在宅医療におけるエビデンス②

訪問診療で患者さんみているとある程度の年齢となると気分障害はかなりの頻度でみられる印象があります。軽症の場合は当院で投薬することもありますが重度の場合は一度通院してもらってその後当院での継続診療となることとしています。いわゆる病診、もしくは診診連携ですね。

できれば非薬物療法やカウンセリングが主体となって改善すればいいのですがやはりそちらの治療に関しては在宅では難しい理由があります。ひとつは基本的に通院困難な人を対象としているため運動自体へのハードルがあること、もうひとつはカウンセリングもSWや診療所の看護師で行うことが診療報酬上評価されていないため継続的に行っていくことが困難なことでしょうか。

 

http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20150513_01_01.pdf より うつに対してのエビデンスです。

 

2.うつ病

【サマリー】
CQ1:在宅高齢者のうつの実情はどうなっているのか?
多くの要支援/要介護高齢者がうつ傾向を呈するが,その多くが未治療となっている(レベルⅣ).
CQ2:うつの存在は,在宅療養継続の障害となるか?
在宅療養におけるうつの存在は,施設入所に対する独立したリスク因子と考えられる(レベルⅣ).
CQ3:在宅高齢者のうつを診断,治療するメリットは?
高齢者にうつのスクリーニングを行い,必要患者に適切に治療・ケアの介入を行うことによって,自殺のリスクを低減させることが出来る可能性がある。(レベルⅣ).
CQ4:在宅高齢者のうつに対する多職種による包括的介入の効果は?
在宅訪問による精神科医・臨床心理士・ソーシャルワーカーによる包括的チーム医療介入によって,うつ高齢者のうつ,生活機能,QOL の改善を認める(レベルⅡ).
CQ5:在宅高齢者のうつを予防する方法は?
在宅高齢者において,社会的・心理的・理学的な非薬物療法が,うつ症状の発症に対して抑制的に作用する(レベルⅠ).

【本文】
在宅要支援・要介護認定高齢者の多くが「うつ」を発症する.高齢者うつのスクリーニングとしては,GDS(Geriatric Depression Scale)が用いられる.簡便な質問紙法の検査で,5 点以上でうつ傾向,10 点以上でうつ状態と判定される.

本邦の報告においても,要支援・要介護認定高齢者の 50~75%がうつ傾向を示している 1),2) .その中でも要介護の高齢者においては,73%がうつ状態を呈し,要支援者に比べて有意に高いうつ傾向を呈することが報告されている 1) .また,本邦において要介護認定者の在宅高齢者のうち,GDS において10 点以上である頻度が 23%であったという報告もあり,在宅高齢者において,うつ傾向,うつ状態は高頻度であると考えられている 2) .一方,うつを呈した在宅高齢者の多くが評価を受けておらず,未
治療のままとなっている 1),2) .中には,自殺につながる例も存在する.うつ病と認知症はしばしば同様の症状を呈するため混同されるが,うつ病は「仮面認知症」として治療可能な認知障害の原因ともなり得るため,その診断は高齢者の QOL・ADL 向上に重要であると考えられる.実際に、在宅高齢者におけるうつの存在は、施設入所の独立したリスク因子と報告されている 3) 。

そのため,在宅高齢者にうつのスクリーニングを行うことが必要であり,うつ傾向・うつ状態の早期発見に努める事が望まれる.早期発見によって,早い段階でうつから脱却することができるだけでなく,自殺の予防,仮面認知症の治療,二次的な身体合併症としての廃用症候群の予防につながり,高齢者の心身の健康を保つことができる 4)

うつ傾向・うつ状態と診断された際には,薬物療法と非薬物療法による早期の介入が望ましい.薬物療法に関しては,SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors; 選択的セロトニン再取り込み阻害薬), SNRI(Serotonin and Norepinephrine Reuptake Inhibitors; セロトニン・ノルアドレナ
リン再取り込み阻害薬), NaSSA(Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant; ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)などの抗うつ薬が用いられる.一方で,高齢者においては,背景因子に社会的・心理的要因が潜在している事も多く,非薬物療法による治療効
果が期待される.医師・臨床心理士・ソーシャルワーカーなどがチームになって,患者のうつの器質的・心理的・社会的要因を包括的に評価し,カウンセリング・生活環境調整・介護サービス調整などの介入によって,在宅高齢者のうつ,生活機能,QOL の改善を認めることができる.

また,在宅高齢者は,その身体的・精神的・社会的な脆弱性より,うつの高リスクを有していると考えられる.そのような高齢者にとっては,うつの発症以前から,発現の危険性を評価し,発症予防を行うことが重要と考えられる.実際に,臨床心理士が定期的に訪問し,社会的・心理的・理学的な
評価を行い,必要に応じてケア介入を行う事により,将来的なうつの発症を予防する事が示されている 4)-6) .これらの方法は,効果的かつ,安全で,また費用対効果の高いうつ予防法と考えられ,今後積極的な運用が推奨される.