公開日:2022年03月04日

資料提供~各国の診療報酬制度ー支払い方式を中心に~

こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医@今井です。

 

2022年度の診療報酬改定が終了しましたが、医療制度の根幹ってやっぱり支払い方法がどうなるか、かなと個人的には感じました。人頭払いか出来高払いかP4Pか・・・今後日本がどうなっていくのか予想するためにも各国の資料参考がてらさがしてみましたが、ちょうど国立国会図書館に3月3日に公開されたいい資料がありましたので紹介します。興味ある人、自分以外にいるでしょうか!(^^)!

 

各国の診療報酬制度―支払い方式を中心に―

本文中の細かなところはさておき各国の状況の部分だけ抜き出します。今井が注目した部分は赤文字にしてますよ

1 英国

英国 31 では、その財源の大部分を租税とする国民保健サービ(National Health Service: NHS)の下で医療サービスが提供されている。医療サービスは、総合診療医(General Practitioner: GP)によるプライマリ・ケアと病院によるセカンダリ・ケアに分けられ 32 、住民はそれらを原則無料で受けることができる。こうした租税を中心とする財源を背景として、英国の診療報酬制度は、医療サービスへの対価というよりも、医療に関する予算をいかに効果的かつ効率的に配分するかという観点から設計されているといえる 33 。
プライマリ・ケアに対する診療報酬は、2004 年以降、包括報酬(Global Sum)、高度サービス報酬(Enhanced Service)及び成果報酬(Quality and Outcomes Framework: QOF)によってGP 診療所ごとに支払われている。包括報酬は、最も中心的な報酬であり、主として人頭払いに基づきつつ、登録住民に関するデータ 34 等を考慮して支払われる。高度サービス報酬は、時間外診療や小規模な手術等を対象とする高度サービスに対して、出来高払いにより支払われる 35 。
QOF は、臨床基準、公衆衛生及び質の改善という 3 領域 36 における基準を達成した場合に、P4Pという形で支払われる。セカンダリ・ケアに対する診療報酬は、診断群分類(Healthcare Resource Groups: HRG)に基づく 1 入院当たり包括払い(Payment by Results: PbR)を中心として支払われている。
また、医療の質を向上させるための枠組みとして、質と技術革新のためのコミッショニング(Commissioning for Quality and Innovation: CQUIN)及び最良実践価格(Best Practice Tariff:BPT)も導入されている。CQUIN は医療の質に関する全国目標及び地域目標の達成に応じた支払いであり、BPT は質や費用対効果が高い実践に報酬を支払う仕組みである 37 。
英国の医療制度については、2019 年の NHS 長期プランにおいて様々な改革が示されているが、なかでも診療報酬制度に対しては、地域の医療機関の連携を促進し、医療サービスの集約化や効率化を図るために、HRG ごとに定められた公定価格(National Tariff)に柔軟性を持たせることがその一つに挙げられている 38 。このプランの実現のためには、病院に対する診療報酬の支払いを、地域ごとの要因を反映したものとなるように、公定価格を固定された価格ではなく一定の算定方式として設定するという方向性が示されている 39 。

 

2 ドイツ

ドイツでは、国民の大半が加入する公的医療保険が中心となり、疾病金庫(Krankenkasse)と呼ばれる各種保険者による独立した管理運営が行われている 40 。医療提供体制においては、開業医による外来診療と病院による入院診療の機能区分が明確になされ、診療報酬制度もそれぞれにおいて異なる体系が採用されている。
外来診療に対する診療報酬は、各疾病金庫から各州の保険医協会に対して診療報酬総額が支払われ、さらに保険医協会から各保険医に対して診療報酬が支払われるという二段階の仕組みとなっている。各保険医協会に対する診療報酬総額は、被保険者の罹病率等を考慮した人頭払いを中心として算定される。他方、各保険医に対する診療報酬は、統一評価基準(Einheitlicher Bewertungsmaßstab: EBM)に定められた点数に基づき、家庭医と各専門医の区別に応じた包括払いで分配される 41 。
入院診療に対する診療報酬は、2003 年以降、診断群分類(Diagnosis Related Groups: DRG)に基づく 1 入院当たり包括払いが採用されている。DRG ごとの包括報酬のほかに、在院日数の上限・下限も定められ、上限を超えた場合は加算され、下限に満たない場合は減算される。なお、病院の財政では二元資金調達方式(duale Finanzierung)が採用され、投資的経費 42 は州政府の公費助成、経常的経費 43 は診療報酬によって賄われている。
ドイツの診療報酬制度に対する近年の改革としては、看護介護職員の支援策が挙げられる。従来、病院における看護介護職員の人件費は、上述のとおり疾病金庫からの DRG 包括報酬の対象とされてきた。ところが、州政府による投資的経費の助成が減少するに伴い、病院は投資的経費の捻出のために診療報酬からの資金を流用せざるを得ないこともあり、看護介護職員の人員削減を招く結果となった 44 。こうした背景から、2018 年の看護介護職員配置強化法 45 では、病院の診療報酬は DRG 包括報酬と看護介護職員人件費報酬 46 の二本立てとなり、看護介護職員の人件費は別個に予算が確保される形となった 47 。

 

