救急車を呼んだ、その先で・・・【救急救命処置、院外心停止でのアドレナリン投与容認へ 医師の包括指示で 厚労省検討会が了承】
こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

今日の気になったニュースはこちらです。10月7日のCB NEWSさんより↓
救急救命処置、院外心停止でのアドレナリン投与容認へ 医師の包括指示で 厚労省検討会が了承
厚生労働省が、病院の外で心停止した患者さんに救急救命士がアドレナリンを投与することを医師の「包括指示」のもとで認める案を検討会に示し、了承されたというニュース。
事後検証の体制が整ったメディカルコントロール協議会のある都道府県から、順次実施できるようになるとのことです。
これまでアドレナリン投与は「特定行為」として、その場で医師から具体的な指示を受けて行うものでした。今後は、あらかじめ決められたプロトコルに沿って、より早く投与できるようになるわけです。
救急医療の側から見れば、間違いなく前進です。心停止からアドレナリン投与までの時間が短いほど、心拍が再開する可能性は高まるとされています。突然倒れた働き盛りの方、スポーツ中の心停止、こういうケースで助けるべき命を助けることができるのは本当に喜ばしいことだと思います(^^♪
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ただ同時に在宅医として真っ先に頭に浮かんだのは、まったく別の場面でした。
在宅で看取ると決めていたのに、いざその時、ご家族が慌てて119番してしまったら??
これは今まで相当数の在宅看取りをしてきた経験から言っても絶対にない、とはいえない事象です。正直に言うと、毎年何度か経験しています。
何か月もかけて、ご本人・ご家族と「最期は家で、穏やかに」と話し合ってきた。ACP=人生会議を重ねてきた。
でも、夜中に呼吸が変わって、顔色が変わって、目の前で大切な人が息をしなくなる・・・。その瞬間に頭が真っ白になって、手が勝手に119を押してしまう。
これは避難されるべきことでしょうか?いいえ、人としてあり得ることです。 予想されうる反応で、誰も責められることではないですよね。
でも、救急隊が到着すれば、心肺停止の方にはまず心肺蘇生が始まる可能性がある・・・胸骨圧迫、気道確保、そして今回のニュースで、アドレナリン投与もより早く行われるようになっていく。救急の蘇生が強化されるほど、「望んでいなかった蘇生」が、より早く、より確実に始まってしまう可能性もある・・・難しい問題ですね。
札幌市も「心肺蘇生を望まない方への対応ルール」を準備中です!!
実はこの問題、札幌市消防局も真剣に向き合っています。今年の5月から6月にかけて、「救急現場における心肺蘇生を望まない傷病者への対応プロトコル(案)」のパブリックコメントが行われました。
https://www.city.sapporo.jp/shobo/kyukyu/publiccomment/documents/dnar_summary.pdf
案の中身をざっくりまとめると、こんな感じです。
① 対象は、人生の最終段階にあって自宅や施設で医療・ケアを受けていて、蘇生を望まない意思について本人(または本人の意向をよく知る家族)とかかりつけ医が事前に話し合って合意している方
② 救急隊は到着したら、まず心肺蘇生を始める(意思の確認を待たずに)
③ ご家族から「蘇生を望まない」と申し出があれば、救急隊がかかりつけ医に連絡する
④ 蘇生を中止するのは、かかりつけ医から具体的な中止の指示があったときだけ(救急隊が独自に判断して中止することはない)
⑤ 救急隊が連絡を始めてから約10分以内にかかりつけ医とつながらない場合、かかりつけ医が約12時間以内に往診できない場合、蘇生を望むご家族がいる場合などは、通常どおり蘇生を続けて搬送する
令和8年度中に策定し、研修や周知を経て運用を始める予定とされています。パブコメ後の最新状況は、札幌市の発表をご確認くださいね~
今回の記事と合わせて考えると、ここで大事なのは③と⑤かなと今井は思っています。
つまり、
「かかりつけ医と事前に話し合っていたかどうか」
「その時にかかりつけ医とすぐ連絡がつくかどうか」
で、その後の流れが大きく変わるということです。ACPが「家族の心の中」にあるだけでは足りず、かかりつけ医と共有され、救急隊につながる形になっていて初めて、ご本人の意思が守られるわけです。
皆さんそんなかかりつけ医、もっていますか??
もう一つの大きな動き、4学会合同ガイドライン!!
そしてもう一つ。9月28日に、日本集中治療医学会・日本救急医学会・日本循環器学会・日本緩和医療学会の4学会が、「救急・集中治療における生命維持治療の終了/差し控えに関する4学会合同ガイドライン」を公表しました。2014年に出た3学会のガイドライン以来の、大きな改訂です。
https://www.jaam.jp/WWLSTGL/explain.pdf
9月29日のブログでも取り上げました↓
医療者なら必ず一読しておくべきでしょう【救急・集中治療における生命維持治療の終了/差し控えに関する4学会合同ガイドライン】
上記について改めて言及すると今井が特に大事だと思ったポイントは以下3つ↓
① あえて「終末期」を定義しない
旧ガイドラインのように「救命の見込みがない時期」と線を引くと、かえって望まない治療が続いてしまうおそれがある。だから定義をせず、「生命維持治療をやめる・控えることを考えるときに、何を話し合うべきか」を示す形に変わりました。
② 一度始めた治療でも、やめることができる
「やめられないから始めない」という事態を避けるために、始めた治療をやめられることの大切さがはっきり書かれています。
③ 医療・ケアチームでの倫理的な検討と、患者さん・ご家族との共同意思決定(SDM)
厚労省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に沿って、医療者だけで決めず、ご本人の意思(話せないときは推定意思)を中心に話し合うプロセスが示されています。さらに、治療をやめたあとの緩和ケアについても「別編」で具体的に書かれています。
これ、在宅医の立場からすると本当に色々考えさせられますね。
なぜなら、慌ててご家族が119番して蘇生処置→病院に運ばれ、人工呼吸器がついてしまったとしても、「もう取り返しがつかない」わけではないということだからです。病院の救急・集中治療の現場でも、ご本人がどう生きたいと思っていたかを手がかりに治療を見直す道筋がガイドラインとして示されたのですから。
こうなってくると、こういう資料を読むと、本当に事前にどう準備しておくかが大事になりますよね。
今井としては・・・在宅医療は当然ですが、かかりつけ医として活動したいと考えている医療機関としては、独自の”ACP意思表示&緊急連絡先カード(医師の連絡先を書いた)”ものを用意すべきなのかな、なんてことを考えています。患者さん家族のためにはそれが医療機関には求められていますよね。外来の診察券、時代にキャッチアップして作り替えるべか・・・考えていきたいと思います。
ということで救急隊の記事から自分達のことを考えさせられるきっかけとなりました(^^♪皆さんは上記を読んで何を考えたでしょうか?よければ教えてくださいね。
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