。こうした理由から、男性の自殺は過労が原因だったと認定した。
遺族側によると、自殺する直前の6カ月で男性が取った休日は5日間。残業時間も月160時間前後で、多い時には月200時間を超えていた。
これは、男性と病院側の労使協定が定めていた、3カ月120時間という残業時間をはるかに超える数字だった。
「月200時間はひどい。医師に対する労働環境の整備をしようとする意識が、一般企業と比べて極めて希薄だ。本人に通知した記録は確認されていないが、何れにしても今回のケースは労基法違反にあたる」
病院側が男性と結んでいた労使協定は、長時間労働を助長するような内容だった。緊急手術などの特別な事情がある場合、病院から本人に通知すれば、残業時間を3カ月で600時間まで伸ばすことができると定められていた。
「産婦人科医療の現状がそうさせている。あまりにも仕事の量が多いのに、それに見合う人数が足りていない。あまりにも長時間労働で疲弊しきった。そういう中での自殺だった」。川人弁護士はこう訴えた。
■両親がコメント「労働環境を整えないと不幸繰り返される」
労災が認定されたことを受けて、男性の両親が弁護士を通じてコメントを発表。「医師も人間」「(労働環境が)整備されなければ不幸は繰り返される」と、悲痛な思いが込められていた。
「労災認定がされたことに感謝いたします。息子は研修医として、その激務にまさに懸命の思いで向かい、その業務から逃げることなく医師としての責任を果たそうとし、その過程で破綻をきたしたものと思われます。親としては、その仕事ぶりを今回認めていただいたと受け取り、救われる思いです」
「産婦人科を専攻した息子は、産婦人科特有の緊張感、いつ訪れるかわからない分娩への待機、正常に出産させることを当然とする一般常識など、精神的ストレスは大きく、その負担から解放されることはなかったことと思います」
「その中で、責任を委託されたものに過重な労働負担がかかり、その結果、逃げ場を失いこのような不幸な転帰を迎えたものと考えています」
「医師も人間であり、また、労働者でもあり、その労働環境は整備されなければこのような不幸は繰り返されると思います」
■医師の過労死「国をあげて対応すべき」
医師の過労死を巡っては、今年5月、新潟県の新潟市民病院に勤務する女性研修医が自殺し、過労死と認定された。
川人弁護士はこれについて、「前期研修医はいろんなとこにどんどん移っていくが、後期研修医は基本的に同じところにいる。病院経営者から見れば大変な戦力。経験があるし若いし、偶然ではない」と指摘。
政府の働き改革案で、医師が長期労働規制の対象外となっていることにも触れ、「医師の過労死を放置・促進するもので、極めて危険だ。医師の過労死、過重労働をなくすため、国をあげて早急に対応するべきだ」と訴えた。
来年度のゆがみを持った新専門医制度の開始とともにシステムの狭間で働いている医師にはとてつもなく過重がかかることが予想されます。この問題、先送りにしていいんでしょうか?早急な議論や過重労働にさらされる医師の保護が必要ではないかなと思いますが皆さんはどう考えますか?(ちなみにある時期に泊まり込みで仕事することは全く自分は否定しませんがそれも充分な休息があってこそ・・・研修医1年目の時は自分は平日はほぼ病院に泊まっていましたが土日は自宅でゆっくりすることでリフレッシュしていましたからね)寝不足で外来や手術するの、どれだけつらいかよく知っていますので新たな犠牲がでないことを祈るばかりです。
一応両論併記で他の考えも列挙しておきます。(気になるところはは赤文字としています)
m3.comより 医師の時間外労働の上限規制、年明けにも中間整理
厚生労働省は8月2日、「医師の働き方改革に関する検討会」の第1回会議を開き、医師の時間外労働の上限規制の在り方や勤務実態、勤務環境改善策などについての検討を始めた。塩崎恭久厚労相が会議の冒頭、「医師の時間外労働の上限規制について、特例の在り方を議論していただくのが目的。具体的な勤務環境改善策を推進することで医療の生産性を高め、提供する医療の質の維持向上をしながら、働き方を改善するのも重要だ」と挨拶した。 座長には、東京大学大学院法学政治学研究科教授の岩村正彦氏が就任、年明けには中間整理を行い、最終的な結論は、2018年度内に得る予定。
政府が3月28日にまとめた「働き方改革実行計画」で、時間外労働に罰則付きの上限規制を設ける方向性が示された。医師に関しては2年後を目処に規制の具体的な在り方や労働時間の短縮などについての結論を得るととともに、改正法施行から規制の適用まで5年間の猶予期間を設けるとされたことを踏まえ、本検討会では議論を進める。
