公開日:2019年04月29日

平成ラスト15年の医療、社会保障の経過を振り返っての雑感

こんにちは、札幌の在宅医@今井です。

 

早いもので平成の時代も残すところあとほんの数日となりました。時間が経過するのは本当に早いですね。

元号が変わるだけで何も変わらないですよね?って思うことなかれ・・・元号が変わるということは、長い時間軸の中で考えると大きな節目となることは間違いないと個人的には考えています。

これから先の令和の時代の社会保障制度はどうなるのか、皆さんやはり興味はあると思います。それを考えるためどうすべきか?個人的にはそのためにも平成の時代の社会保障制度がどうだったのか、その振り返りは必須かなと思います。

特に自分が医者として働き始めた平成15年以降(16年だったかな?)は、当事者として色々経験することができたので、より詳しく述べることができるかと思います。なので今回は平成ラスト15年の社会保障状況がどうだったのか、簡単に振り返ってみたいと思います。

 

ということでその前に決めることは、どのような視点から振り返るべきなのか・・・患者からみた、医師からみた、看護師からみた、もちろん政治家からみた社会保障制度の変遷については立場が変われば見え方、風景も大きく変わります。

自分の立場としてはやはり在宅医の立場から振り返る、というのが一番しっくりくる&希少なのかなと思いますので、今回の振り返りはあくまで1在宅医の立場から、ということをご了承ください。(人によっては全く意見違うかも知れませんがそれも立場の違いからくるものかも知れませんからあしからず・・・・・)

 

1患者層が劇的に変化

これは医療者としてはすごく感じます。医師になりたての頃は入院患者さんの理由や患者層が多様であったのに比べ、最近は極端に高齢者が多くなり、対応も認知症がらみの症例が増えてきています。

外来患者さんに関しても複合的な問題を抱えた高齢者が増加しており、高齢化の波を確実に医療現場でも感じることができます。

新しい元号の時代になってもこの流れは大きく変わることはないでしょうね。

2求められる医療の変化

1に伴い医療者に求められる医療内容も大きく変化しています。キュアを志向した急性期医療から、ケアを目的とした慢性期医療へ医療の主体が変化しつつあります。

認知症への対応、がん患者さんへの緩和ケア、リハビリによる生活支援などなど・・・・医療者に求められている医療が、より生活に密着した実践的な医療となってきています。

決して高度、先端医療を否定する訳ではないですが、マスとして社会を見た場合確実に医療へのニーズが変化してきているのは明確ではないでしょうか?

3変化に対応できていない医療者

上記のように高齢化の進展とそれに伴う医療ニーズの変化に対し医療者はどうこたえているのか?在宅医の立場からみた場合、やはり現実の医療ニーズと提供されている医療の差が広がりこそすれ埋まってきているとは思えないことが多いですね。

慢性期の医療を知らない新人医師や看護師、緩和ケアを知ってはいるけれど実践しない医療者、病院間の不十分な連携で置き去りにされる患者さん、認知症患者さんへの通り一遍等の対応、担い手が増えない在宅医療、かかりつけ医となる医師や診療所の少なさなどなど・・・・・病院のみでなく診療所レベルでももっと根本から変わらないといけない点が多数あるにも関わらず、患者さんの求めの変化に対応できていないのが現実ではないでしょうか。

4深刻な医療、介護職の人員不足

これは現場では切実になりつつあるのではないでしょうか?平成15年頃にはまだそこまで大きな問題とはなっていなかったと思いますが、平成30年の現在、医療機関や介護事業所の運営上一番の問題となっているのは「担い手を見つけられるのか」という点になってきています。

魅力のない職場、地域には人がこなくなりつつあります。この流れも医療介護の需給関係をみると基本的には改善することはないでしょう。

経営者としてはこの流れを認識しつつも、どのように担い手を育成するのか、その事業所に来てもらうのかというのを強烈に意識するようになりつつあります。これを無視する事業所はどんなに過去の栄光があっても、事業体が大きくてもこれからはつぶれることになるでしょう。

5普及はあまりしなかった在宅医療、在宅緩和ケア

当事者としてはかなり残念ですが、この事実からは目を背けることはできませんね。平成ラスト15年、自分が在宅に飛び込んでから8年弱ですが、もっと大きく在宅医療をとりまく状況は変化すると考えていましたが遅々として変化しませんね。

要因としては諸々あるのでここで述べることは難しいのですが、この普及のしなささはどう考えても社会情勢と対比しつつ考えると異常です。必ずどこかで堰を切ったように在宅医療を取り巻いての問題が多発していくことでしょう。

札幌市内だけでは何とか良質な在宅医療をチームで提供できるように診療所を整えていきたいと考えていましたが、いかんせんまだ設立して8年目の当法人・・・・もっとスピードあげて普及のために努力しなければ地域の役には立てないですね・・・・・頑張らないと!

6介護保険制度の混乱

介護保険の制度ですが、サ高住への本格的な患者さん誘導が起きたときくらいから”保険制度”として混乱しているように思えます。

その混乱の中心にあるのは”あくまで利益中心で介護保険事業を運営する事業者”なのは間違いありません。本当に何のための介護保険の制度なのか、誰のための介護保険制度なのか、無理、無駄、無益なサービス利用がまかり通ってしまっているのが平成の時代の介護保険制度だったのではないでしょうか。

この反動は必ず次の令和の時代にやってくると個人的には確信しています。介護保険の利用範囲の縮小、負担費用の増加、事業者の多数の倒産と合併などなど・・・・利用者本位のサービスを忘れた介護保険制度の混乱はこの時代の象徴でもあるのではないでしょうか?

 

と言う訳で平成最後の15年の雑感を自分なりにまとめてみました。これらを踏まえた上で新しい時代がどうなるのか、どう対応すべきかを個々人がきちんと考えていくことが重要かと思いますが皆さんはどう考えますか?よければご意見くださいね。

 

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