公開日:2026年09月16日

組織の年齢構成が医療の質を決める??——公立病院16年分のデータが示す真実【日本の公立病院における効率性と全要素生産性の決定要因に関する実証分析】

こんにちは、札幌のかかりつけ医&病棟医&在宅医@今井です

今日は1医療機関経営者として、かなり刺さった研究の資料を紹介したいと思います。

神奈川大学・石川貴幸先生らにより最近公開された

「日本の公立病院における効率性と全要素生産性の決定要因に関する実証分析」(経済産業研究所・2026年)

です。公立病院のデータを使った研究ですが、在宅医療機関の経営者として読んでも、学ぶことが非常に多かったです(^^♪

興味ある方は上記を読んでみてください。以下今井の感想↓

研究のまとめ

2007年〜2023年の全国公立病院データを用いて、「何が病院の生産性を高めるか」を実証分析した研究です。

主要な発見は3つです。

過剰な病床数は効率性を下げる——稼働率が低い資本を抱えることがマイナスに働く

適度な競争がある方が、病院の効率性は高い——単純な統廃合・集約化は逆効果になりうる。補助金への過度な依存は経営規律を弛緩させる

医師・看護師の平均年齢に「逆U字」の関係がある——全要素生産性(TFP)は医師45歳、看護師31歳付近でピークに達する

今井が一番刺さった発見——世代間バランスの話

3つの発見の中で、今井が経営者として最も重く受け止めたのは3つ目です。

「医師45歳・看護師31歳付近でTFPが最大化される」

なぜこの年齢でピークになるのか。研究はこう説明しています。

夜勤など肉体的負荷の高い実働を担う「20代の若手層」と、経験豊富で現場のリーダーとして機能する「30代以降の中堅・ベテラン層」が最もバランス良く配置されたとき、組織全体の生産性が最大化される——というものです。

つまり問題は「個人のスキル」ではなく(当然大前提としてそれはマストですが(^^♪)「組織全体の年齢構成」だということです。

これは公立病院だけの話ではない

今井がこの研究を読んで感じたのは、「これは公立病院を超えた、組織マネジメントの真理だよな」ってことです。

若手しかいない組織は、実働力はあっても経験・判断力が不足する。ベテランしかいない組織は、知識はあっても体力的な負荷に対応しにくい。

在宅医療の現場でも全く同じかなと。

訪問診療・訪問看護の現場は、体力的な負荷が高い。炎天下の移動、狭い室内での処置、緊急往診——若い体力が必要な場面は多い。一方で「この患者さん、今日は何かいつもと違う」という気づき、家族との複雑なコミュニケーション、終末期の判断——これらは経験を積んだ中堅・ベテランの力が必要な場面です。

若手とベテランが補い合う構造——これが在宅医療組織の理想の形だと、この研究資料を読んで改めて確信しましたよ。

当法人の現状を振り返ると

率直に言うと、当法人でも年齢構成のバランスについてはまだ課題があります。

採用は継続して行っていますが「若手を増やす」だけでなく「世代間のバランスを意識して採用・育成する」という視点が、より明確に必要だと感じています。

特に看護師については「生産性がピークになる30代前半」が、育児・出産というライフイベントと重なる時期でもあります。この時期の人材が離職しないための柔軟な勤務体制・復帰支援——これは単なる福利厚生ではなく、組織の生産性を守るための戦略的投資だということが、この研究でデータとして示されています。

今回改めて問題意識をもち、両理事と一緒により具体的に取り組んでいきたいテーマだなと再認識しました。

もう一つ気になった発見——競争と補助金の話

この研究には、もう一つ重要な発見があります。

「地域の病院を単に集約・独占化するのではなく、適度な競争が存在する方が病院の効率性は高まる」

「過度な補助金への依存は経営規律を弛緩させる」

在宅医療機関に置き換えると——

「在宅医療機関が地域にいくつかあって、切磋琢磨している方が、医療の質は上がる」

「加算・補助金に依存しすぎた経営は、いざ制度が変わったときに脆い」

これも今井が常に感じていることと一致します。当法人の下半期の戦略として「内部を強くする・バックヤードで勝つ」という方向性を打ち出していますが、まさにこの研究が示す「経営規律を高める」という方向性と重なります。

まとめでーす。1医療機関経営者が学んだこと

この研究から、在宅医療機関の経営者として取り出せるポイントをまとめると——

世代間バランスを意識した採用・育成計画を持つ
若手だけでも、ベテランだけでも組織の生産性は最大化しない

30代前半の中核人材の離職を防ぐ仕組みを作る
特に看護師においては、育児・出産期との重なりを意識した支援が生産性投資になる

補助金・加算依存から脱却する経営基盤を作る
制度変化に強い組織になるために(まぁそもそも民間は関係薄いですが、補助金あてにしちゃダメですよね(^^♪)

「余裕」を持った体制を保つ
過度な効率化は緊急時・非常時に脆弱になる——サージキャパシティの話とも重なります

公立病院の研究ですが、学べることは在宅医療機関にとっても非常に多かった・・・経営は数字だけではない。でも数字で裏付けられた「真理」は、どんな組織にも当てはまる——そう考えさせられた資料でした。

皆さんのご感想はいかがですか?よければ教えてくださいね!

 

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