破綻しない介護施設運営
午前中の雨はすごかったですね。
こんにちは、先日このニュースが流れていましたが皆さんみましたでしょうか
↓NHKニュースより
介護事業会社 自己破産を申請 http://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20170714/5178861.html
道内で23の介護施設を運営する札幌市の介護事業会社が事業拡大の一方で人件費の上昇などで資金繰りに行き詰まり、14日、裁判所に自己破産を申請しました。
会社は事業をほかの会社に譲渡する予定で、直ちに入居者や従業員の雇用に影響はないとしています。
札幌市に本社がある「ほくおうサービス」などグループ会社5社は、グループホームや有料の老人ホームなど道内で23の介護施設を運営し従業員は1200人あまり、入居者は1100人あまりに上ります。
会社によりますと、およそ4年前から札幌市などでサービス付きの高齢者住宅を開設するなど事業の拡大に乗り出しましたが、入居者が十分に集まらなかったことや、従業員の人件費の上昇で経営が圧迫され、ことし3月期の最終的な損益は12億8600万円の赤字に陥っていました。
このため、自力での再建を断念し、14日に札幌地方裁判所に自己破産を申請しました。
代理人の弁護士によりますと、実質的な負債総額は43億円に上るということです。
今後は福岡市の介護事業会社に事業を譲渡する予定で、会社は、入居者や従業員の雇用にただちに影響は出ないとしています。
ほくおうサービスの矢内大介社長は記者会見で「入居者やご家族の皆様に大変ご心配をおかけし、大変申し訳なく思っています」と述べました。
当該企業の事業内容については詳細は知りませんし特に語りませんが、この記事をみて改めて感じたこと・・・・それは老後の20~30年を1つの介護施設で暮らすということはもはや無理だということです。正直昨今の介護業界をみているとほぼほぼ大きいところは何かしら運営会社が買収されたり変更したり、または今回のように破綻しているのではないかと感じます。仮に皆さんが親が入居することになる介護施設を選択するとき、大体「最後まで、もしくは状態安定している間はできるだけ長くここで過ごしてほしいな」と思うはずですが正直それはもう期待しない方がいいかと思います。そのくらいの気持ちで介護施設を選ぶつもりでいないと、何か起きたときに手立てがなくなります・・・・・
ちなみにここの会社、クリニックも経営されていますが訪問診療を受けていた施設の患者さんどうするんでしょうか?おそらくはクリニックから医師が独立→自分のクリニックで施設みていくというような感じになるか、それともクリニックは現状のままで経営を続けていくという形になるのか・・・・いずれにせよなんらかの形で札幌の在宅医療や介護の状況に影響はでてきそうですね。だって施設の職員と入居者さんあわせたら2500人近くが関わっていますから・・・・・・それにしても破綻しない介護施設運営って難しいんですかね・・・・・これが医療法人とかであれば多少赤字でも頑張っていたような・・・・
さて本日の医療ニュースはこちらです。新専門医制度、どうなるのでしょうか?何回もこれまで自分も書いていますが、もそも専門医制度とはどうあるべきなのか、というところがきちんとクリアになっていないといくら制度の開始をすすめても絶対破綻するような気がしますが・・・来年度って冗談ですよね?
