”子宮頸がんワクチン”について
こんにちは、いまいホームケアクリニック 小児科の小杉です。
久しぶりの記事になりますが、
最近外来で問い合わせがあった ” 子宮頸がんワクチン(HPVワクチン) ” についてです。
HPVワクチンがあることはご存知の方も多いと思いますが、正しい知識を持った方は少ないかもしれません。なるべく主観が入らないように、現状をお伝えできればと思います。
HPVワクチンは、子宮頚がんを予防する目的で2010年に公費助成が開始となり、2013年には予防接種法で定期接種に組み込まれ、接種数が急激に増加しました。
それに伴い、ワクチン接種後に全身の疼痛や失神、麻痺、視力低下、倦怠感、勉強ができなくなった、めまい、歩行困難、けいれんなど非常に多彩な症状が多数報告・報道され、被害者の会が設立されるなど社会的にも大きな話題を呼びました。
それを受けて当時の厚労省からは「積極的に接種を勧めることは差し控えましょう」という措置がとられました。推奨を控えるという対応のみで、定期接種からなくなった訳ではないので、現在も対象年齢では公費助成により無料で受けられるワクチンです。
その後の厚労省研究班の全国調査では、「HPVワクチン接種歴のない集団でも、接種者と同様の多彩な症状を呈するものが一定数存在する」としています。つまり、ワクチン接種によって症状を訴える人が増えたとは言えないのではないか、ということです。ワクチンの副反応とされた症例の中に、他の原因による紛れ込みがある可能性もあります。
世界的に見ても、重篤な有害事象のリスクは全ての年齢群でHPVワクチン群とワクチン非接種群で同等であったとされています(2018,コクランレビュー)。
日本産婦人科学会は、日本で年に約3000人が子宮頸がんで命をおとし、10000人が子宮摘出を受けている現状から、早急な定期接種の勧奨再開を求める要望を2015年に提出しています。
他国の現状としては、重要なワクチンとして位置づけられており、約140カ国で使用され約80カ国で定期接種となっています。男児にも接種範囲を拡大している国もあります。有害事象を理由に積極的な接種に推奨を差し控えるという対応をとっている国は、日本だけです。
以上が、子宮頸がんワクチンの過去~現在に至る情報です。
以下は個人的な主観が入りますが、
HPVワクチンは、唯一の ” がんを予防できる ” ワクチンです。先述のとおり、日本で年間3000人ほどが子宮頸がんで亡くなっていますが、診断される年齢のピークは30代の女性です。社会的にみても、生産年齢である30代の死亡を減らせる可能性をもつ非常にインパクトの強いワクチンであると考えられます。
接種は激減していますが、現状でも接種を希望される方は一定数おられます。正しい知識を得た上で、お子さんの未来を考えていただければ幸いです。
↓ 過去の記事です ↓
外来で意識すること① → こちら
外来で意識すること② → こちら