検討会の構成員は、医療団体の幹部や医療法人の経営者、勤務医、労働法の研究者、病院経営コンサルタント、看護師、労働組合など、さまざまな分野から集められた。2日の会議では、各構成員が順に現状認識などの見解を述べた。主な意見は次の通り。
【日本医師会常任理事・市川朝洋氏】
医師の働き方を論じる上で大切なのは、できることから始めることではないか。将来の議論は大切だが、まず医療界として自主的な改善を進め、その着地点を予想しつつ、医師の特殊性を踏まえた将来の在り方について考えるべきではないか。応招義務に加え、自己研鑽や高い職業意識、倫理観などの特殊性により、長時間労働、連続勤務、労働時間の突発的な変動、労働時間の解釈の違いが起こり、その結果、労働時間管理や健康管理の難しさが生じている。これが一番の問題点であり、一般労働者と違う点であると考えている。日医の働き方改革の目的は長時間労働の是正ではなく、勤務医の健康を守りつつ、地域医療を守っていくことだ。医師に対する安全衛生体制全般にも目を向けて対応していく必要がある。
【千葉大学医学部附属病院院長・山本修一氏】
多くの大学病院も労働基準監督署から指導を受けている。全国医学部長病院長会議でも危機感を持ち、医師の労務管理についての検討を進めている。大学病院の特殊性としては診療の他に教育と研究というミッションがあり、それらがモザイク状に絡み合って切り分けられず、問題を複雑にしている。大学教員の場合、通常は教育と研究が主体の場合には裁量労働制が採られている。基礎系の教員は裁量労働で、臨床型の場合は診療が入るので裁量労働になじまない部分がある。どこからどこまでが上限規制の対象になるかということも、この検討会での議論を踏まえて全国医学部長病院長会議で検討したい。
【福岡県済生会福岡総合病院名誉院長・岡留健一郎氏】
病院の勤務医は管理者と労使協定を結んでいるのかどうか。全然結んだことがなく、「36協定って何だ」と、近年こういう議論が出てきて初めて知ることになった。医師の労働者性ということが根本的に問われる時代であるとともに、労働管理について、オンなのかオフなのかをきちんと定義付けていかないといけない。そのためには現在の医師がどういう働き方をしているか、実態調査をすることが必要だ。
【東北大学環境・安全推進センター教授・黒澤一氏】
東北大学病院では時間外労働が月80時間を超えると強制的に面談をしているが、その内容を見ると、目の前に患者がいれば診なければいけない現状がある。コメディカルに業務負担を移したり、産業医が業務の内容を仕分けたりしているが、それでも患者は来る。地域で基幹病院にしても大学病院にしても、そこしか診るところがない。また、大学の給料だけではやっていけず、大学で80時間働いた後、アルバイトで当直に行く分の管理ができていない。当病院は産業医がいるが、いないところも多い。疲れた医師、過労死になりそうな医師を見付けて「休め」と言う人がいないことも、問題だと思う。
【順天堂大学医学部附属順天堂医院 医師・猪俣武範氏 】
質の高い医療と、職場環境の確保が必要だ。医師には医学生や市民の教育、研究、病院の経営など多岐にわたる仕事があり、自己研鑽や学会への参加も重要だ。それに対して画一的な労働規制をするべきではない。多様な仕事をこなす上での環境は整理すべきだ。
【ハイズ株式会社代表取締役社長・裴英洙氏】
私は元外科医で、今は病院経営のコンサルティング会社を経営している。医師が提供する価値は量と質のかけ算だと考えている。つまり、労働時間と生産性だ。今回は働き方改革ということで、「働く時間改革」ではないと思う。時間の議論は当然ながら、時間を減らして、どのようにしたら質が上がっていくのかという議論もセットで考えないと、時間を減らすだけでは提供する価値が下がってしまい、患者や地域にマイナスになる。
【全日本自治団体労働組合総合労働局長・森本正宏氏】
医師が他の職種と違って長時間労働が過労死にはつながらない、などということはあり得ない。どのように働き方を変えれば長時間労働を抑えられるのかということや、応招義務に対して個人ではなく組織的に対応できる体制を作っていくのかを検討していきたい。
医師の仕事の特殊性も理解できますが、労基法を超えたシステムを医療のみでつくるのは難しいと思います。このような悲しいことはもう起きない事を切に願います・・・・