公開日:2018年03月24日

半年の闘病、10日間のみの緩和ケア~治療から在宅緩和ケアへのシームレスな連携のハードルは高い。

こんにちは、札幌の在宅緩和ケア医@今井です。

ここ数日でお看取りとなった患者さんですが診断から治療看取りまでわずか半年の経過でした。その間緩和ケアが行われたのは当院に紹介にされた後のわずか10日・・・・それでも10日間のケアで患者さんからも「次に診察に来るの楽しみにまっていますね」「先生にあえてよかった」との言葉を頂けるのは医師としては有り難い限りです。家族の方からも「この診療所選んで良かったです」と言ってもらえたのも素直にうれしいですね。

ただ緩和ケアが実質たった10日のみ・・・・もっとしてあげたいこと、時間があればできたことがたくさんあっただけに残念でなりません。

やっぱりこういう患者さんをみると特定機能病院や大病院での治療と並行しての緩和ケアって緩和ケアという言葉はあれども実態はどうなんだろうか・・・・と思ってしまいます。

オピオイドを処方すること、在宅酸素を入れることが緩和ケアでは決してないはず。家族の想いはどうなのか、本人の人生の振り返りはできているのか、治療と並行して何かやりたいことはないか、整理することはないのか、家族に、遠方の兄弟に伝えたいことはないのか、死への葛藤にどう向き合っているのか、全てひっくるめて相談にのっていくのが緩和ケアなんじゃないのかな、と街の片隅で活動している在宅医として思ってしまいます。

 

諸々最近の在宅看取りとなった患者さんを振り返ってみると急性期病院から在宅緩和につながるまでに問題が山積しているなと感じます。

最近の在宅看取りとなった患者さんで気になった点

○在宅酸素導入しても訪問看護も在宅医も導入されていない

○在宅医療者不在のため外来でオピオイド処方はするけれど排便管理などは都度受診しないと薬物調整ができない

○家族が外来に在宅医療の話を聞きにきて退院時カンファレンスしましょうねと伝えていても病院都合で知らない間に退院させられた

○化学療法が限界までしてしまう→結果食事がとれずに看取り

○治療中は緩和ケアがなくさらに在宅医療、在宅緩和ケアへつながるのが完全に治療が終了してから、平行して診察はほぼなし

○そもそも在宅医療自体を病院から紹介されず自分で探してきた

 

 

逆に在宅緩和で在宅医療機関が関わって良かった点もあげてみますね。

在宅医療者として関われて良かった点

○1週間から10日程の短期間の診察でも医師ー患者の信頼関係ができた

○医療面以外の苦悩や葛藤、家族との時間などをつくってあげられた

○疼痛、呼吸苦の充分な緩和

○遺された家族が満足するようなケアを一緒にできた

○食事を楽しめた

○遠方の家族に早めに来てもらい話をしてもらう時間をつくることができた

などなど・・・・・

 

これから抗がん剤などの治療はどんどん専門特化され特定機能病院などの高度医療機関に集約されることになるでしょう。その時に緩和ケアの提供を治療が終わってからであったり、院内の緩和ケア外来にかけるのみであれば患者さんの緩和ケアって不十分なままで改善はないでしょうね。

急性期、特定機能病院では治療中から院内で完結するような緩和ケアの体制を考えるのではなく、広く地域に目をむけて生活目線での緩和ケアを考えて欲しいですね。

皆さんのご意見はいかがですか?よければご意見くださいね。

 

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