在宅での医療についての考え方
あっという間に2月も半ばですね・・・・・
こんにちは、最近病院に退院時カンファレンスに参加するとよく「在宅ではどこまで病院でやっているこの・・・・・の医療処置ができるんですか?」って聞かれることがまだあります。えぇ、この時点で自分はこう思っています。<医療の位置づけをどう考えているんだろう>って・・・・
こういう発言をする医療職の考え方は、患者さんには病院で提供している医療が絶対必要だ!!→だから病院と同じレベルで医療を提供できないことは患者さんにとって不利益だ→だから在宅は無理じゃない?・・・・、となっていることが多いと思います。確かに在宅は病院と同じレベルの医療を完璧には提供できないでしょう・・・・、でも医療ってあくまで<その人を支援するためにある>のであって医療を提供することが目的となってはいけないと自分は考えています。
在宅での医療が不十分であっても患者さんが自宅で(最後まで)過ごしたいと希望するのであれば、それを可能とするために医療はどうあるべきか、そのメリットとデメリットを患者さんなり家族なりに話をし、納得してもらえるならばそれはそれでいいのではないかと考えていますが皆さんはどう考えますか?
在宅での医療に関しての考え方は全ては患者さん自身の自分の人生に対しての決断が優先されるのであってそこに医療職のバイアス(在宅では病院と同じ医療ができないから無理だよね・・・)があってはいけないと自分は思います。札幌全域で全ての患者さんが自分が望むように、過ごしたいところで自分の人生を過ごすことができるような体制ができるといいですね・・・・
患者さんの決断>医療処置 が当たり前になればいいですねー
さて本日の医療ニュースはこちら、MRICからです。たまに海外の医療状況を知るのもいいと思いますので紹介します。こんな形で色んな人の意見をきける時代って本当にいいですね・・・
MRICより http://medg.jp/mt/?p=7333
Vol.033 カンボジアで始まった日本式医療の現場より Sunrise Japan Hospital Phnom Penhからの報告(1)
医療ガバナンス学会 (2017年2月14日 06:00)
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この原稿はハフィントン・ポストからの転載です。
http://www.huffingtonpost.jp/rumiko-tsuboi/sunrise-japan-hospital-ph_b_14565936.html
Sunrise Japan Hospital Phnom Penh
坪井瑠美子
2017年2月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
私は現在カンボジアの首都、プノンペンに開院したSunrise Japan Hospital Phnom Penhで内科医として仕事をしています。当院は東京八王子市にある北原国際病院の関連企業、日揮株式会社、産業革新機構による合弁会社が設立した病院で、2016年10月に開院しました。
カンボジアは長く続いた内戦、医師や教師を含む知識階級の虐殺の影響で、1975年には487人いた医師が内戦直後には43人にまで激減しました。
その後、経済は著しく発展してきていますが医療の発展は遅れ、いまだにカンボジア国民は自国の医療を信頼できず、毎年21万人もの人がタイ、ベトナム、シンガポールなど近隣諸国に受診に行くのが現状です。
Sunrise Japan Hospital Phnom Penhはカンボジア人に自国で信頼できる医療を提供すること、カンボジア人医療者を育成しカンボジアの医療レベルを上げることを目的とし、さらに日本の医療を輸出するという日本政府の成長戦略の一環も担っています。
私は外科医である夫とともにこの病院で仕事をしています。もともと途上国医療に興味のあった夫の影響で、私もカンボジアで働くことになりました。とはいえ、英語が得意なわけでもなく、医師としての経験が豊富なわけでもありません。熱帯特有の疾患についてはカンボジア人に教えてもらいながら勉強しています。
ただ、自分にもできることがあるという自負はあります。それは消化器内視鏡検査、治療です。私はカンボジアに来る直前まで仙台厚生病院消化器内科に所属し研鑽を積んでいました。仙台厚生病院消化器内科は東北でも有数の内視鏡検査、治療件数を有し、若手医師でもたくさんの症例を経験することができます。
私自身、長南明道院長をはじめ、指導医の先生方から熱心なご指導をいただき、若輩者ではあるものの自分には内視鏡ができる、という自負を持ってカンボジアに来ることができました。
カンボジアにはもともと内視鏡検査、治療ができる病院がいくつかありますが、Sunrise Japan Hospital Phnom Penhには日本の最新式内視鏡と同様の設備があります。
ただ、患者にとって内視鏡のハードルは日本とは比較にならないほど高いです。健診は当然普及していませんし、内視鏡を受けるということが一般的ではありません。
そしてカンボジア人にとって値段が高いのも問題です。カンボジアには日本のような公的な保険制度がありません。個人で保険に入る人はごく少数でほとんどの患者が全額自己負担です。
上部消化管内視鏡検査は日本の一般的な病院で受けても全額負担だと2万円近く必要になりますが、平均的な月収が約100ドル~200ドル(1~2万円強)といわれるカンボジアで、それよりも高い検査を受けるのがいかに大変か、想像に難くありません。
一方で、病院も診療報酬制度ではないし寄付で成り立っている病院ではないので存続可能な経営をしていかなくてはなりません。それでもなるべく低価格で良質な医療を提供したいという思いから、検討を重ねて当初の価格設定から大幅に内視鏡検査の値段を下げました。実際に、胃炎、上部消化管出血、大腸ポリープなどの検査、治療を既に行っており、今後悪性腫瘍の発見にも貢献できると考えています。
しかしいかに検査が必要か、有用かを説明するのも苦労します。診察は日本人医師が英語で説明し、それをカンボジア人医師か看護師がクメール語という現地の言語に訳してくれます。患者の訴えはその逆の手順で私たちに伝わるので、まずここで時間がかかります。
また、国民性の違いかもしれませんが、カンボジア人患者はとても訴えが多いのが印象的です。症状が頭、胸、腹、足腰・・・と複数ある人も珍しくなく(診察の結果、明らかに一つの原因では説明つかず、複数の疾患を抱えています)、順番にそれぞれの病歴を聞くのに時間がかかります。
そして既に他国や自国の他病院を受診したが説明が納得できなかった、治療でよくならなかった、と訴え、表情からも基本的に病院を信頼していないという様子が見て取れます。
そのような患者達に私たちのことを信頼してもらうにはより一層丁寧な説明が必要で、また時間がかかります。その上で身体診察をし、鑑別診断と必要な検査を説明し、値段の説明をして了承が得られれば検査、治療・・・と進みますが、とにかく一筋縄ではいかない、というのが毎日の感想です。
それでも診察が終わるときに患者や家族が笑顔になって「オークンチュラン(ありがとう)」とカンボジア式の手を拝むように合わせて挨拶してくれると、日本の私たちの診療を受け入れてもらえた気がして嬉しくなります。
現在カンボジアには様々な国が経済的に協力し、海外の色々な企業が参入しています。病院も然りで、他国の病院も進出しています。その中でも日本という国、日本人はカンボジア人に信頼されているようです。
日本は以前からインフラ整備、遺跡修復などハード面だけでなく、内戦解決の協力、民主化に向けた選挙、法律作り、裁判などソフト面にも長い間協力してきました。日本にいる時はあまり海外に目を向けていなかったので意識していませんでしたが、海外の人から信頼されると自分が日本人であることを誇りに思うようになりました。
自分も微力ながらも日本人としてカンボジアの医療に貢献できればこれほど嬉しいことはありません。カンボジア人患者の問題や悩みを少しでも解決し、診療を通して今まで私が日本の医学部、病院で教わってきたことをカンボジア人医師やスタッフに惜しみなく伝えられたらと考えています。
これからたまった書類の整理頑張りまーす・・・