資料提供:日本・韓国・台湾の終末期の治療中止に 関する法政策の比較 -超高齢社会における議論の構築に向けて-
こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医&病棟医@今井です
日本医師会総合政策研究所さんからとても興味深い資料が公開されていましたので皆さんとシェアします。
日本・韓国・台湾の終末期の治療中止に 関する法政策の比較 -超高齢社会における議論の構築に向けて-
PDFはこちらです。
ポイントの文章は是非一読してもらいたいのでここに抜粋しますね。(今井が気になった部分は赤文字にしています。)
1. 社会状況と社会保障制度
終末期の治療中止に関する法政策に関連する社会状況について、日本・韓国・台湾では、1. 社会の高齢化が進んでいる、2. 認知症患者が増えている、3. 高齢者の相対的貧困率がほかの年齢層に比べて高い、4. 日本・韓国を中心に、高齢者の単身世帯が増えつつある、といった特徴がある
日本・韓国・台湾の基本的な社会保障関連政策について、社会保険方式の医療・年金制度を有しているという共通点がある一方で、介護制度については、社会保険方式をとる日本・韓国に対し、台湾は税方式をとっているという相違点がある。さらに、家族介護者に対する現金給付を行う韓国・台湾に対し、日本は家族介護者への現金給付を導入していないという点も異なる
2. 法政策の比較
日本
終末期の治療中止に関する法政策を比較すると、法制化した韓国と台湾に対し、日本は厚生労働省のガイドラインという行政ガイドラインを有している
日本の厚労省ガイドラインは、治療中止等の具体的な要件や手続きの方法を明確にしたのではなく、意思決定のプロセスを明記したガイドラインである。その主な特徴は、本人による意思決定を原則とし、意思決定過程における家族の関与を明確化し、関係者間の合意形成を目指したアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の取り組みを重視していることである
臨床現場においては、ACP 促進を目的に、厚労省のプロセスガイドラインに基づく意思決定支援の実践として、医療機関等の多職種チームを対象にした患者の意思決定支援のための教育プログラム「E-FIELD(Education For Implementing End-of-Life Discussion)」が厚労省の委託事業として行われている
韓国
韓国の「延命医療決定法」は、患者の自己決定権を明記し、ホスピス・緩和医療と延命医療、延命医療の差し控え・中止の決定を規定しているという特徴がある
延命医療決定法はまた、ホスピス緩和医療が考慮される「末期」と、延命医療の差し控え・中止が考慮される「終末期(臨終過程)」を区別している
延命医療の差し控え・中止の手続きは、2 人の医師の診断が前提で、患者の意思が確認できる場合とできない場合に分けて進められる
患者の事前の意思表示がなく、意思能力もない場合、患者の意思を推定できる場合は家族 2 人以上の一致する陳述があれば、そして、患者の意思を推定できない場合は患者家族全員の合意があれば、治療の差し控え・中止が可能となる
韓国では、国立延命医療管理機関が、延命医療計画書や事前延命医療意向書を登録するデータベースの構築や管理を担い、延命医療の差し控えや中止の決定とその履行状況に対する調査研究や情報収集、関連統計の作成等を行っている
台湾
台湾は、2000 年施行の安寧緩和医療法と、2019 年施行の患者自主権利法を有している
安寧緩和医療法は、安寧緩和医療の受け入れ、あるいは、延命治療の選択の意思とその内容、場合によっては医療代理人の指名を明記した事前指示書によって、治療の差し控え・中止が可能としている。事前指示書がない場合は、家族一人の同意によって、事前指示書も家族もない場合は、医師によるコンサルテーションを経たうえで差し控え・中止ができる
患者自主権利法の主な特徴は、患者の自律性の尊重と患者の権利を保護することを前提に、差し控えや中止の対象者と対象となる医療措置が拡大されたこと、アドバンス・ケア・プランニングを経て事前指示書を作成することである
人工栄養・水分補給措置、生命維持治療、その他の医療ケアを差し控え・中止できるのは、終末期の患者だけでなく、不可逆的な昏睡状態にある、あるいは、遷延性意識障害にある、あるいは、重度の認知症を患っている、あるいは、その他耐えがたい苦痛を伴う治癒不可能な疾患で、代替治療がない疾患を患っている、患者である
中央所轄官庁(衛生福利部)が事前指示書のデータベースを管理している
終わりに
超高齢社会における意思決定に関する課題として、第一に、社会状況を概観した結果、終末期における治療中止等の意思決定を支えてくれる家族がいることを前提する意思決定には限界がある、という点がある。第二に、終末期の治療中止等の意思決定に影響を及ぼす可能性のある要因を検討する必要がある、という点がある
高齢者関連の社会福祉政策のみならず、社会保障の根幹をなす医療・年金・介護制度が個人の人生に与える影響が大きいため、社会状況に対応した改善が必要である。社会保障制度とその周囲の関連法政策が対象者の置かれた実態を適切に把握し、対象者と制度を円滑に結びつける支援が必要である
終末期の治療中止等の意思決定に関しては、意思決定支援する家族が必ずいることを前提するのではなく、家族がいない人が一定数いることを前提にした支援も必要である。本ワーキングペーパーで述べたように、国レベルの政策を講じるために諸外国の取り組みを十分に検討し、具体的な対応策を検討する必要がある
2040年、またはそれ以降を見据えて家族がいない人でもその人らしく最期を迎えるためにどう準備をしていくか、治療に関しての意思決定について国レベルで検討、現状から変化しないとダメですよね・・・示唆のある、とても現場の感覚を理解しているいい資料かと思われました。PDFの資料の中身も少し長いですが、海外の情報を比較してみたいと思う方は是非一読してみてください。
医師会、こういういい資料も公開しているしいい仕事しているのに、高額療養費制度に関してはだんまりってよくないでしょ・・・・是非声出してもらいたいなと思いますよ。
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