公開日:2026年09月21日

岸和田徳洲会のこの事件、どう見て何を考えるべきか【暴れる入院患者に劇薬プロポフォールを無断投与、岸和田徳洲会病院が院長名で謝罪文掲載】

こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

連休中も医療系のニュースを斜め読みしていますが、ちょっとだけ???となった記事見つけたのでシェアします。9月20日の読売新聞オンラインさんの記事です。以下どうぞ↓

暴れる入院患者に劇薬プロポフォールを無断投与、岸和田徳洲会病院が院長名で謝罪文掲載

「大阪府の岸和田徳洲会病院で7月、男性看護師が入院患者に劇薬の鎮静剤「プロポフォール」を医師の指示なしに投与した問題で、同病院は19日、ホームページで、 畔柳くろやなぎ 智司院長名の謝罪文を掲載した。

 謝罪文では、事案を説明した上で、「患者様ならびにご家族の皆様には、多大なるご心配とご迷惑をおかけしたことを、心よりお  び申し上げます」「本事案を重く受け止め、医療安全の確保を最優先に、再発防止と信頼回復に努めてまいります」などとしている。

 同病院によると、男性看護師は7月7日未明、集中治療室で、別の入院患者に点滴で投与されていたプロポフォール2~3ミリ・リットルをチューブの栓から注射器で抜き取り、隣のベッドにいた80歳代の男性患者の静脈に1ミリ・リットル投与した。命に別条はなかった。男性看護師は同病院の調査に「暴れる患者を落ち着かせるためだった」と説明したという。

 府岸和田保健所は今月8日、同病院を行政指導した。同病院は14日付で男性看護師を懲戒解雇した。」

 

ということで以下今井の感想です↓

これは「一人の看護師の問題」でしょうか??

こういう事案が起きると、「問題のある看護師がいた」「個人の倫理観の欠如」という文脈で語られがちです。

でも今井はそう見るべきではないかなとおもていますよ(^^♪

もちろん、医師の指示なしに劇薬を無断投与したことは、絶対に許されない行為です。それは大前提。

ただ・・・こういう事案が起きたとき、経営者・管理者として問うべきは「なぜ現場の看護師が、そういう判断をせざるを得ない状況に至ったのか」という構造的な問いです。

これは個人の問題ではなく、組織のガバナンスの問題として見るべきだと今井は思っています。

徳洲会の急拡大と内部統治の問題

徳洲会グループは近年、M&A(合併・買収)を繰り返して急速に規模を拡大しています。

規模が大きくなることは経営的には悪いことではないかなと。ただ急拡大には、必ずついて回る問題がある。それは

内部に管理職・リーダー人材が育つ速度が、組織の拡大速度に追いつかない

です。

新しく傘下に入った病院に、十分な管理体制・教育体制・現場支援の仕組みが整備されないまま、人員だけが配置される。その結果、現場の各部署でじわじわと「管理の劣化」が起きる。当然それまでいた管理職の人や事務系のスタッフで離職する人もいるでしょう。厳しい運営ノルマをこなしつつその対応をグループとしてどうするのか・・・・かなり難しい問題ですよね。

「暴れる患者をどうするか」という判断を、現場の看護師が一人で抱えなければならない状況——そこには、適切な対応プロトコルがなかったのか、夜間の人員体制が薄すぎたのか、相談できる上司・医師がいなかったのか——こういった「組織の問題」が透けて見えます。

今回の事案は、その「つけ」が出た一例だと今井は見ています。

謝罪文の「再発防止に努めてまいります」では足りない

院長名の謝罪文には「医療安全の確保を最優先に、再発防止と信頼回復に努めてまいります」とあります。

でも今井が気になるのは——「再発防止」のために、何を変えるのか、という具体性です。

懲戒解雇して「問題のある個人を排除した」だけでは、何も変わりません。次の現場で、また別の誰かが同じ状況に追い込まれる可能性がある。

本当の意味での再発防止とは——夜間の人員体制の見直し、現場が「困ったときに相談できる」仕組みの整備、管理職・リーダーの育成投資、そして「現場の声が経営に届くか」というガバナンスの問題に向き合うことです。

果たして急拡大中の徳洲会グループさんにそれができるんでしょうか??

令和の時代に、徳洲会の価値観は通じるの?

もう一つ、今井がちょっとだけ気になっていることを正直に書きます(^^♪

徳洲会グループは「24時間365日断らない医療」という強烈な理念で成長してきた組織です。その理念は素晴らしい。でもその理念を支えるためには、現場のスタッフへの相応の負荷がかかる。

昭和~平成は「使命感で乗り越える」という文化が機能していた時代があったでしょう。

でも令和の今は違います。

働き方改革、ハラスメント対策、スタッフの権利意識の向上、SNSによる情報拡散——「使命感だけで頑張れ」という組織文化は、もはや維持できない時代になりました。

急拡大しながら、かつての価値観をそのまま持ち込もうとすると——現場が疲弊し、管理が劣化し、今回のような事案が起きる。

徳洲会グループが今後、内部のガバナンスをどう立て直すのか??「断らない医療」という理念を、令和の時代に合った形でどう実装し直すのか——この事案からはそこまでを考えるべきかなと今井は思いますよ。

当法人として学ぶこと

&今回の事案を他人事として見るつもりはありません。

規模が違っても、

「組織が拡大するスピードと、管理体制が整備されるスピードのバランス」

という問題は、当法人にも同じように存在します。

7月から新体制を組み、下倉・中山両理事が組織の内部改革に取り組んでいるのも、まさにこの問題意識から、です。

現場の声が経営に届くのか?管理職が育っているか?スタッフが「困ったときに相談できる」環境があるか?これらを継続してチェックし続けることこそが同じ事態を防ぐ唯一の方法だと思っています。

岸和田の事案、「一人の問題看護師がいた」で済ますのではなく、徳洲会の組織ガバナンスや今後の方針について考える、そして最終的には自法人についても想いをはせる、まではすべきことでしょうね(^^♪

ということで皆さんはこの事案、どうみていますか?

 

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