MRICより
Vol.148 日本専門医機構は新専門医制度の2018年度開始をごり押しするのか http://medg.jp/mt/?p=7704
専門医制度の「質」を守る会 共同代表
つくば市 坂根Mクリニック 坂根みち子
2017年7月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
学会任せの専門医にばらつきがあり、質の担保が必要と言う事で始まったこの制度だが、質の担保はどのようにされたのだろうか。
機構が出した新整備指針を検証してみた。
1)専門医制度の根幹は「学会の専門医制度」ではなく、「各基本領域の専門医制度を各専門領域学会が運営し担う」ことである。 意味するところは「学会の専門医制度」は機構の助言・評価がないが、「各基本領域の専門医制度を各専門領域学会が運営し担う」は機構の助言・評価を受けることである。
→ということは当然機構のチェック機能が重要となってくる2)一つの基幹施設のみでの完結型の研修ではなく、一つ以上の連携施設と研修施設群を作り循環型の研修を行うものとする。 すなわち、一つの病院だけの研修を行うと、その病院の性質(地域性、医師の専門等)の偏りにより研修に偏りがでる可能性があるので、他の連携病院を必ず作り循環型の研修を行うものである。
→これは他国の専門医制度には認めない日本独自の方法だが、単独施設であっても研修の質が保たれていればいいだけなので、実際は質のためではなく偏在対策とでもいうべきものである。
3)研修到達度評価 各専門研修プログラムにおいて、各基本領域学会の定めた基準による研修プログラム管理委員会においてフィードバックシステムが確立されなければならない。日々の評価に加えて年次評価を行い、不足部分の研修を重点的に行わせる。
→機構のチェックではなく、学会がチェックするらしい。
整備指針すべてに目を通してみても、質の担保のために書かれた方法は、「学会が策定し、機構が検証、承認を得る」これだけであった。
具体的な方法は一切書かれていない。学会をまたいで標準化されたものはまだ一つもない。
機構は整備指針で、「学会は機構と相談の上、質を担保せよ」と言えば専門医制度の質を担保したことになるとでも思っているのだろうか。
そして、「働き方改革、女性の力を活用」をうたう国の方針に逆行するような以下の項目。
・特定の理由(海外への留学や勤務、妊娠・出産・育児、病気療養、介護、管理職、災 害被災など)のために専門研修が困難な場合は、申請により、専門研修を中断することができる。
妊娠・出産・育児がこの時期の医師たちにとって当たり前の事ではなく、「特定の理由」になるらしい。
多くの女医にとり、研修期間と妊娠、出産、育児は確実に重なる期間である。この時期に、決められた場所での短期のローテート研修と常勤勤務というハードルがどれほど高いものか、制度設計する側に想像力が全く欠如している。女医のパートナーは7割医師である。ともに研修中ということも多いだろう。保育園の確保さえ難しい現状で、早朝保育、延長保育はあるのか、どちらか一人でも時間通り帰れるのか、勤務先により通勤時間はどのくらいの幅があるのか、子供が病気になった時の人の手当てをどうするのか、小1の壁をどう乗り越えるのか、悩みは尽きない。
7月4日付けの日経夕刊にニュージーランド航空日本支社長のクロビス・ペリエ氏のこんな意見が載っていた。
<女性の力 もっといかそう>
多様な意見を戦わせれば、企業はよりよい決断ができるだろう。男性だけで会議をしたら、男性のための結論しか出ないのは当然だ。顧客の半分は女性。女性社員に意見を聞かないと始まらない。日本には非常に多くの才能ある女性がいるにもかかわらず、まだまだうまく力を発揮できる場が整っていないと感じている。(引用終了)
早速日本専門医機構のメンバーを確認してみた。ほぼ、中高年の社会的地位のある男性で占められていた。理事長以下理事まで総勢25名中女性3名、女医は京大腎内の教授1名のみであった。残る2人は医療安全と人権の団体の代表者であった。これでは女医のライフスタイルを理解した制度が出来るわけがない。
7月3日の女医ネット(https://www.joystyle.net/articles/453)に、女医の85.7%が専門医制度に反対しているという記事が載っていた。その中にこんな投稿があった。
・更新でも認定施設での常勤勤務が必須でライフイベントで時間の制約が多い女性医師にはますます両立が厳しい。
・(基本領域研修後)サブスペシャリティの専門医取得が必要になるのであれば、女性医師が出産や育児をしながらサブスペシャリティの専門医を取得するのは不可能に近い。
その通りだろう。
専門医の「質」の担保のために研修のハードルが高くなるならまだしも、機構がしたのは、研修を受けるハードルを上げたのである。出産して子育てしながらキャリアを積みたい女医に取っては絶望的な制度である。
この新専門医制度は未だ「質」の担保をしていない。学会に丸投げしている状況は今までと変わらない。循環型プログラム制による研修など、改悪されたと言ってよい。機構がどうしてもこの制度を推進したいというなら、各学会から出てきたものを検証し標準化して、機構の検証システムの構築が出来てから開始するのが筋である。これでは、機構に「質」のチェック出来る能力があるのか、私たちは検証する事さえ出来ない。
機構は何故来年度からの開始にこだわるのか。まだ準備が出来ていないのは明らかであり、一旦停止して、現場の人間、指導医や若手、女医を入れて軌道修正しなければいけない。その際は、古い手法を変えて、忙しい現場の人間が参加出来るよう、テレビ会議にして頂く事から始めて欲しい。
高齢者の、高齢者による、高齢者のための会議みたいなものはいい加減止めて頂きたい。
それでもこのまま強引に進めるというなら、機構の借金のために未来の専門医たちは売られたと言われても仕方ないであろう。
うちのクリニックにも女医先生お二人きてもらっていますが、どの医療現場でも女医さんが働きやすい環境をつくることは必須ですよね。この制度、本当にこのままでいくんでしょうか?・・・・・