地域緩和ケアの提供体制について(議論の整理)を読んで
厚生労働省からの地域緩和ケアの体制についての資料が公表されました。中身については下にのせるので確認してみてください。
緩和ケアチームのアウトリーチに関してはその有効性がどうでしょうか。在宅でできる緩和ケアに関しては介護保険の制度への理解やその他細かい点を理解しないと本当の役に立つアドバイスはなかなか難しいと思います。個人的にはまずは緩和ケアチームの看護師さんが訪問看護業務をすることができればなぁと思いますがどうでしょうか。
これらの施策が今後どうなるか、しっかり確認していきたいと思います。
地域緩和ケアの提供体制について
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000095435.html
地域緩和ケアの提供体制について(議論の整理)
【はじめに】
平成24年4月に設置された「緩和ケア推進検討会」において、同年6月に閣議決定された「がん対策推進基本計画」で掲げられた「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」について、緩和ケアの現状等を踏まえた俯瞰的かつ戦略的な方策に関する検討を行ってきた。この検討を受け、同年9月には、基本的緩和ケアに求められる方策や「緩和ケアセンター」の設置等を盛り込んだ「中間とりまとめ」を、平成25年8月には、がん診療連携拠点病院(以下「拠点病院」という。)に求められる緩和ケアや、緩和ケアに関する院内組織基盤を強化した「緩和ケアセンター」の具体的推進方策について検討するとともに、緩和ケアの提供体制を支える基盤として、「緩和ケアに関する研修体制」、「緩和ケアに関する普及啓発」等についての検討を整理した「第二次中間とりまとめ」を行った。
その後、これらのとりまとめに沿った具体的施策の推進を行うとともに、地域において、緩和ケアを提供するための施策について、計3回の会議(第15回、第16回、第17回)で検討を行った。
今般、平成28年度概算要求や「がん対策加速化プラン」等に位置付けるなど地域緩和ケアの推進に向けた方策を早急に実現するため、これまで検討を行った項目の現状と対応の方向性に関し、議論の整理を行った。
【拠点病院等の専門的緩和ケアの機能強化・質の向上について】
地域緩和ケアの提供においては、がんと診断された時から、入院・外来・在宅等の診療の場を問わず、また、がん治療の有無に関わらず「いつでもどこでも切れ目のない質の高い緩和ケア」の提供を推進すべきである。そのためには、緩和ケアチームや緩和ケア外来等の専門的緩和ケアの機能強化と質の向上、ならびにすべての医療従事者が提供する基本的緩和ケアの充実を積極的に推進する必要がある。
<現状>
① 拠点病院等の専門的緩和ケア(緩和ケアチーム、緩和ケア外来等)の提供体制が、地域緩和ケアにおいて整備されていない。また整備されていても十分活用されていない。
② 地域緩和ケアを担う施設(病院、診療所、保険薬局、訪問看護ステーション、緩和ケア病棟等)に関する情報が医療機関間で十分に集約・共有されておらず、また患者・家族のみならず、医療従事者に対しても情報提供が十分になされていない。
③ 地域緩和ケアを担うスタッフ(地域の医師、歯科医師、薬剤師、訪問看護師等の医療従事者、社会福祉士、介護・福祉従事者等)の人員が不足しており、また、診療・ケアの質が十分に担保されていない。
※基本的緩和ケアと専門的緩和ケアについて(緩和ケア専門委員会報告書より抜粋)
▪ 「基本的緩和ケア」とは、患者の声を聴き共感する姿勢、信頼関係の構築のためのコミュニケーション技術(対話法)、多職種間の連携の認識と実践のもと、がん性疼痛をはじめとする諸症状の基本的な対処によって患者の苦痛の緩和をはかることである。
▪ 「専門的緩和ケア」とは、「基本的緩和ケア」の技術や知識に加え、多職種でチーム医療を行う適切なリーダーシップを持ち、緩和困難な症状への対処や多職種の医療者に対する教育などを実践し、地域の病院やその他の医療機関等のコンサルテーションにも対応できることである。
<今後の対応の方向性>
○ 拠点病院における地域緩和ケアの提供体制の整備に向けて
入院・外来・在宅患者へより質の高い緩和ケアを提供するために、拠点病院は、専門的緩和ケアの機能強化と質の向上を積極的に推進する。
1. 専門的緩和ケアと院内の診療部門(治療科外来や外来化学療法室等)が、迅速かつ円滑な共同診療を行えるように、連携体制について院内で周知徹底する。
2. 緩和ケアチームは、地域連携部門やがん相談支援センターと連携し、患者の意向に沿った形で、退院後も症状緩和が継続できるよう退院調整を支援し、退院後は、緩和ケア外来において、定期的なフォローアップを行う。
3. 緩和ケアチームのアウトリーチや人的交流による地域緩和ケアを担う施設との共同診療を推進する。
4. 緩和ケアチームは、地域緩和ケアを担う施設の緩和ケアの機能強化を図るための支援を積極的に行う。
5. 退院患者に対して、がん疼痛をはじめとする身体的苦痛が増悪した場合の緩和ケア外来における迅速な対応と必要に応じて入院ができるようバックベッド(緊急緩和ケア病床)を確保し、患者や家族の意向に沿った形で、在宅への復帰を図る。
6. 症状緩和・情報共有を目的とした緩和ケア関連の地域連携クリティカルパスの作成と運用を行って共同診療にあたる。
7. 医師会等のネットワークを活用し、地域緩和ケアを担う施設に関する情報集約を行い、患者や家族に対して情報提供を行うとともに、地域全体の医療機関での共有を図る。
8. 地域の医療機関からの緩和ケアに関する診療やケアの相談を受ける体制を整備する。
9. 都道府県拠点病院の緩和ケアセンターは、地域緩和ケアの中心的な役割を担う。都道府県、関連団体と連携して、地域緩和ケアの実践に協力するための事務局・調整 機能の整備を積極的に推進する。
○ 地域緩和ケアの提供体制の構築に向けて
拠点病院、緩和ケア病棟、診療所、保険薬局、訪問看護ステーション等が協力して、それぞれの地域の状況に応じた地域緩和ケアの提供体制を構築する。
1. 拠点病院の緩和ケアセンター等が中心となり、「地域緩和ケア連携調整員(仮称)」のような関係者間・施設間を調整する人員の配置を伴う事務局機能を有する地域拠点を、地域の状況に応じて整備する。
2. 抗がん剤治療中など早い段階から地域の医療機関や訪問看護ステーションと拠点病院等の連携を促進する。
3. 地域の状況に応じて、遠隔診療情報通信(ICT)システムの利用を検討する。
4. 緩和ケア病棟は、がん疼痛をはじめとする身体的苦痛が増悪した場合のバックベッドとしての役割を果たし、症状が落ち着いたら、患者や家族の意向に沿った形で、在宅への復帰を図る。
5. 拠点病院、緩和ケア病棟、診療所、保険薬局、訪問看護ステーション等が協働して、地域の医師、歯科医師、薬剤師、看護師、社会福祉士等の多職種を対象とした緩和ケアやがんの相談業務に関する地域緩和ケア研修会や実地研修を実施し、地域緩和ケアの質の向上を図る。また、介護・福祉従事者や患者支援団体を対象に、末期に急激に症状が悪化するというがんの特殊性を考慮し、緩和ケアや医療用麻薬に関する普及啓発を行う。
6. 診療所や訪問看護ステーション等でのがん患者・家族に対する看護相談のあり方について検討する。
7. 在宅療養患者のQOLを高め、家族の負担を減らすための通所施設等の設置や市民ボランティア等の養成について検討する。