3 フランス

フランスでは、人口の約 9 割をカバーする社会保障制度である一般制度(régime général)を主とする職域ごとの公的医療保険の下で、医療財政制度が構築されている 48 。医療提供体制においては、開業医による外来診療と病院による入院診療の機能が明確に区別される。一方、診療情報の共通化という観点から、2005 年には、医療行為共通分類(Classification Commune desActes Médicaux: CCAM)が導入され、両者に対する診療報酬の基準の統一化も進められている 49 。
外来診療に対する診療報酬は、全国医療保険金庫連合と医師組合との医療協約に基づいており、各医療行為の料金等を定めたその協約との関わり方によって、医師はセクター1 若しくはセクター2 に区分され 50 、それぞれ異なる形で診療報酬が支払われる。セクター1 の医師は、医療協約で定められた料金において出来高払いで支払われる一方、セクター2 の医師は、医療協約に拘束されることなく医療協約の料金以上の報酬を請求できる超過報酬請求権を有する 51 。入院診療に対する診療報酬は、2004 年以降、診断群分類(Groupe homogène de malades: GHM)に基づく 1 入院当たり包括払い(tarification à l’activité: T2A)によって支払われている。各
GHM には料金のほかに、在院日数の上限・下限も定められ、上限を超えた場合は加算され、下限に満たない場合は減算される。なお、病院の外来診療、また、入院中における高額な医薬品及び医療機器の使用については、出来高払いによって支払われる。
フランスの医療制度については、2018 年に大統領を始めとする連名で発表された「私の医療2022(Ma santé 2022)」において、その改革の方針が示された。なかでも診療報酬制度については、現行の T2A が急性疾患を主な対象とし、慢性疾患のケアに適していないことを踏まえ、糖尿病や慢性腎疾患を始めとする慢性疾患における病院の診療に対する定額報酬を創設することとされた 52 。これにより、特定の慢性疾患に関する病院の報酬は、基本的に診療する患者の人数に基づきつつ、年間の総額が支払われることとなった 53 。

 

4 米国

米国では、公的医療保険と民間医療保険の二つの仕組みによって医療財政制度が構成されている。公的医療保険では、高齢者等を対象とするメディケア及び低所得者を対象とするメディケイドが整備され、民間医療保険では、それ以外の住民を主な対象として医療保険の市場が形成されている。本節では、このうちメディケアの診療報酬制度を概説する。
メディケアは、65 歳以上の高齢者を主たる加入者として 54 、A から D までの 4 パートから構成されている。パート A は入院診療等、パート B は医師による診療等、パート C は認可された民間医療保険によるパート A 及びパート B 相当の医療サービス、パート D は外来の薬剤処方を給付対象とする。その加入・選択については、パート A は自動加入、それ以外のパートは任意とされている 55 。以下では、オリジナル・メディケアとも称されるパート A 及びパート Bについて、その支払い方式を説明する。
パート A は、入院診療、高度看護施設、ホスピス等が給付対象とされており、ここでは入院診療に対する診療報酬の支払い方式を説明する。入院診療に対しては、主として診断群分類(Medicare Severity-Diagnosis Related Group: MS-DRG)に基づく 1 入院当たり包括払いによって支払われ、他に様々な基準によって報酬の加算・減算がなされる。加算要素としては、例外的な症例、臨床研修の実施、低所得者に対する医療サービス、新技術の導入等が対象とされている 56 。また、医療の質に基づいて加算・減算を行うプログラムも各種用意され、再入院の割合及び院内感染・事故率に基づく減額、診療プロセスや治療の成果等の病院の実績を評価する加算が実施されている 57 。
パート B は、医師による診療(physician services)、在宅医療、予防医療等を給付対象としており、ここでは医師による診療に対する診療報酬の支払い方式を説明する。医師による診療に対しては、従来は出来高払い(Medicare Physician Fee Schedule payment)による算定であったが、2015 年の改革により、医療の質に基づく診療報酬として次の二つの方式が創設された。
第一に、MIPS(Merit-based Incentive Payment System)であり、同方式は従来の出来高払いに基づきつつも、実績を評価する 4 指標(診療の質、効率性、診療の改善活動、相互運用性 58 の促進)を評価した報酬の調整を行う 59 。第二に、APMs(Alternative Payment Models)であり、同方式は従来の出来高払いに代わる、医療サービスの供給量よりも質や効率性を重視する新しい支払い方式として、現在、特定の医療サービスや地域に限定した導入が進められている 60 。 メディケアの診療報酬制度については、先に述べた 2015 年の改革、すなわちメディケア・アクセス及び児童医療保険再授権法 61 が比較的大きな動向として挙げられる。連邦議会において超党派で成立した同法によって、パート B における上記 2 方式が導入されるとともに、従来の出来高払いにおいて採用されてきた、医療費支出の増減等を考慮して診療報酬の改定率を定める持続可能成長率(Sustainable Growth Rate: SGR)方式の廃止も行われた 62 。

 

 

いかがでしょうか?各国の支払い状況が簡素に、かつ最近の改定状況までまとまっているので現状を把握するにはとてもいい資料だと思いましたよ。

個人的にはシステムとして包括払いにせよ出来高払いにせよ、完全なシステムなんてものは存在しないので、システムを組み合わせてその国その国にあった、時代に即したシステムに変更していくことが重要なのだと再認識しました。翻って日本は少子高齢化、社会構造の変化、ポストコロナの影響などもありますが、システムとしての社会保障制度はそう大きくは変化していません。今後の社会変化にシステムを最適化するためにも、どこかの段階で支払い方法に関しては根本的な変化が必要なのではないか、そんな感想を自分は持ちましたよ。皆さんはこの資料を読んで何か考えることはありましたか??

 

 

 

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